ボーダー
「懐かしいなぁ。
4年前も確か、こうやって寝てた。
私がベッドで、蓮太郎が布団。
あの頃は、何も考えずに寝れたのに。

あの頃は、早く大人になって、蓮太郎に似合うような女の子になりたかった。
だからちょっとでも、側にいて蓮太郎のクセとか知りたかったんだよね。」

「そうだっけか。
もう、4年も前になっちゃうのか。」

メイが、そんなことを考えてたなんてな。
少なからず、彼女自身はその頃からオレのことを異性として意識はしていたわけだ。

正直、改めて聞くと嬉しい。

「メイはさ、まさか……今回のことで検事辞めたりとか……しないよね?」

ふと気になった。

姉さんも一時は検事を辞めることも考えたらしい。

「いろいろ迷ったりはしているの。
だけど、辞めるほどじゃないわ。
……まだ全然、目標としている宝月主席検事みたいには、なれていないから。
人間的にはもちろん、大人の女性としてもね。
憧れてるのよ。」

………!!

姉さんの名前を聞くと、あの事件を思い出す。
ねつ造された証拠で、連続殺人犯の有罪を立証した……あの事件。

今日報道されていた事件とほぼ同じだ。

そのことをオレだけは知らなかった。
オレの2番目の姉、茜《あかね》姉さんには知らせていたようだ。

巴姉さん……。
何でオレには何も話してくれなかった?
巴姉さんはオレを信用していないのか?
オレがアメリカにいるから負担をかけたくないっていうのかもしれないけど、ショックだった。

それからオレは一切、巴姉さんとの連絡を絶った。

だとしたら……思い出さないはずなのに。
何でオレ……巴姉さんの名前を聞くだけで、事件のことを思い出すんだろう。

仲直りして、改めて姉弟として仲良く過ごしたいのか?
自分でも……よく分からない。

「……そっか。
オレももう寝るから、早く寝ろよ?
おやすみ。メイ。」

上手く笑顔を作れていたかはわからないが、メイの頭をゆっくりと撫でてから、そそくさと布団に入った。

これ以上、彼女の顔を見ていると、理性を保っていられなくなる。

そんなことをしても、お互いに傷付くだけだ。
特に、メイは。

仮にオレに好意を持っていたとしても、あんなことがあった後だ。
相手がオレでも、抱かれることには抵抗があるだろう。

仮にも好意を抱いている男の前で、ショートパンツなんて履くなよな。

キャミソールも、モロに中見えてたし。

抱くときの想像をしてしまいそうになる。!
あぶないあぶない……

そんなことをしたら、せっかく自分で処理したのが台無しになる。

こういうときは、寝るに限る。

しょんぼりしているメイをチラ、と見やったあと、目を閉じて眠りの世界に入った。
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