ボーダー
「オレは、2番目の姉、茜に憧れてカガク捜査官を目指した。
その後に、あの、例の魔導学校の諸費盗難事件があった。
オレは、それを解決した後、カガク捜査官になるために渡米したい、と思った。
魔導学校の諸費盗難の加害者、帳 奈斗《とばりないと》になにか報復される恐れもあったし、一時期存在を消すにはちょうどよかった。」
ビク、と身体を反応させた由紀ちゃんが気になったが、話を続けた。
「カガク捜査官になるため、アメリカに渡ったはいいけれど、あまりにも難しすぎて勉強してもしても分からなかった。
夢を諦めて日本に帰ろうかとも思ったところに姉さんが被告人になった事件の知らせが来た。
それが奇しくも、ホームシックにも似た状態になっていたオレに目標を持たせてくれた。
もう金輪際こんな事件に姉さんを巻き込まないためにも勉強を頑張って、誇りを持てる捜査官になると心に誓った。
証拠品のねつ造や隠ぺいを許さないような、そんな捜査官に。」
カクテルがそうさせたのだろうか。
少々、熱く語りすぎた気もする。
「カッコいいね!
私も、母の背中を見てあんなふうに、心理学で少しでも人の心を明るく照らしたい、って思ったクチだからさ。
よく分かるなぁ、その気持ち。
蓮太郎くん。お互い、まだまだ未熟なところはあるけれど、ちょっとずつ成長していこうね!
あ、これ、私の母の名刺!
何かあったら話聞くって言ってたから、渡しておくね!
私も、浅川くん探し、協力する。
探して、彼に言いたいことは山のようにあるから。
また、機会があったらどこかで会おうね!
遠藤さん、ごちそうさまでした!」
由紀ちゃんは、会ったときに自分を責めて泣いていたことは別人格のような明るさと笑顔でそう言った。
オレのグラスの横に名刺を置いてからパチ、と軽くウインクをして、カウンターバーの席を立った。
その裏に、由紀ちゃん自身の連絡先も女の子らしい、丁寧な字で記されていた。
そういえば、ハナが言ってたっけ。
昔、まだオレも彼女も中学生だった頃。
電話をしていたときに、同級生はどんな子なのか、という話になったことがあった。
『明るくて笑顔が可愛いいい子だよ!
たまに話してくれる心理学の知識が役に立つこと請け合いだね!
話をきちんと聞いて把握した上で、的確なアドバイスをくれるところを見ると、相当に頭の回転も早い子だな』
とのことだった。
彼女のその話がまごうことなき事実だと、身を持って知った。
「きっと、仲直りできるだろうよ。
レン、お前が素直になれさえすればな。
それに、ちゃんとメイに気持ちを伝える前に、ベッドの上で彼女を愛でるのもな。
彼女の方も大概なんだが……。
お互いにそういうことをしたい、されたい気持ちはあるんだから、素直に言えばいいと思うんだが。」
「仲直りしたら、機会を見つけて、2人で行くかな、このバー。
オレが合法的に酒が飲める年齢になった時に。」
「ああ。
その時を待ってるよ。
さて、そろそろ会議室に戻ろう。
オレも、村西に伝えることがあるのを、すっかり忘れてたからな。
迷うと戻ってこれないからな。
案内するから、ついてこい。」
遠藤さんの背中にくっついて行きながら、会議室に戻った。
その後に、あの、例の魔導学校の諸費盗難事件があった。
オレは、それを解決した後、カガク捜査官になるために渡米したい、と思った。
魔導学校の諸費盗難の加害者、帳 奈斗《とばりないと》になにか報復される恐れもあったし、一時期存在を消すにはちょうどよかった。」
ビク、と身体を反応させた由紀ちゃんが気になったが、話を続けた。
「カガク捜査官になるため、アメリカに渡ったはいいけれど、あまりにも難しすぎて勉強してもしても分からなかった。
夢を諦めて日本に帰ろうかとも思ったところに姉さんが被告人になった事件の知らせが来た。
それが奇しくも、ホームシックにも似た状態になっていたオレに目標を持たせてくれた。
もう金輪際こんな事件に姉さんを巻き込まないためにも勉強を頑張って、誇りを持てる捜査官になると心に誓った。
証拠品のねつ造や隠ぺいを許さないような、そんな捜査官に。」
カクテルがそうさせたのだろうか。
少々、熱く語りすぎた気もする。
「カッコいいね!
私も、母の背中を見てあんなふうに、心理学で少しでも人の心を明るく照らしたい、って思ったクチだからさ。
よく分かるなぁ、その気持ち。
蓮太郎くん。お互い、まだまだ未熟なところはあるけれど、ちょっとずつ成長していこうね!
あ、これ、私の母の名刺!
何かあったら話聞くって言ってたから、渡しておくね!
私も、浅川くん探し、協力する。
探して、彼に言いたいことは山のようにあるから。
また、機会があったらどこかで会おうね!
遠藤さん、ごちそうさまでした!」
由紀ちゃんは、会ったときに自分を責めて泣いていたことは別人格のような明るさと笑顔でそう言った。
オレのグラスの横に名刺を置いてからパチ、と軽くウインクをして、カウンターバーの席を立った。
その裏に、由紀ちゃん自身の連絡先も女の子らしい、丁寧な字で記されていた。
そういえば、ハナが言ってたっけ。
昔、まだオレも彼女も中学生だった頃。
電話をしていたときに、同級生はどんな子なのか、という話になったことがあった。
『明るくて笑顔が可愛いいい子だよ!
たまに話してくれる心理学の知識が役に立つこと請け合いだね!
話をきちんと聞いて把握した上で、的確なアドバイスをくれるところを見ると、相当に頭の回転も早い子だな』
とのことだった。
彼女のその話がまごうことなき事実だと、身を持って知った。
「きっと、仲直りできるだろうよ。
レン、お前が素直になれさえすればな。
それに、ちゃんとメイに気持ちを伝える前に、ベッドの上で彼女を愛でるのもな。
彼女の方も大概なんだが……。
お互いにそういうことをしたい、されたい気持ちはあるんだから、素直に言えばいいと思うんだが。」
「仲直りしたら、機会を見つけて、2人で行くかな、このバー。
オレが合法的に酒が飲める年齢になった時に。」
「ああ。
その時を待ってるよ。
さて、そろそろ会議室に戻ろう。
オレも、村西に伝えることがあるのを、すっかり忘れてたからな。
迷うと戻ってこれないからな。
案内するから、ついてこい。」
遠藤さんの背中にくっついて行きながら、会議室に戻った。