無気力LoveStory
「…なんかすごく、機嫌がいいんだね」
地図を運んだその足で屋上まで行くと、すでに彼はフェンスにもたれかかってぼーっとしていた。
鼻唄でも歌いそうな勢いで先輩の隣に座ると、どこかぎこちない笑顔でそう言う。
「いいことあった?」
「はいっ」
ふーん、そう。
なんて無表情に言い放つのは、普段の九条先輩からじゃ考えられない。
だけどそれを疑問に思わなかったあたしは、きっと相当テンションがあがっていたんだと思う。
いつもあたしの心を反映してくれる空が、珍しく今日は曇りだったのに。
「……ところでさ、俺のことなんて呼んでる?」
急に話を変えてそんなことを問いだす先輩に、小さく首を傾げた。
「九条先輩、ですけど?」
「ふーん」
恐る恐るそう答えれば、別にどんな感想をいうこともなく、そっぽを向く。
「じゃあ……一緒に地図を運んだ男のことは?」
「…へ?」
一緒に地図を運んだ男って、佑耶君?