夏、青春
あっという間に昼休みも
終わってしまい5時間目
の準備をしようとした時
「祥太、いけるんか?」
ひとりのクラスメートが
そうつぶやいた。
「(…堂林君?どないしたん?)」
千紘は気になって渡り廊下を
友達と一緒に覗きにいった。
「祥太ごめんなーっ!」
「わざとちがうけんな」
「どないしょー俺アホ」
「気にすんな掠り傷や」
「うっわ堂林君の手痛そうっ」
「(…えっ掠り傷違うし!)」
堂林の手にはカッターで
切られたような深い傷があり、
血がドバドバと出ていた。
「祥太~俺どないしょー」
「俺が遊ぼーや言うたけん!」
「ほんまお前らのせいちがう」
堂林は半泣きの友達にニカッと
笑って何度もそう言った。
「(堂林君…練習あるのにっ)」
「千紘泣かれんだー!」
「(…)…泣いてないしっ」
「堂林君ならいけるわ!」
「授業行こうチャイム鳴る!」
「…うんっ」
チャイムが鳴りそうだったので
千紘と友達は堂林の前を走り
抜けようとした時だった──…。
「伊瀬さん!」
堂林が千紘の名前を呼んだ。
「(えっ)…は、はいっ!」
千紘は混乱しながらも答えた。
「心配してくれてありがと
俺は大丈夫やけん、泣かんといてな」
堂林はニカッと微笑んで
千紘にそう言いきかせた。
「(…そんなん言われたら)…うんっ」
「伊瀬さんやっぱ面白いし優しい子やな」「…っありがと…お大事に…手っ」
「泣かんといて!俺が泣かしたみたいや」「…うれし泣きっ」
「はは、」
「千紘~行くよ~!」
「あ、うんっ」
「ほな伊瀬さんまたな」
「うっうん、また!」
千紘は頑張って堂林に笑いかけ
半ギレ(笑)の友達の元へと足を
向けた。堂林は立ち上がり友達
と共に保健室へと向かった。
「(…堂林君に泣き顔見られたっ)」
「(…まぁた堂林君の事考えよる)」
午後の授業、
千紘はニヤニヤと恥ずかしさを
抱えながら授業を受けた。
─