ボーダー
FBI本部に着いて、村西さんに皆がいるという会議室に案内された。
その場所は、完全防音になっている。
場所柄、重要な話がされることが多い。
その話が外に聞こえないようにするためであろう。

「メイさん……ツラかったでしょう……」

「途中で泣いてしまったとしても……話が途切れ途切れになってしまっても……ちゃんとボクらが聞きますからね?」

「口調が荒れても全然構いません。
ありのままを話していただきたいんです。」

そう、口々に言ってくれる蓮太郎の同僚たち。

……浅川 将輝。
暴力と束縛でしか私を縛ることが出来ない、哀れな男。

私は、今までにソイツから受けた暴行についてゆっくりと言葉を選びながらだけど、話していった。

「私が……半年くらい前からデーティングをしている男なんだけどね、ソイツ。
今はソイツへの気持ちなんかさらさらないわ。安心して?
でも、今回のこと以外にも、いろいろされたわ。

私、検事の仕事で忙しいから、2人で会うなんて、月に1度、出来るか出来ないか。
そういった感じなの。

その待ち合わせに仕事で遅れたときも、有無を言わさず『携帯見せろ』って言われたのよ。
着信履歴やメールを入念にチェックされたわ。

しかも……1人でいる私を心配して、村西さんが家に来てすぐに帰ったわ。
そのすぐ後になぜかアイツが来たのよ。
『男といただろ』って言うなり私の顔を何度も殴ってきたのよ。

村西さんが来ることもソイツの前では1度も口にしてないのに何でかなって思った。
私の家に隠しカメラと盗聴機仕掛けてて。

ホントにありえないわ。」

アイツのことを話している最中に泣くまいと思っていたのだけど……。
なぜか涙が止まらなくなった。

「よっぽど視野が狭い男なのよ、ソイツ。
村西さんとの私の年齢差は親子くらいある。

それを男といると分かると恋愛関係だと思うのは、ちょっと思考回路が未熟すぎると思うわ。

話が逸れたわね。

カリフォルニアのディズニーランド行ってホテル泊まったの。
同じ州内でも時差があるから、帰るのはキツいだろう、って話になったから。

そのはずなんだけど、ホテルの部屋のベッドに寝転んだ記憶しかないの。
気付いたら家のベッドで寝ていたから。
起きたら身体中がすごく痛くて。
鏡見たら多くのアザが出来てたの。
後は、筋肉痛が遅れてきたみたいな重だるい痛みもね。
生理止まるの楽しみ、って悪魔みたいな笑みをで言われたから、十中八九、避妊はされていないわ。

あと1年早く生まれてたら、薬局でアフターピルが買えたのに、その辺りも手間がかかったわ。

……最悪よ。
最低な男の遺伝子を持つ子を妊娠なんて死んでも嫌なの。

身籠るなら、顔は整ってて、それでいて優しくて、反応はちゃんと私だけを一途に愛してくれる、蓮太郎みたいな人との子がいいわ。」
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