無気力LoveStory

怖かった。

違う人みたいだと、思った。


佑耶君が別れたのは本当だし、ほんの少しだけやっぱり嬉しいと思ってしまったのも事実。


だけど先輩の前に出たらそんなのは全部消えて、頭は真っ白になる。


「…せ、先輩?」

ーカシャ…

屋上のフェンスにぴったりと張り付くあたしの体。
退路を絶った先輩の両手。

3センチしか間のない、顔。


「く、くじょうせんぱ…っ!!」

突然だった。

先輩の顔が迫ってきて、唇に柔らかい感触がする。


油断した口をこじ開けて、ヌルッとしたものがあたしの口内に入ってきた。

「んっ…せ、せんぱ…」

華奢に見えて頑丈な胸板は、どれだけ叩いてもびくともしない。

ようやく気付いた。
これが“キス”なんだと。


< 28 / 60 >

この作品をシェア

pagetop