氷の女神
「綾乃さん」

「なあに?」

「綾乃さんは僕が怖いですか?」

「………ううん、怖くない」

「き、キスしたい」

「………」

見る見る、綾乃さんの顔が赤くなっていく…
たぶん、俺の顔も同じだと思うけど。

「風邪が伝っちゃう…」

「構いません」

「わ、私は…どうしたらいいの?」

「目をつぶってくれれば、いいです」

綾乃さん、どうか目をつぶってください!

心で念じていたら、綾乃さんが潤んだ目を、ゆっくり閉じた。

俺は綾乃さんの形のいいあごに指を添え、ぽっちゃりした唇に、自分のそれを重ねた…
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