甘い秘密指令〜愛と陰謀に翻弄された純情OL〜
「青島部長も逮捕されたの?」

「いや、奴は小遣い銭程度の不正をしただけだから、会社は告訴しない事になった。

とは言っても、主犯の五十嵐に貢がせていたからな。懲戒免職は免れないだろう」

「主犯?」

「ああ。そして水野雄介が共犯だ。裕子から奴がパソコンオタクだと聞いてから、奴を再調査したんだ。
奴はハッカーだ」

「ハッカー?」

「本来の意味はシステムに強い人間の事だが、日本ではコンピュータウィルスなどの不正プログラムを作ったり、システムやネットワークに侵入する連中をそう呼ぶ。奴もそっちだった」

「ふ〜ん」

「奴は経理のサーバーに、闇のシステムを作っていたんだ。俺はそのシステムへの侵入を試み、成功した」

「征一さんもハッカーね?」

「いい意味の方だがね。奴のシステムのデータベースは、経理のそれとそっくりに出来ていた。言ってみれば『裏データベース』ってところだ」

「すごい。それを暴いた征一さんもすごいわ…」

「そこでは表のデータベースをハッキングし、架空取引先と架空請求を発生させていた。電子決済の弱点を突いた巧妙なトリックなんだ」

「被害はどのくらいなの?」

「まだ全貌は分かっていないが、億単位なのは間違いない。
最早、社内で処理できる規模ではないから、警察に介入を依頼したんだ。」
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