ボーダー
朝食を作っている最中に、TVから聞こえてきた事件のニュース。
……大阪地検の検事が、改ざんした防犯カメラのデータを証拠に冤罪に陥れたようだ。

6年ほど前……オレの姉さんがしたこととほぼ同じだった。
姉さんは、姉さんの妹(オレの2番目の姉でもある)茜を犯罪者にさせないために、上司からの脅迫をしぶしぶ受けていた。

……ねつ造した証拠で連続殺人犯を有罪にしてしまった。
そうなるように、その上司が仕組んだ結果だった。
……ミツの兄である御劔検事さんの事件ファイルを調べたときに、そのことを知った。

姉さんが直接オレに話してくれなかったのが、すごく悲しかった。
頼りない弟だと、思われているのかもしれないと何度も考えた。

それよりも、この…事件のことを未だに気にしている自分が悔しくて……情けなくて。
気づけば、唇を噛んでいた。
そんなオレを、メイが不思議そうに見ていることにも、気付けずにいた。

胸のモヤモヤを吹っ切るように、完成した料理をお皿に盛りながら言う。

「できましたよ。」

3人でテーブルを囲んだ。

「すっごい美味しいわよ。
この味、一生忘れないかもしれないわ。」

……いつもメイは嬉しいことを言ってくれる。

だが、メイのお皿に盛られている料理の量は少なめだ。

まぁ、薬の副作用の吐き気もあるだろうし、食べないよりマシだ。
俺は、緊急避妊薬については、詳しくは知らないが。
要は、生理が来れば、無理矢理に犯された男との子供はデキていないことになるようだ。

「無理するな?メイ。」

「わかってるわ。
副作用を後ろ向きには捉えてないわ。
効いている証拠だもの。

それに、いつか一緒に住んだときに蓮太郎に頼めばまた作ってくれるわよね?」

「もちろん。
可愛いレディーのお願いは聞くよ?」

村西さんも、美味しいを連呼しながら完食してくれた。

「おい、さっきからのラブラブな会話は、決まったパートナーがいない俺への当てつけか?
イチャつくな?
未成年らしくていいけど。」

コーヒーをすすりながら言う村西さん。

「どこがイチャついてるんですか、どこが!」

「冗談だよ、本気にするな?」

大人の余裕を、飲み干したコーヒーカップを置いたばかりの村西さんから感じた。
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