ボーダー
〈メイside〉
いつの間にか寝ちゃってたみたい。
目が覚めて、頭を抱えた。
また、あの夢だ……
夢に出て来るのは、2人の男。
彼らに抵抗することも出来ないまま、暴行される。
数ヶ月後に妊娠が発覚する。
いつもそこで目が覚める。
寝覚めはもちろん最悪。
目の近くに、まだ少し冷たいタオルが置いてあった。
毛布もきちんと肩まで掛け直されていた。
きっと……ここまでしてくれたの、蓮太郎だ。
万が一のためにと、洗面器やビニール袋まで。
これは村西さんだろう。
起きちゃって、寝れそうにない。
リビングに行こうと階段を降りると、誰かの話し声がする。
そっと扉を開くと、蓮太郎が誰かと電話をしていた。
心配かけたな、と言ってくれというような内容から推測して、電話の相手は蓮太郎の幼なじみかしら?
「ごめん……メイ……。
うるさかった?
起こしちゃったなら、ごめんね?」
そう言って謝る蓮太郎に、私が怖い夢を見て起きてしまっただけだと言う。
彼は柔らかく微笑んで、温かいホットミルクを差し出してくれた。
「あ、ケーキあるけど。
食欲あるなら……食べる?」
何でケーキ?
私を元気づけるためかな?
「メイ、2日前に17歳になったばかりだろ?
……オレが日本に帰る前に予約だけして、村西さんに取ってきてもらったの。」
そういうことか。
自分の誕生日、すっかり忘れていたわ。
そっか、あと1年で、こちらの国でも、結婚できる年齢になる。
日本に行けば、私はもう結婚できる年齢なのだが、どちらにしても蓮太郎はまだだ。
「ごめんね。
……今はまだちょっとお腹が空いていないから、後で皆で食べることにしましょう。」
そして、村西さんの提案で、3人でwiilをやることに。
「ゲーム、体調的に大丈夫?
吐き気したり、頭痛がしたらストップかけていいから。
メイの体調までは、推し量ってしかやれないからさ。
それが心苦しいんだけど。」
さらっと心配してくれるのはレン。
そういうところが優しいから好きだ。
っていうか、吐き気があることを勘付いている辺りが少し怖い。
村西さんから聞いたのかしら。
手始めにマリオをやった。
私、こういうゲームの類は超がつくくらい弱いのよね。
案の定、一番最初に死ぬのは私のマリオ。
……蓮太郎が何とか敵をとってくれた。
……後で蓮太郎に特訓してもらおう。
wiilsportsではかなり調子が良かった。
何度も村西さん負かしたしね。
そろそろお腹が空いてきたというので、蓮太郎が朝食作りを始めた。
私も、たくさん泣いたからなのか、お腹は空いている。
テレビを点けると、いつものごとく、日本の報道番組が放映されていた。
なぜって?
蓮太郎の知り合いである有能エージェント、確か伊達さんという名前の男性に頼んで、日本の番組も観れるようにしてもらったからよ。
だってこっちの番組、つまんないんだもの。
『大阪地検の検事が防犯カメラのデータを改ざんし、そのデータを証拠に冤罪に陥れたという事件について昨夜、新たな事実が明らかになりました。』
……こんな風な事件、確か6年くらい前に、日本であった気がしたわ。
……日本の検事も進歩ないわね。
あ、だけど、蓮太郎のお姉さん、宝月 巴検事とその伴侶、御劔 智司検事は別よ。
私の唯一、尊敬している検事だもの。
………?
蓮太郎…?
それまで小気味よく響いていた包丁の音が、止まった。
彼の表情が曇っている気がするのは、気のせいかしら?
それに、血が出そうなくらい強く唇を噛んでいるような……?
大阪地検検事の不祥事のニュースが終わると、蓮太郎の表情が元に戻った。
何か検事のねつ造事件のことについて……思い当たる節があるのかしら?
まぁ……気のせいよね。
そう思おうとした。
けれど、気のせいではなかったとしたら?
