甘い秘密指令〜愛と陰謀に翻弄された純情OL〜
婚約の行方
メイドさんが運んでくれて、コーヒーを一口飲んだ。

ああ、コーヒーを飲むと気分が落ち着く…
依存症かしら？

征一さんもブラックのコーヒーを一口飲み、カップをカチャンと置いた。

「そろそろ本題に入りたいと思います」

征一さんの一言で、部屋中に緊張が走る。

「高島麗子さんとの婚約を破棄したい」

「………」

水を打つような静けさ。皆の視線はお父様に集まる。

「理由を言いなさい」

「電話で話した通りです」

「だめだ。皆の前で説明して貰おう」

皆の視線が征一さんに戻る。
征一さんは、ゆっくりと息を吐いた。緊張が私にも伝わってくる。

征一さんがお父様に電話で何を話したのか、私は知らない。
でも、私の事が関係している事は確かだと思う。自惚れかもしれないけど。

征一さんから、堂々としているように言われていたけど、いたたまれない気持ちが強くなり、顔を上げていられなかった。
私はうつむき、膝の上で拳を握り締めていた。

「俺は、麗子さんに特別な感情を持っていません。それはおそらく麗子さんも同じだと思います。
そんな俺達が結婚しても、二人とも幸せにはならないでしょう。むしろ不幸になると思います。
だからこの婚約は、取りやめるべきです」

「………」

重苦しい沈黙が続く。
私はゆっくり顔を上げ、お父様を見た。皆の視線がお父様に向かっていた。

お父様は、苦虫をかじったような顔をしていた…
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