ボーダー
「……美味しい。」
オレが呟いた言葉を拾ってくれる由紀ちゃん。
「美味しいですよね、これ。
これを飲むと、胸につかえていて言えなかったことが、溢れて自然に口から出てくる気がするんです。
ダムにせき止められてたものが、次から次へ溢れてくる感じ。
あ、ごめんなさい、話の続きを言わなきゃですよね。」
グラスを置いて、話し出す。
その横顔は、寂しそうだった。
「自分の目の前にいる人を自分だけのものにするために、何かやるだろうとは予想できていました。
でも、まさか無理矢理犯すなんて。
その相手、メイさんじゃなくて私なら良かったのに、ともほんのちょっぴり、思ったくらいです。
今回、メイさんがされたようなことをされてもなお、その加害者の男の子にゾッコンの同級生がいるんです。
今ならその気持ちが痛いほどわかります。
そんな行為をしたって分かっても、彼を見捨てるなんてできない。
放っておいたら、今度こそ彼は独りぼっちになっちゃいます。
私、何とかして彼が心に抱えている荷物を軽くするお手伝いがしたいんです。
彼をもし、捕まえたら、更生のためのカウンセリングに居させてください!
機会があればで、書類運び等の雑用でも構いません!
カウンセリングを受ける人、浅川くん自身の意思決定が何より尊重されるべきで。
そこにカウンセリングに関わる私や私の母、遠藤さんの私情が挟まってはいけないことも、よく母から聞かされてます!
それでも。
彼が望むなら、少しでも側にいれるようになりたいし、そうしたいんです!」
血を吐くような、彼女の心からの叫びに、何か既視感を感じた。
彼女も、オレと同じ、なんだな。
どうにかして好きな奴の側にいたい。
その原理で行動してるんだ。
「由紀ちゃん、それだよ。
やっと、本人も自覚したな。
それが恋愛感情としての好き、ってことだよ。
何としても、好きな人の側にいたいし、支えになりたい。
そういう気持ち、今は強いんでしょ?
由紀ちゃんのためにも、ちゃんと探して捕まえるから。
そしたら、伝えてやるといいよ。
その気持ち。」
オレがそう言うと、雲の切れ間から覗いた太陽みたいな笑みを見せた由紀ちゃん。
「ふふ。ハナが一時期だけ蓮太郎くんのこと好きだった、って言ってたの。
わかる気がするな、それ。
さ、私と同じ穴のムジナと見た。
次は蓮太郎くんの番だよ?」
オレは、自分の斜め上にあったグラスの中に入った液体を半分ほど飲む。
「……オレ、ただ、メイが好きっていう気持ちを自覚するのが怖くて、ハナに逃げてただけだったんだ。
……だから、親友の前で言いたくないけど、メイへの気持ちを消すためにハナを抱いた。
そんなオレが、今更純情ぶってメイを抱きたい、なんて、矛盾してるのはわかってます。
だけど、オレ……今回のことで散々傷ついて泣いているメイをここ数日、ずっと見てました。
メイはやっぱり、オレがずっと守りたいし、オレじゃなきゃ、守ってやれないって思うんですよね。
現に、オレがこっちに来てまだ2日くらいしか経ってないけど、オレの前でメイが笑顔を見せてくれる日が増えた気がするんです。
それが何より嬉しくて、幸せで。
オレは、メイが好きで、ちゃんと彼女を恋人にしたい、って思うんです。」
……やっぱり。
このカクテルには魔法がかかっているんじゃないかっていうくらい、自分の胸につかえていた気持ちがあっさりと言葉になる。
バーテンダーとカクテルの力、恐るべし……
オレが呟いた言葉を拾ってくれる由紀ちゃん。
「美味しいですよね、これ。
これを飲むと、胸につかえていて言えなかったことが、溢れて自然に口から出てくる気がするんです。
ダムにせき止められてたものが、次から次へ溢れてくる感じ。
あ、ごめんなさい、話の続きを言わなきゃですよね。」
グラスを置いて、話し出す。
その横顔は、寂しそうだった。
「自分の目の前にいる人を自分だけのものにするために、何かやるだろうとは予想できていました。
でも、まさか無理矢理犯すなんて。
その相手、メイさんじゃなくて私なら良かったのに、ともほんのちょっぴり、思ったくらいです。
今回、メイさんがされたようなことをされてもなお、その加害者の男の子にゾッコンの同級生がいるんです。
今ならその気持ちが痛いほどわかります。
そんな行為をしたって分かっても、彼を見捨てるなんてできない。
放っておいたら、今度こそ彼は独りぼっちになっちゃいます。
私、何とかして彼が心に抱えている荷物を軽くするお手伝いがしたいんです。
彼をもし、捕まえたら、更生のためのカウンセリングに居させてください!
機会があればで、書類運び等の雑用でも構いません!
カウンセリングを受ける人、浅川くん自身の意思決定が何より尊重されるべきで。
そこにカウンセリングに関わる私や私の母、遠藤さんの私情が挟まってはいけないことも、よく母から聞かされてます!
それでも。
彼が望むなら、少しでも側にいれるようになりたいし、そうしたいんです!」
血を吐くような、彼女の心からの叫びに、何か既視感を感じた。
彼女も、オレと同じ、なんだな。
どうにかして好きな奴の側にいたい。
その原理で行動してるんだ。
「由紀ちゃん、それだよ。
やっと、本人も自覚したな。
それが恋愛感情としての好き、ってことだよ。
何としても、好きな人の側にいたいし、支えになりたい。
そういう気持ち、今は強いんでしょ?
由紀ちゃんのためにも、ちゃんと探して捕まえるから。
そしたら、伝えてやるといいよ。
その気持ち。」
オレがそう言うと、雲の切れ間から覗いた太陽みたいな笑みを見せた由紀ちゃん。
「ふふ。ハナが一時期だけ蓮太郎くんのこと好きだった、って言ってたの。
わかる気がするな、それ。
さ、私と同じ穴のムジナと見た。
次は蓮太郎くんの番だよ?」
オレは、自分の斜め上にあったグラスの中に入った液体を半分ほど飲む。
「……オレ、ただ、メイが好きっていう気持ちを自覚するのが怖くて、ハナに逃げてただけだったんだ。
……だから、親友の前で言いたくないけど、メイへの気持ちを消すためにハナを抱いた。
そんなオレが、今更純情ぶってメイを抱きたい、なんて、矛盾してるのはわかってます。
だけど、オレ……今回のことで散々傷ついて泣いているメイをここ数日、ずっと見てました。
メイはやっぱり、オレがずっと守りたいし、オレじゃなきゃ、守ってやれないって思うんですよね。
現に、オレがこっちに来てまだ2日くらいしか経ってないけど、オレの前でメイが笑顔を見せてくれる日が増えた気がするんです。
それが何より嬉しくて、幸せで。
オレは、メイが好きで、ちゃんと彼女を恋人にしたい、って思うんです。」
……やっぱり。
このカクテルには魔法がかかっているんじゃないかっていうくらい、自分の胸につかえていた気持ちがあっさりと言葉になる。
バーテンダーとカクテルの力、恐るべし……