甘い秘密指令〜愛と陰謀に翻弄された純情OL〜
昼休み。恵美ちゃんとイタリアンのお店に来ていた。

恵美ちゃんはどんぶり物にも飽き、今はピザにはまっているらしい。マルゲリータを美味しそうに食べていた。

私はリゾットをズルズルとすすっていた。

「裕子、ずいぶん疲れた感じね? まだ半日あるのに、大丈夫なの?」

「もうダメ。くたくたよ。私達って、コンピュータにとっても依存してるのね? 今日はつくづくそう思ったわ…」


リゾットをなんとか完食し、セットのコーヒーが来るのを待つ間に、私はお手洗いへ行った。

お手洗いを出たところで、見知らぬ男性から声を掛けられた。

「西野裕子さんですよね?」

濃紺のパーカーを着た、ボサボサ頭に黒縁の眼鏡を掛け、色白で痩せた若い男だった。

「はい、そうですが?」

「外で神崎という人が待っています。あなたを呼ぶように頼まれました」

『わあ、征一さん? どうしたのかしら…』

「分かりました。友人に断ってすぐ行きます」

恵美ちゃんがいるテーブルへ行こうとしたら、男に手首を掴まれた。

「その人は急いでるらしいので、すぐ行きましょう?」

男にグイっと手を引っ張られた。

「待ってください。ひとこと言うだけですから」

「いいから、行きましょう?」

男は強引に私を引っ張って行く。手を振りほどこうとしたが、男の力には敵わなかった。

「待ってください。手を放して!」

抵抗も虚しく、お店の裏口から外に出された。
そこは人通りのない裏通りで、黒いワゴン車が停まっていた。

「こっちです」

その車の所まで引かれて行くと、後部のドアがスッと開き、男が降りて来た。
神崎さんではない。

「誰? 神崎さんはどこ?」

「知らねえよ」

その男は左手で私の髪を掴み、右手に持った黒い電気シェーバーのような物を、私の首筋にあてた。

その瞬間、バキッという音と共に、私の体に衝撃が走り、目の前が真っ暗になった………
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