ボーダー
「あっ…!

ダメね、私は、こういうゲームの類は強くないみたい。」

メイは、ゲームの類はほとんどやらないようなので、ポンコツだった。

「村西さん。
……よくも、メイのマリオ殺しましたね?
容赦しませんよ?」

ゲームとはいえ、メイを負かすとは。
メイの仇討ちをしてやるべく、オレが本気を出す。

「あっ!
あ……
また負けたか……」

「メイのマリオを殺した村西さんが悪いんです。オレに本気を出させたから。

まぁ、メイもメイで弱いんだけど……」

普段、こういうゲームをやらない子に、いきなりはキツかったか。

「悔しい!
よし、次はwiilsportsやろうぜ!」

よほど村西さんは、未成年のオレにマリオで負かされたのが悔しいらしい。

……wiilsportsでボウリングをやって、メイがスペアを出した。

メイとハイタッチ。

結果、メイが1位で、オレが僅差で2位、村西さんが3位。

次はテニスをやる。

オレとメイ、村西さんとcomの2対2。

「蓮太郎、ナイスコース!」

見事な勝利で、2回目のハイタッチ。

オレは、一瞬でもメイの笑顔が見れて嬉しかった。
ホンネを言えば、心からの笑顔が見たいけど。
だけど、それが現実になるのも、もうすぐだろう。

その後もwiilsportsの様々なゲームにかまけていると、もうすっかり朝になっていた。

薬の副作用の吐き気等を心配したが、それは大丈夫のようだった。

「ねぇ皆、お腹空かない? 大丈夫?」

確かに、散々wiilsportsで遊んだ後だから、お腹空いたかも。

「オレはそろそろ腹へってきたな。
……オレ、何か作ろうか?」

いろいろ自炊とかもやってたから、料理、作れるんだよ。

「お前が作るの?
なんか、変なカガク薬品とか入れそうで怖いんだけど……」

戦々恐々とした声色で、村西さんが言う。

「何があっても入れませんよ。
失礼な!」

そんな村西さんとのコントみたいなやりとりに笑顔を見せるメイ。
その姿を目に焼き付けてから、台所に立った。

メイと村西さんは、せっせとWiilを片付けて、テレビの入力画面を切り替えている。
普段のテレビが見られるようにだ。

……メイの笑顔、久しぶりに見たな。

やっぱり、オレが来たからかな?

いや、こんなの、自意識過剰みたいじゃん。

だけど……しょうがないだろ?

今日初めて知ったの。

好きな女の子の笑顔を見れただけで、こんなにも幸せな気持ちになれるんだ、ってこと。
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