ボーダー
〈メイside〉
はぁ。
……蓮太郎……。
どこ行っちゃったんだろう。
電話をしても、電話口で彼の男らしい低い声を聞くことはできなかった。
皆、犯人の情報探しに夢中になっているので、会議室には、私と村西さんの2人きりだ。
いくら一緒にいるのが村西さんとはいえ、蓮太郎、妬くんじゃないかなぁ……
「昨日は、ラブラブできたか?レンとは。」
えっ!?
いくらなんでも、直球ストレートすぎません?そんな軽いノリで聞きますか?
意地でも、昨日、蓮太郎のシャワーシーンにドキドキして、彼になら抱かれてもいいかもなんて思ったことは、言わないつもりだったのに。
シャカシャカシャカシャシャカ……
キュッ。
スッ……
私の目の前に差し出された1杯のカクテル。
昨日も呑んだ、あのカクテルだ。
……でも、どうしてこんなところで?
そして、シェーカーとかグラスはどこから出してきたのだろうか。
「このカクテルだけは、ここで作ることを許されているんだ。
ノンアルコールですから、仕事中でも呑めますし。
仕事の休憩時間に出すと、仕事への活力が湧くと好評でね。」
カクテルを1口、味わった瞬間、なぜか涙が溢れてきていた。
「私、本当に、とっても期待してたの。
昨夜、蓮太郎に抱かれるんじゃないかって。
だけど、宝月検事さん……
彼女の名前を出した途端に、考え込むように黙っちゃって。
期待してたのに、残念どころじゃなくて。
私から色仕掛けでもすればよかったかな?とか思うくらいで。
どうしたら、良かったんでしょうか……
教えて下さい、村西さん!」
「レンのやつ、まだ気にしてるのか。
あ、今みたいな感じでレンに頼るといいぞ。
普段一人で何でもできそうなやつに頼まれるとクラっとくるぞ、特にレンみたいなタイプは特にな。」
「あのこと……って?
検事さんと何かあったの?
お願いです、教えて……!
私が知らない彼の心の闇。
それを払う手伝いがしたい!」
「メイ。
本当に本気で、好きなんだな。
レンのこと。
わかったよ。
話せば長くなるけど、大丈夫だよな?
"TMー10号事件。"
連続殺人事件だった。
その犯人はもちろん、今は既に刑に処されているから、この世にいない。
その事件の法廷で提出されなかった証拠や、ねつ造されたものがあった。」
「ねつ造した証拠で……有罪にされたかもしれないの?
もしかしたら……無実の人間だったかもしれないのに?
そんなことって、あんまりだと思う!」
自分では、分かっていなかった。
この発言をしたときから……
自分の中での"検事像"に答えが出ていたことに。
自分でも気付かぬうちに頬を涙が伝っていた。
「さらに、そのころの主席検事は…上司に脅迫されていた。
そのことを話すなと。
TMー10号事件の現場でさえ、その上司によってねつ造されたもの、そう聞いている。」
「時は流れてその3年後。
警察局で殺人事件が起きた際、主席検事さんが"自分が殺した"と自供した。
後の裁判で、主席検事を脅迫していたその上司が真犯人だとわかった。」
「なるほど。
主席検事さん、虚偽の自供をさせられたんだ。
その上司によって。
脅迫されるのは恐怖でしかないから……
哀れなものね、その上司も。
脅迫や権力、暴力で人を支配して自分の駒みたいに動かすしか出来ないなんて。」
「レンは事件の真相を、事件ファイルを見て知ったそうだ。
その検事の交際相手である御劔検事の。
自分の姉である彼女が直接、レンに真相を話してくれなかったことに傷ついたようで。
日本に帰って姉たちがパーティーを開いてくれたときも、最低限の挨拶しかしなかったとレンから聞いた。
仲直りは未だに出来ていないようだ。
そんなことが……あったんだ……
蓮太郎のこと、何でも知っているつもりでいたのに。全然知らなかった。
「さらに、レンは一時期、カガク捜査官になる意義がわからなかった時期があったそうだ。
ちょうどその時期に警察局の事件が起きた。
レンは、それがきっかけで目標が出来た。
"姉さんを助けるんだ!
もう、二度とこういうことが起きないように!
