無気力LoveStory
流れていくはずの空気は止まって、風も走らない。
ただただ音がなくなって、脳に直接伝わってくる先輩の言葉。
しんとした水たまりに、波紋を散らすように響く。
「──…俺のだもん」
ギュウっと、さっきよりも力が強くなった。
「どうしても、ほしかったのに」
うわ言のように呟きながら、絶対離さないとばかりに腕が少し震えてる。
「…、先輩?」
薄い浴衣から、先輩の熱い体温が伝わってきた。
そのぬくもりが心地よくてそっと名前を呼んだとき、何を思ったのか先輩はちょっとだけ隙間をあける。
その隙間だけに急に風が通ったみたいに、寒かった。
「アイツみたいにニコニコ笑えば、いい?アイツのどんなところが好き?顔、だったら整形するし」
「や、何言ってんですか」
少し、というより大分的外れな話に、思わず突っ込みをいれる。
「しょうがないじゃん。どんなことしても、ほしくてどうしようもないの」
離れたことで顔が見える。
澄んだ瞳がびっくりするくらい真剣で、胸が大きな音をたてた。