ボーダー
「あれ?メイ。

泣いて余計にお腹空いたろ?
ご飯食べるか。」

「うん!
ありがと、蓮太郎。

何か晴れ晴れしたわ。
いろいろと。」

本当に晴れやかな笑顔のメイを見ていると、日本にいるオレの幼なじみ2人には悪いが、授業やら何やらを放り出してでもこっちに来て良かった、と思う。

「美味しい。
私も、もう少し上手くならないと。」

「いや、全然そんなことないから。」

「……それにしても、ゲーム強かったな、村西さん。」

「そうね。
私たちの完敗ね。」

「……この間のやつは本気じゃなかったんじゃないか、って思ったほどだよ。」

「うん。そうかもしれないわ。」

そんな会話をしながら夕食を終える。
せっかく、エージェントルームの伊達さんに頼んで、日本のTV番組のほとんどを映るようにしてもらったのに、その液晶テレビは沈黙したままだ。

いや、今日はむしろこれでいい。

メイはさっきから、オレの顔をチラと見つめては目を逸らす、を繰り返している。

言いたいことがあるのに言えない時の、メイの癖だ。
思い返せば、インキャンの帰りに空港にいるメイを捕まえた時も、そんな仕草をしていたような気がする。

「で……メイ。
何かオレに言いたいことあるの?」

「あるけど、まだ秘密。
お風呂上がったら話す。
私の部屋で待ってて?」

何なんだよ……

空になった食器をシンクに置いて、浴室に向かうべく、ドアに手をかけたメイ。
彼女の腕を軽く引いて、手近な柱に華奢な彼女の身体を押しつけた。

「ね、メイ。
好きな子から待ちぼうけくらうの、ちょっとしんどいんだけどな?」

「えー?
そう言われても、今日は時間かけて手入れしたいからさ、待っててほしいな?
ちゃんとしないとね?
実質、蓮太郎とはハジメテだし。」

は?
……そういうことかよ。

メイの頭をわしゃわしゃと撫でて、身体を解放する間際に耳元で言う。

「……いい子。
でも、お風呂から戻ったら何してほしいか、メイの口からちゃんと聞かせてほしいな。
早く入っておいで?

何とかオレの理性が保つうちにさ。」

パタパタとスリッパを引っ掛けながら浴室に向かうメイ。
彼女の部屋に行き、着ていたパーカーを脱ぎ捨て、ベッドに寝転がる。

あぶねぇ……

理性、切れる寸前だった。

オレ、ちゃんと優しくしてやれるかな?

いざとなったら、理性飛びそう。

ミツの気持ち、今ならわかる。

アイツも、ハナを抱く前はこんな気持ちだったのかな。

そんなことを考えていると、部屋のドアゆっくりとが開いた。

現れたのは、もちろんメイ。

なんだけど。

胸元から下を覆うベアトップのオールインワンで、かなりゆるゆる。
腕で隠されてるけど、オレの今いる位置から谷間がモロに見えている。
しかも、髪の毛も半乾きで、妖艶な香りまで纏っている。

これ見て、理性飛ばない男は皆無だろう。
それがとりわけ、好きな女なら。

「メイ?
ほら、早くこっちおいで?」

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