ボーダー
そんなことを考えながら食器洗い機を回し終える。
彼が入れてくれたホットミルクも飲み終わり、もといたソファーに座る。

「メイー?
あがったけど……」

リビングに続く扉から蓮太郎の声がした。
……心臓の音が急に速くなったのが分かった。
その、彼のお風呂上がりの姿を見て、顔を赤くせずにはいられなかった。

「蓮太郎……」

パパが昔よく着てたものだから、サイズが大きめっていうのは分かってたつもりだ。
いくら何でも…胸元とか……はだけすぎで、
ほぼ何も着ていないのと変わらない。
しかも、パンツ1枚だし……

4年前はさほど気にならなかったのに、今は何でこんなエロく感じるの?
ここがリビングじゃなくて寝室だったとしたなら、もしかして?なんて想像もできてくる。

ただカッコイイだけじゃなくて……成人に近い年齢になってきて、あの頃にはなかった色気があるからかな?

ひたすら彼を見上げていると……

「何?
……似合わない?」

蓮太郎も男の人だ。
なんとか理性は保ってくれているみたいだが、その箍が外れたらどうなるかくらいは理解している。

それに、彼にそうされる覚悟はある。

今蓮太郎にぎゅってされたら多分、心臓の音が聞こえてしまうくらい、ドキドキしている。

私らしくないのは分かっている。
いつもならすぐに軽口を叩いているのに。

言葉が出てこない。
彼の引き締まった上半身と、下半身を覆う唯一の布を交互に見て、目をパチクリさせる。

下半身を覆う布の下を、少し見てみたい、なんて考えてしまった私はおかしいのだろうか。

好きではない人のは見させられたが、好きな人のは見たことがないのだ。

こんなこと考えてたの、バレないようにしなきゃ!

「べっ……別に?
そんなことないってか……似合ってるよ?
すごく……」

ぎゅ……

ほんの一瞬だけ、抱き寄せられた。
あれ…?
気のせい…かな?

蓮太郎の心音が聞こえたのはほんの一瞬だったけど……早かったような気がする。

……何でかな?

私は…自分の心臓の音を蓮太郎に聞かれてないか気になって仕方なかった。
彼の心音を聞く余裕なんてまるでなかった。

「じゃ、これでバトンタッチな?
次、メイがお風呂入る番だよ?」

私は、早足で浴室に向かった。

ビックリしたぁ……
あんな艶のある低い声で囁かれて……
倒れるかと思ったよ……

あの頃とは違う、色気のある声。
抱き寄せてくれたときに感じた、私の倍はある大きな手の温もり。

まだ成人はしていないけれど、大人になったんだなぁ、ということを改めて肌で感じた。
< 153 / 360 >

この作品をシェア

pagetop