無気力LoveStory
怖かった。
違う人みたいだと、思った。
佑耶君が別れたのは本当だし、ほんの少しだけやっぱり嬉しいと思ってしまったのも事実。
だけど先輩の前に出たらそんなのは全部消えて、頭は真っ白になる。
「…せ、先輩?」
ーカシャ…
屋上のフェンスにぴったりと張り付くあたしの体。
退路を絶った先輩の両手。
3センチしか間のない、顔。
「く、くじょうせんぱ…っ!!」
突然だった。
先輩の顔が迫ってきて、唇に柔らかい感触がする。
油断した口をこじ開けて、ヌルッとしたものがあたしの口内に入ってきた。
「んっ…せ、せんぱ…」
華奢に見えて頑丈な胸板は、どれだけ叩いてもびくともしない。
ようやく気付いた。
これが“キス”なんだと。