無気力LoveStory
「…ホントにホント?」
「…ホントですってば」
いつになったら信じてくれるの?
そんなに疑われるような行いは、した覚えないんですけど。
恥ずかしいやら信じてほしいやらで、
ジトッと睨みつけると先輩は戸惑うように一度目を泳がせた。
「…ん、と!これは灰音ちゃんが悪いから、しょうがないし!」
聞こえるか聞こえないかくらいの声で、小さく呟いて。
華奢な腕をそっと伸ばす。
何か迷うように恐る恐る、その手はあたしの腕を掴んだ。
「え、先輩?……わっ」
そのまま引っ張られて、あたしはまたさっきみたいにバランスを崩す。
そしてさっきみたいに、暖かい胸板に包み込まれた。
ドクン、ドクン
先輩のか、あたしのかもわからない心臓の音が、耳に響いて聞こえる。
この胸の中特有の安心感に、そのまま体を預けてしまいたくなった。
「あー、うわー、ヤバい」
この空気に似合わない単調な声が、すぐ頭上から響く。
「キス、しちゃだめですか」
微妙に片言まじりで先輩が言った。
「は!?」
「だって!されても灰音ちゃんは文句いえないよ?」
先輩の手に押さえられてて見ることはできないけれど、多分今は口を尖らせてる。