氷の女神
見れば綾乃さんは弁当に全く箸を付けてなかった。

「綾乃さん、ご飯食べないんですか?」

「食欲がないの…」

綾乃さんの顔色が悪い。熱があるんじゃないだろうか?

「具合が悪ければ、医務室へ行った方がいいですよ」

「大丈夫。お医者さんは苦手だし…」

「そうですか? 取り敢えず早く降りましょうか? ここは冷えますから」

春とは言え、今日は朝から冷え込んでいた。みぞれが降るかもしれないと、天気予報で言っていた気がする。

俺は残りの弁当を大急ぎで食べた。
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