だから、絶対、カガク捜査官になるんだ"って。」
はぁ。
……蓮太郎……。
どこ行っちゃったんだろう。
電話をしても、電話口で彼の男らしい低い声を聞くことはできなかった。
皆、犯人の情報探しに夢中になっているので、会議室には、私と村西さんの2人きりだ。
いくら一緒にいるのが村西さんとはいえ、蓮太郎、妬くんじゃないかなぁ……
「昨日は、ラブラブできたか?レンとは。」
えっ!?
いくらなんでも、直球ストレートすぎません?そんな軽いノリで聞きますか?
意地でも、昨日、蓮太郎のシャワーシーンにドキドキして、彼になら抱かれてもいいかもなんて思ったことは、言わないつもりだったのに。
シャカシャカシャカシャシャカ……
キュッ。
スッ……
私の目の前に差し出された1杯のカクテル。
昨日も呑んだ、あのカクテルだ。
……でも、どうしてこんなところで?
そして、シェーカーとかグラスはどこから出してきたのだろうか。
「このカクテルだけは、ここで作ることを許されているんだ。
ノンアルコールですから、仕事中でも呑めますし。
仕事の休憩時間に出すと、仕事への活力が湧くと好評でね。」
カクテルを1口、味わった瞬間、なぜか涙が溢れてきていた。
「私、本当に、とっても期待してたの。
昨夜、蓮太郎に抱かれるんじゃないかって。
だけど、宝月検事さん……
彼女の名前を出した途端に、考え込むように黙っちゃって。
期待してたのに、残念どころじゃなくて。
私から色仕掛けでもすればよかったかな?とか思うくらいで。
どうしたら、良かったんでしょうか……
教えて下さい、村西さん!」
「レンのやつ、まだ気にしてるのか。
あ、今みたいな感じでレンに頼るといいぞ。
普段一人で何でもできそうなやつに頼まれるとクラっとくるぞ、特にレンみたいなタイプは特にな。」
「あのこと……って?
検事さんと何かあったの?
お願いです、教えて……!
私が知らない彼の心の闇。
それを払う手伝いがしたい!」
「メイ。
本当に本気で、好きなんだな。
レンのこと。
わかったよ。
話せば長くなるけど、大丈夫だよな?
"TMー10号事件。"
連続殺人事件だった。
その犯人はもちろん、今は既に刑に処されているから、この世にいない。
その事件の法廷で提出されなかった証拠や、ねつ造されたものがあった。」
「ねつ造した証拠で……有罪にされたかもしれないの?
もしかしたら……無実の人間だったかもしれないのに?
そんなことって、あんまりだと思う!」
自分では、分かっていなかった。
この発言をしたときから……
自分の中での"検事像"に答えが出ていたことに。
自分でも気付かぬうちに頬を涙が伝っていた。
「さらに、そのころの主席検事は…上司に脅迫されていた。
そのことを話すなと。
TMー10号事件の現場でさえ、その上司によってねつ造されたもの、そう聞いている。」
「時は流れてその3年後。
警察局で殺人事件が起きた際、主席検事さんが"自分が殺した"と自供した。
後の裁判で、主席検事を脅迫していたその上司が真犯人だとわかった。」
「なるほど。
主席検事さん、虚偽の自供をさせられたんだ。
その上司によって。
脅迫されるのは恐怖でしかないから……
哀れなものね、その上司も。
脅迫や権力、暴力で人を支配して自分の駒みたいに動かすしか出来ないなんて。」
「レンは事件の真相を、事件ファイルを見て知ったそうだ。
その検事の交際相手である御劔検事の。
自分の姉である彼女が直接、レンに真相を話してくれなかったことに傷ついたようで。
日本に帰って姉たちがパーティーを開いてくれたときも、最低限の挨拶しかしなかったとレンから聞いた。
仲直りは未だに出来ていないようだ。
そんなことが……あったんだ……
蓮太郎のこと、何でも知っているつもりでいたのに。全然知らなかった。
「さらに、レンは一時期、カガク捜査官になる意義がわからなかった時期があったそうだ。
ちょうどその時期に警察局の事件が起きた。
レンは、それがきっかけで目標が出来た。
"姉さんを助けるんだ!
もう、二度とこういうことが起きないように!
だから、絶対、カガク捜査官になるんだ"って。」