甘い秘密指令〜愛と陰謀に翻弄された純情OL〜
「これ、裕子が作ったのか?」

征一さんが肉じゃがを突きながら言った。

「うん。どうかしら?」

「うまい。すごく旨いよ。こんな旨い肉じゃが、食べた事ない」

「そんな、大袈裟な。でも嬉しい」

私の肉じゃがは母親仕込みで、口が悪い匠でさえ誉めてくれるから、ちょっと自信あったの。

「みそ汁も旨いよ。俺はこのアサリのみそ汁が大好きなんだ」

「私もなの。よかった」

コーヒーに続き共通の好物がひとつ増えた。

「お新香もサッパリして食べやすいよ」

「そう? それは市販なの」

「え? ああ、そうだよな? あはは」

こんなに明るく笑う征一さんは初めて見た。目尻に皴を作り、優しい笑顔。
ますます好きになっちゃうよ…

気付けば、征一さんはお刺身には殆ど箸を付けていない。

「お刺身は嫌いなの?」

「ん…ちょっと苦手だな。少しは食べられるんだが…」

「ごめんなさい、知らなかったの」

「言ってないんだから、当たり前だろ。マグロとかは何とか食べられるから頑張るよ」

「ううん、無理しないで。私が食べるから大丈夫」

それから二人は互いの好きなもの、嫌いなのものを言い合った。

ご飯、作ってよかったな。お刺身は失敗だったけど。
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