レス―Q
【消防の心得-23】





人間が三人、
太陽の下で
元気に笑っている
絵が出来上がっていた。







子供の絵でも
何となく分かるが、
大人2人と小さな子が
描かれており、

髪が長い
女性らしき大人は
花を持っている。







「これは…?」







そう看護婦が
無意識に呟くと、

九古は淡々とした口調で
口を開いた。







「家…なくなって…
家族の写真ないから…

覚えてる限り…
書いた…」







九古は思い出を
できる限り頭の中で
再現して、
家族の似顔絵を
書いていたのだ。







それは
これから先
家族の顔を
忘れないように、

精一杯の想いで
描いた絵であった。








「…っ!!」







思わず看護婦は
涙をこらえた。







九古の健気な思いに
哀れみの涙が
出かけたのだが、

この小さな少年が
泣いていないのに
自分が泣くわけには
いかない。







可哀想に…




両親には互いに親戚も
何もおらず、
どこにも写真は
残っていない。







頭の中で思い返すしか
出来ないのだ。







しかも、
親戚がいないと
言うことは、

完全に引き取り手が
ないと言うこと…








九古は、

本当に
一人ぼっちなのである
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