ボーダー
康一郎に笑われた。
笑うのはひどくない?

「正義感が強いのはいいけど、程々にねって言われたのは、なんとか堪えたけど吹き出しそうになったわ。
変わってないのな、志穂。」

いや、そう言われても。
人間の本質は変わらないものでしょ?

「いや、逆に180度変わってたら怖くない?
変わってないのはむしろいいことじゃない?」

「懐かしいなぁ……
ここでいろいろ……康一郎に進路の話とか部活の話とか話聞いてもらったよね。
ここで康一郎にヒドいこと言っちゃったりもしたけど。
……あの時はごめんなさい。」

謝ろうと思っても謝れなかったのに、素直に言葉が出てくる。

「ん?
こうして謝ってくれたんだから、俺が許さないワケがないでしょ?
しかも、もう時効だと思ってるし。
あれから何年経つんだよ。

…それで……順調なの?
……彼氏とは。」

しばしの沈黙。
別れたことは、言わなければならない。
そして、康一郎が好き、ってことも言うんだ!

「ん?
別れた別れた!
だって束縛激しすぎるんだもん。
お父さんと電話してただけでキレて平手打ちは当たり前なんだよ?
合気道じゃない、空手とかジークンドーとか習っておけばよかった、って何度後悔したか。

そんなヤツ、あたしの手には負えないよ。
別れて正解だった。」

1度言葉を切って一呼吸置いてから、話し出す志穂。

「それに……高校の頃から好きな人いるもん。

……さっきは、ありがとう。
カッコ良かったよ?
ありがとう、康一郎!
私、康一郎のこと大好き。

改めて言うのも、何か変な気がするけど、
高校の頃からずっと好きでした。

苗字、柊から柏木にする前提で、付き合ってください!」

結婚前提、って言えばよかった。
でも、康一郎の苗字好きだし、気に入ってるから、早く同じ苗字にしたいんだもん。

「俺も好きだ。

志穂?
ずいぶん……遠回りしたけど……
俺と付き合ってくれますか?

あ、もちろん、数週間後でも数ヶ月後でもいいけど、絶対苗字は柏木な?」

「こちらこそ、よろしくお願いします。」

高校の頃に、今の台詞が聞けてたら。
今頃は、既に苗字が柏木になっていたのかもしれない、なんて思う。

その康一郎の気持ちが嬉しくて、私の背中に回る康一郎の大きな手の温もりが恋しくて。

「んっ……」

私の方から、康一郎にキスをする。徐々に唇の重なりが深くなる。

康一郎の身体が密着してきて、ズボンの真ん中の膨らみを感じる。

欲情、させられてるのかな。
とりわけ美人じゃないけど。
胸もそんなに大きくないけど。

「志穂?
……場所変えるか。」

その台詞が聞こえると、抱き上げられて車の後部座席に乗せられた。

「志穂、今寝とけ?
寝かせる気、ないから。
大人な夜の過ごし方、教えてやる。」

なぁんだ。
康一郎に抱いてほしいの、気付いてくれてたんだ。

康一郎に起こされてホテルに着く。
既に彼は上半身のシャツを脱いでいて、ジム通いでもしているのだろうか、鍛えてある筋肉に目が釘付けになる。

焦らすつもりか、少ししかない胸も触ってくれない。
自ら誘導したり、その気にさせるように自ら服を脱いだりして、やっといいトコロにも触れてくれる康一郎。

私の扱い、手慣れてるな……

康一郎の脚の間のものを先端で触ると、既に透明な液が溢れていた。

2つ年下の私にも、ちゃんと欲情してくれているのが嬉しかった。

「志穂がもっと、欲情して色っぽい声聞かせてくれれば、もっと大きさ増すよ?
その時が、志穂、お前と繋がるときだ。」

康一郎はそう言って、私の下着を剥ぎ取った。

「あんっ……」

下の突起に触れられて、ない胸の突起が、康一郎の舌によって刺激される。
一段と高い声が漏れたのを、彼は聞き逃さなかった。
既に潤っている場所の具合を確かめるように、彼の指が入ってくる。

にこ、と優しく微笑んだ彼は、私の左手をそっと握る。
私の左手は、彼がこれから私の潤っている場所に、これから入るべきものに添えられている。

「志穂。
いい子だから、左手、離して?
準備するから。
俺の義理の妹とビジネスパートナーなんだろ?仕事に影響させたくない。」

康一郎、明日香さんのこと知ってるの?
え、義理の妹?
頭にハテナマークが浮かんだが、今はそれどころではない。

彼の熱さと大きさは、受け入れた途端に伝わった。
彼が、出たり入ったりを繰り返すと、ベッドのスプリングもそれに合わせてリズムを刻む。
ついでに、大きいとはいえない胸も。

「色っぽくて最高だ、
愛してる、志穂。」

限界が近いのか、少し眉間に皺が寄っている康一郎。いつも余裕たっぷりな態度を見せるのにその表情、しかも、耳元で囁くのは反則だ。

邪魔にならないよう、小さいハート型のピアスが揺れる耳が、くすぐったい。
その刺激で、一瞬意識を手放した。

「耳元、よわ、いの……
も、んぁ!」

「やべ、キツ……くっ……」

一瞬だけ、康一郎の、男の人の身体の重さを感じた。
私も脱力感からか、体を起こす体力は少し横にならないと回復しそうにない。

私の頭を撫でてくれた康一郎は、私に背中を向けたあと、ティッシュをゴミ箱に放る。
そして、私にお風呂に入るか尋ねてきた。

一緒がいい、と彼に言うと、驚いてはいたが嬉しそうにしていた。
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