無気力LoveStory


「…ホントにホント?」

「…ホントですってば」

いつになったら信じてくれるの?

そんなに疑われるような行いは、した覚えないんですけど。

恥ずかしいやら信じてほしいやらで、
ジトッと睨みつけると先輩は戸惑うように一度目を泳がせた。

「…ん、と!これは灰音ちゃんが悪いから、しょうがないし!」

聞こえるか聞こえないかくらいの声で、小さく呟いて。

華奢な腕をそっと伸ばす。

何か迷うように恐る恐る、その手はあたしの腕を掴んだ。

「え、先輩?……わっ」

そのまま引っ張られて、あたしはまたさっきみたいにバランスを崩す。

そしてさっきみたいに、暖かい胸板に包み込まれた。

ドクン、ドクン
先輩のか、あたしのかもわからない心臓の音が、耳に響いて聞こえる。

この胸の中特有の安心感に、そのまま体を預けてしまいたくなった。

「あー、うわー、ヤバい」

この空気に似合わない単調な声が、すぐ頭上から響く。

「キス、しちゃだめですか」

微妙に片言まじりで先輩が言った。

「は!?」

「だって!されても灰音ちゃんは文句いえないよ?」

先輩の手に押さえられてて見ることはできないけれど、多分今は口を尖らせてる。


< 54 / 60 >

この作品をシェア

pagetop