氷の女神
「北野さん? こんばんは」

「こんばんは、じゃないわよ、まったく…」

「二人とも、そこに座りなさい」

「は〜い」

俺と綾乃さんさんは、さっきまでは向かい合わせに座っていたダイニングのテーブルに、今度は並んで座った。

「綾乃ちゃん、もう体は大丈夫なの?」

「うん。まだ少し熱はあるんだけど、殆ど良くなったと思うわ」

「良かったわね? 里中君の看病のおかげかしら?」

「そうなの。里中君にはすっかりお世話になっちゃって…」

「いや、ぼ、僕は何も、大した事は…」

うわあ、俺ビビリ過ぎ。社長より北野さんの方が恐い気がする。

「まさか田中君の想像通りだったなんて、びっくりだわ…」

「すみません」

「ごめんなさい」

「二人とも、謝らないで? 責めるつもりはないんだから」
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