ボーダー
……ふと、オレの方に目線をやった村西さんが一言、尋ねた。

「おお、そうだ。
レン、何か忘れてないか?」

何か……?
それで、ふと思い当たった。
メイの誕生日ケーキ!

言った本人が忘れるとは。
お笑い芸人のつまらないコントのようだ。

「誕生日おめでとう、メイ。
17歳のスタートは最悪だったけどさ。
いい1年になるように、いろいろ協力したいって思ってる。
一緒に頑張ろう。」

オレはメイに誕生日プレゼントを手渡した。

オレは、ビジューをライン上にしてバーのように見せた装飾がされているキーケースと、しずくをモチーフに、ムーンストーンの石が垂れ下がるデザインの10金ピアスだ。

キーケースは、願わくば一緒に住んだり、苗字を同じにした後も使ってもらえるようにとセレクトした。

村西さんからは、ピアスなどのアクセサリーを持ち運べるアクセサリーケースをプレゼントされていた。

「レンがアクセサリーをプレゼントするなら被るとまずいと思ってな。
それに、アクセサリーは持ち運んで、着飾ってなんぼだからな。
バーテンダーの知り合いで綾原 和音《あやはらかずね》という女がいるんだ。
ソイツは仕事中と仕事前後でアクセサリー変えてるからな。
そういうのもいいもんだぞ。
TPOに合わせてアクセサリーを付け替えられるのがいい女らしいからな。」

開けると、ピアスと同じモチーフのネックレスが入っていることはサプライズになっている。

本当は、ピンキーリングでも良かったが、指輪はきちんと、エンゲージリングを渡したかったので今回は避けた。

この時は、まだ知らなかった。
俺の2人の姉が、密かに、オレのためにプロポーズ大作戦を計画していたことを。

「ありがとう!
とっても嬉しい!
素敵なものを素敵な人からプレゼントされて、最悪な誕生日が、最高の誕生日になったわ!」

ぎゅ、と勢いよく抱きついてくるメイ。

朝から可愛いことはやめてほしい。
朝だからこそ、制御できないんだよな。
下半身の膨らみ具合と硬さがメイにバレないことを祈った。

「はいはい、オレの前でいちゃつくな?」

「いちゃっ……!?」

「ちょっ……村西さん!
オレ、そんなつもりじゃ……」

オレもメイも、顔を真っ赤にしている。

「本気にするな?
ま、いつかはそんなやり取りが日常茶飯事になるくらいの恋人になってほしいとは思っているがな、お前ら2人には。
……オレ、ちょっと会議があるから、FBI本部に一旦戻るな?」

「お前が守ってやれ、いいな、レン。
さっきも言ったが、メイが頼りにしてるのはレンだけだ。」

村西さんはそう、オレに耳打ちした。
オレとメイに手を振って、家を出た。
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