助けてもらった分、今度は私が蓮太郎に恩を返す番。
いつの間にか寝ちゃってたみたい。
目が覚めて、頭を抱えた。
また、あの夢だ……
夢に出て来るのは、2人の男。
彼らに抵抗することも出来ないまま、暴行される。
数ヶ月後に妊娠が発覚する。
いつもそこで目が覚める。
寝覚めはもちろん最悪。
目の近くに、まだ少し冷たいタオルが置いてあった。
毛布もきちんと肩まで掛け直されていた。
きっと……ここまでしてくれたの、蓮太郎だ。
万が一のためにと、洗面器やビニール袋まで。
これは村西さんだろう。
起きちゃって、寝れそうにない。
リビングに行こうと階段を降りると、誰かの話し声がする。
そっと扉を開くと、蓮太郎が誰かと電話をしていた。
心配かけたな、と言ってくれというような内容から推測して、電話の相手は蓮太郎の幼なじみかしら?
「ごめん……メイ……。
うるさかった?
起こしちゃったなら、ごめんね?」
そう言って謝る蓮太郎に、私が怖い夢を見て起きてしまっただけだと言う。
彼は柔らかく微笑んで、温かいホットミルクを差し出してくれた。
「あ、ケーキあるけど。
食欲あるなら……食べる?」
何でケーキ?
私を元気づけるためかな?
「メイ、2日前に17歳になったばかりだろ?
……オレが日本に帰る前に予約だけして、村西さんに取ってきてもらったの。」
そういうことか。
自分の誕生日、すっかり忘れていたわ。
そっか、あと1年で、こちらの国でも、結婚できる年齢になる。
日本に行けば、私はもう結婚できる年齢なのだが、どちらにしても蓮太郎はまだだ。
「ごめんね。
……今はまだちょっとお腹が空いていないから、後で皆で食べることにしましょう。」
そして、村西さんの提案で、3人でwiilをやることに。
「ゲーム、体調的に大丈夫?
吐き気したり、頭痛がしたらストップかけていいから。
メイの体調までは、推し量ってしかやれないからさ。
それが心苦しいんだけど。」
さらっと心配してくれるのはレン。
そういうところが優しいから好きだ。
っていうか、吐き気があることを勘付いている辺りが少し怖い。
村西さんから聞いたのかしら。
手始めにマリオをやった。
私、こういうゲームの類は超がつくくらい弱いのよね。
案の定、一番最初に死ぬのは私のマリオ。
……蓮太郎が何とか敵をとってくれた。
……後で蓮太郎に特訓してもらおう。
wiilsportsではかなり調子が良かった。
何度も村西さん負かしたしね。
そろそろお腹が空いてきたというので、蓮太郎が朝食作りを始めた。
私も、たくさん泣いたからなのか、お腹は空いている。
テレビを点けると、いつものごとく、日本の報道番組が放映されていた。
なぜって?
蓮太郎の知り合いである有能エージェント、確か伊達さんという名前の男性に頼んで、日本の番組も観れるようにしてもらったからよ。
だってこっちの番組、つまんないんだもの。
『大阪地検の検事が防犯カメラのデータを改ざんし、そのデータを証拠に冤罪に陥れたという事件について昨夜、新たな事実が明らかになりました。』
……こんな風な事件、確か6年くらい前に、日本であった気がしたわ。
……日本の検事も進歩ないわね。
あ、だけど、蓮太郎のお姉さん、宝月 巴検事とその伴侶、御劔 智司検事は別よ。
私の唯一、尊敬している検事だもの。
………?
蓮太郎…?
それまで小気味よく響いていた包丁の音が、止まった。
彼の表情が曇っている気がするのは、気のせいかしら?
それに、血が出そうなくらい強く唇を噛んでいるような……?
大阪地検検事の不祥事のニュースが終わると、蓮太郎の表情が元に戻った。
何か検事のねつ造事件のことについて……思い当たる節があるのかしら?
まぁ……気のせいよね。
そう思おうとした。
けれど、気のせいではなかったとしたら?
助けてもらった分、今度は私が蓮太郎に恩を返す番。