氷の女神
俺と社長は無言で睨み合い、少しして社長は、
「本当に誤解なのだな?」
と言った。いくらか口調が穏やかになったような気がした。
「はい」
「綾乃は胸が苦しいと私に連絡して来た。呼吸困難と私は判断し、救急車を呼んだ。
過換気症候群と診断され、命に別状はなかったが、また起きるおそれがあるから入院させた。
過度のストレスが原因だそうだ」
「僕のせいです」
「そっちは落ち着いているが、ずっとふさぎ込んでいる。私が話し掛けても口を聞いてくれん。
またうつ病が悪化するのを、私は恐れているのだ」
「うつ病…?」
「綾乃は、父親から虐待を受けていた」
「え?」
「綾乃の母親は私の知り合いだったが、夫が事業に失敗し、酒に溺れ、妻や子に暴力を振るうようになり、心労のため早死にしてしまった。
残された綾乃は、父親から虐待されながら育ったんだ。
やがて父親も肝硬変で死んだが、綾乃は重度のうつ病になっていた。
そんなあの子を、おまえは支えられるのか?」
「本当に誤解なのだな?」
と言った。いくらか口調が穏やかになったような気がした。
「はい」
「綾乃は胸が苦しいと私に連絡して来た。呼吸困難と私は判断し、救急車を呼んだ。
過換気症候群と診断され、命に別状はなかったが、また起きるおそれがあるから入院させた。
過度のストレスが原因だそうだ」
「僕のせいです」
「そっちは落ち着いているが、ずっとふさぎ込んでいる。私が話し掛けても口を聞いてくれん。
またうつ病が悪化するのを、私は恐れているのだ」
「うつ病…?」
「綾乃は、父親から虐待を受けていた」
「え?」
「綾乃の母親は私の知り合いだったが、夫が事業に失敗し、酒に溺れ、妻や子に暴力を振るうようになり、心労のため早死にしてしまった。
残された綾乃は、父親から虐待されながら育ったんだ。
やがて父親も肝硬変で死んだが、綾乃は重度のうつ病になっていた。
そんなあの子を、おまえは支えられるのか?」