ボーダー
朝食の席で、スクランブルエッグとトーストを食べ終えた頃。
蓮太郎から聞いた事実に、しばらく言葉を失った。

「さっき日本にいる幼なじみから電話あってさ。
……分かったって。
メイをこんな目に遭わせたもう1人のこと。
オレの……小さい頃の友達だよ。」

「そ……そんな……
そうだったの?」

蓮太郎の友達……だったんだ……。

でも……なんで?
理由までは、さすがに蓮太郎も分からないであろう。

「あ。
そいつも浅川 将輝って奴も、今は……日本にいるらしいんだ。」

「日本……」

「ってことは……すぐ帰っちゃうの?」

帰らないでほしいとは言えない。
今、この時点では彼女じゃないからだ。

「メイ。
寂しそうな顔するな?
すぐは帰らない。明日か明後日。
どんなに遅くとも、明後日の朝イチの便で日本に帰るかな。

メイもこんな広い家で1人はイヤだろ?
俺も忍びないし。
ご飯食べてしばらくしたらオレの祖父母の家にに行くぞ?
『メイをよろしく』って頼みに行くんだ。

ついでに、どこか行くか。
場所は俺にお任せでいい?
メイには、言っておきたいこともあるんだ。」

何、これ?
まだ寝ぼけてる?

蓮太郎からのお誘い、なんて。

「うん!行く!
もちろん!」

蓮太郎……ビックリするだろうな。
昨日……巴さんは、FBI本部に、祖父母の家に行くついでに寄った、と言っていた。

家に来たら巴さんと鉢合わせになる。
険悪な雰囲気にならないかが心配だ。

でも、蓮太郎と仲直りさせてあげなくちゃ。

食べ終えたお皿を洗おうとすると、その手を蓮太郎が掴んで止める。

「いいよ、俺やる。」

いや、だけど、なんだかんだ言って昨日の夜もお皿を洗ってくれていたし、2日連続はさすがに押しつけすぎな気もする。

「いいの。
祖父母のところに行くだけならいいよ?
メイも知ってる仲だし。
でも、その後、俺なんて言った?
デートだ、って言っただろ?

女の子だもん、支度に時間掛かるだろうから、俺がやる。
可愛くなっておいで?メイ。」

「蓮太郎、大好き!」

ぎゅっと彼を抱きしめてから、スキップせんばかりの勢いでリビングを出て、部屋に向かう。

膝にかかる丈の、空みたいな青色のシャツワンピースを着る。
フロントボタンで開閉可能だから、突然のお誘いも大丈夫。

黒のパンプスにするので、ネイビーのハンドバッグを選ぶ。

いつもは軽くしかしないが、丁寧にメイクをして、髪も少し内側に巻く。

よし。完璧。
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