夏、青春
5分ぐらいして教室に先生がやって来た。生徒たちは「えーっ」とブーイングを
言いながらも席に着き教科書を開けた。
「授業始まっちゃったなあ」
「うるせぇマジメに授業しろよ!」
堂林が仲の良い野球部に言う。
千紘はその光景をチラチラと
友達と話すフリをして見ていた。
「ですから、憲法第20条は…」
先生が説明を始めるとさっきまで
うるさかった教室が嘘のように、
しんとなった。
「(早く終わらんかな…っ)しんど」
「え、しんどい?いけるん?」
「いけるいける…っ!」
「そっかならよかった」
「う、うんっ」
「でもこの先生の授業確かにしんどい」
千紘が心で思っていたことが
口に出ていたのか隣の席である
堂林が千紘に向かって話かけてきた。
もちろん千紘は友達と思っていたため
軽く返事をしたが声を聞いた瞬間に横
を見てびっくりした。
「そ、そうやな…っ」
「ただ単なる独り言でぇな!」
「…あはは、そうやな先生はアカンと」
「思うよなーっ!!」
千紘と自分の意見が合ったのか
堂林は笑顔で千紘のほうをみて
笑顔をこぼした。
それに胸がトキメいた千紘はぱっと
反対側を向いて必死に首を縦に頷いた。
「伊瀬さんってオモシロいなあ」
「全然オモシロくないよ…」
「オモシロいって、!なぁなぁ」
堂林は何か思いついたのか
千紘にまた笑顔で話かけた。
「よかったらアド交換せん?」
「…っ!////////」
「あ、嫌だったらいいよ、」
「…ですっ、大丈夫です!」
「あはは伊瀬さんオモシロい!」
千紘は思いもよらない展開に
ただただ困惑するだけだった。
これは夢なのか、現実なのか、
震える手で携帯を握りしめ堂林
に差し出した。
「よっし、登録完了♪」
「ありがとうっ」
「此方こそよろしくなっ!」
“これが夢なら覚めないでっ”
千紘は携帯の電話帳に新規登録された
“堂林祥太”の字をチャイムが鳴る前
までずっと見つめていた。
横目で居眠りをしている堂林をちら
っと見つめながら。
*あなたに出会えたから
こんな幸せな気持ちに
出逢えたんだよ?
この思いがあなたに早く
伝わればいいのにっ
プロローグ─終─