ボーダー
電話に出ることにした。

「レン!!
久しぶり!
……元気?
ごめん、奥さんと夜のお楽しみがお預けされてる伊達さんにちょっと文句言われてたら、遅くなっちゃった。」

『あぁ……
まぁな。
男はそういうのあるんだよ。

で、何か今マズかった?
お前らのお楽しみも邪魔したか?』

「もう!
レンまでそんなこと言うんだから!
んで?
…何かあったの?」

「今からFAXで写真を送る。
男女で写ってはいるがその男のほうについて調べてほしいんだ。
…そいつが、メイに暴力を振るった男のうちの1人だから。
そいつともう1人、共犯の男がいるらしい。
そいつとの繋がりも知りたいし。』

「わかった。
……ちゃんと調べておくからね?」

私にとってはこんなの朝飯前。

私の特殊能力である、「オーラ瞬間記憶能力」。
人は必ず、その人固有のオーラを持っている。
それを、実際にその人に会うまでもなく、
写真や画像からも感じ取れる。

それを覚えておけば、実際に会ったとき、役に立つ。
オーラの違いには、性格や人格、心境の変化やらいろいろなものがにじみ出るから。

『それから、珠美 由紀ちゃんって子の母親がFBI本部に来たんだ、ついさっき。
ハナ、その由紀ちゃんと中学の同級生だったんだろ?
連絡先とか知ってたら、教えてほしい。

なに、ちょっと聞きたいことと、アドバイスをしたいだけだから。
お願いできる?』

由紀に聞きたいことと、アドバイスって何だろう?

「由紀に何を言うつもり?
親友に酷いこと言うのは、いくら私の幼なじみでも許さない。」

『オレの推測だが、由紀ちゃんはその、これから写真を送る奴のカウンセリングの助手みたいなこともしていた。
ちょっとした気晴らしのつもりの雑談相手になるうちに、ソイツのことが気になってるはずなんだ、異性としてな。

そんなヤツが、今回みたいな事件を起こした。
自分がしっかりしてなかったから、って自分を責める可能性もある。
そんな必要はない、って言いたいだけだよ。』

「うん、分かった。
伝えてあげて?
私を挟んじゃうと、話がややこしくなるね。
後でメールするよ。」

私がそう言った時、FAXが音を立てて1枚の紙を吐き出した。ミツがそれを取って、私に手渡してくれる。

海外のディズニーランドだろうか?
男女が2人で写っているが、女の子の方は無理やり笑顔を貼り付けたような感じだ。

この男ね。
……レンの大事な子をひどい目に遭わせたのは。
そして、男の隣が、レンにとっての大事な子。
私にとっては、ミツみたいな存在の子、いや、それ以上か。

茶髪でピアス。
遊んでいる印象で、真面目な由紀には合わない気がする。
でも、本当に由紀の想い人なのかもしれない。

それとなく、由紀の親友でもある愛実に探りを入れてみるか。

レンの方からミツに電話を代われというのでミツに電話を渡す。
その最中、ふと思った。

レン……絶対何かあったわ。
声のトーンがいつもより沈んでいるから。
……しかもレンの場合、とにかく何も言わずに溜め込むからね。

私もミツは言わずもがな。
だけど、愛実も友佳も麻紀も一成くんも真くんも、和貴くんもみーんな、レンの味方なんだから、相談してくれていいんだから。

もう、今度お昼休みに皆で集まってレンのことについて会議したいくらいだよ。
……皆にも一応この人のこと聞いてみたいし。

ミツが話し終わると、電話機を受け取る。

「レンだ。
一言ハナにお礼を言ってから切りたいらしいから。」

『ありがとな、ハナ。
……また、連絡する。』

ほんとに一言だけ!
もっと何かないの?
一応、まだ幼なじみでしょ!
そう思ったが、電話は既に切られていた。

忙しい人だな。

明日、エージェントルームの会議でこのこと、言っておかなきゃな。
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