ボーダー
そして、私の部屋に行くと、ベッドに蓮太郎が寝転がっていた。
……しかも、あろうことか白のタンクトップ姿で。
今までパーカーの袖に隠れてたから分かんなかったけど、結構、二の腕とかが鍛えられていて、色気を感じる。

「メイ。
ほら、早くこっちおいで?」

その急くような言葉から、早く行為に及びたい蓮太郎の気持ちが伝わってくる。

「バカぁ……
もちろん歓迎なの。
蓮太郎なら大丈夫。
むしろ、嫌な記憶上書きされるくらいにされたい……」

顔を真っ赤にして、ぎゅ、と蓮太郎に抱き着いた。タンクトップ越しに感じる彼の心臓の鼓動は、心なしか速い気がした。

「今聞いてあげる。
余裕がある今のうちに。
終わった後だと、忘れそうだ。」

蓮太郎がそう言うなら、今話そう。
チャンスはおそらく、今しかない。

「あの……ね?
仲直り……してほしいんだ。
宝月主席検事さんと。
TM-10号事件以来、全く連絡とってないんでしょ?お姉さんなのに。」

「それ……村西さんから聞いたの?」

ほんの少し、私から目を背ける蓮太郎。
触れられたくない話なのか。
でも、触れなければならない。

「そうよ?
今日、たまたまそのお姉さんとも会ったわ。
蓮太郎の幼なじみさん、にどうアプローチして恋仲になるか、で頭がいっぱいみたいだったから、その当時の蓮太郎は。
懸案事項を増やしたくなくて、伝えなかったんだって。」

「そっか。
だけどその願いだけは聞けないな。
いくら可愛くて色っぽい、ガールフレンドからのお願いでも。」

『恋仲』とか『色っぽい』とか、普段言われたら嬉しくて舞い上がってしまうワードだが、それで誤魔化そうとしても無駄だ。

それなら私も。
本気で、仲直りしなきゃダメだと思わせるにはなんと言えばいいだろう?

私も、暗に匂わせてみるか。

蓮太郎との将来をちゃんと真面目に考えているということを。

仮に、蓮太郎と結婚したとする。

すると、蓮太郎は私の夫に、巴さんは私の義理の姉になるわけだ。

夫と義理の姉の喧嘩のとばっちりを受けるかもしれないのは、妻になる私のほうかもしれないのだ。
それはごめんだ。
気まずいことこの上ない。

「カガク捜査官目指してる時、例えその意義がわからなくなっても、絶対諦めなかったでしょ?
それなのに逃げようとするの?

蓮太郎、そんな人だと思ってなかった。

仮に、何年後になるか分からないけど、ちゃんと恋人になって、籍入れて、苗字が蓮太郎と同じになったときに、そのお姉さんと私も家族になるの!

嫌だよ、お義姉さんと旦那が仲悪いなんて。
どうしていいかわからないじゃない。」

目を潤ませて訴えかける。

私は本気だ。
だからこそ、ちゃんと仲直りした状態で、家族になりたい。

「んっ……」

力強く……唇を奪われる。
息が出来ない。

唇が離れると、今度は私の目を真っ直ぐ見て、蓮太郎は言葉を紡いでくれた。

「そうだよな。
メイはさ、目の前の難しい問題とちゃんと向き合って、色んな人にアドバイス貰いながらも、自分で答え出したもんな。
オレも、姉さんと話してみるよ。」

大きな手で、頭をこれでもかというほど撫でられて、ぎゅっと強く抱きしめられる。

スエットの上からでも分かる膨らみの感触。
先程のキスでスイッチが入ったのだろうか。
大きさは、私がお風呂から出てこの部屋に来たときより増している。

「こうなったの、メイのせいだよ?
メイの服装も、顔も声も全部が可愛すぎるからさ。
責任取ってオレに抱かれてみる?
メイ。」

「うん。抱いて……」

むしろ、相手が蓮太郎だからこそ、だ。

ハジメテのつもりで、臨みたい。
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