甘い秘密指令〜愛と陰謀に翻弄された純情OL〜
「あ、水野君。パソコンが全然動かないの。壊しちゃったのかなあ」

斜め前の席にいる水野君が、スッと席を立って私の所へ来た。

水野君は、先日の任務で青島部長が口にした名前の数No.2の人物だ。入社してまだ一年の新人。

金色に近いメッシュの髪、耳にピアス、麻のジャケットという出で立ちは、堅いイメージの経理では特に異彩だ。

そんな彼を部長はさかんに誉めていた気がする。

確かに仕事を覚えるのは早いらしいが、何か違和感を覚える。

彼もマウスをグリグリとした。

「本当っすね」

「困っちゃったなあ。システムの人に来てもらおうか?」

「その前にオレが見てもいいすか?」

「水野君、パソコン分かるの?」

「少し」

「じゃあ、お願いします」

「ういっす」

私は立ち上がって、水野君に椅子を譲った。
でも、『大丈夫っす』とか言って、立ったままカチャカチャとパソコンをいじりだした。

すると、すぐに画面が明るくなり、パソコンが動き出した。

「うわあ、動いたね! 水野君、ありがとう」

「いえ、まだっす。今はアドミンで入っただけっす。もう少し待ってもらっていいすか?」

「う、うん」

『アドミン』って何?

水野君は物凄い速さでマウスとキーボードをカチャカチャしてる。
今後の参考にと思って画面を見てたけど、切り替わりが早過ぎて目が追い付かない。

「ハードにエラーはないんすけど、プロファイルが壊れてるっぽいです。リカバリするんで5分待ってもらえますか?」

「は、はい。お願いします」

5分待つ事しか理解出来なかった私でした…
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