夏、青春


「…せさん…伊瀬さんプリント…」
「…ああ!ごめんごめん」
「別にいけるよ、また祥太の事?」
「…違うし…って…え……っ」


プリントを回しながら千紘は
自分の教科書で顔をかばいながら
前の席の男子;相澤に話しかけた。


「何で知っとるん?」
「さぁな、風の便り」
「もしかして野球部全員知っとる?」
「それはない!知っとるん俺だけ」
「…相澤君だけ、良かったわあっ」
「安心せんほうがいいで、」
「は?」
「俺結構口軽いから♪」
「…!ちょっと待って待って待って」
「バラしたらアカン?祥太に」


相澤はニカッと笑いながら
自分の携帯電話を千紘に見せた。


「アカンアカンアカンアカン!」
「恥ずかしいけん?」
「アカンアカンアカンアカン!」
「はは、冗談冗談っ」
「…は?心臓に悪いし~」
「伊瀬さんは祥太にキュンかあ」
「バラしたら許さんよ」
「バラさんって、初対面なのに」
「相澤君怪しいし!」
「んじゃ!協力してあげようか?」


相澤の思いもよらない言葉に
千紘は一瞬固まった。


「…相澤君って堂林君と仲良かった?」
「うん♪幼なじみやでぃ(ピース)」
「…まじっ」
「協力してあげるよ」
「…協力…してくれるなら…っ」


千紘は疑うような顔で
相澤に恐る恐るそう呟いた。


「任せとけい!」
「頼りにしてます」


相澤はピースを千紘の前に差し出し
ながら自信満々に言った。


「(…なんかうまく事が進みすぎて怖い)」
千紘は表では引きつりながらの笑顔
裏では疑いを持ちながらも少し笑顔
これから千紘の恋はどうなっていくのか。






*第1話*携帯電話─終─
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