ボーダー
オレは、プールで遊ぶのは早々にリタイアをして、レンと2人で呑気に、プールサイドのベンチにて休憩している。
「なぁ、レン。
オレ、ハナのあの笑顔、あのまま一生見られないのかと思ったよ。」
「皮肉だがオレもだ。
懐かしいよな。
あれ……小6のときだっけ?」
「……だな。」
「お父さんたち、何の話してるの?」
遊び疲れたのか、優美がプールから上がる。
まだ、3歳の優華を、プールから上がるまで、宝月家のチャイルドマインダーに預けていた。
その優華を迎えに行ってくる、とハナが言ったのが10分前だ。
その彼女が、オレたちのところに戻ってきた。
産後も変わらないスレンダーな体型なのは、白地に花柄のビキニが証明している。
プールサイドのベンチから1度降り、ハナにオレが着ていたパーカーを手渡した。
「ハナ、着とけ。
……戻ってくるの早すぎね?
ってか、優華はどうした?」
授乳の時期を過ぎたとはいえ、まだ大きさのある胸を、妻帯者ではあるが、幼なじみの男と、その息子の目に晒したくないだけだった。
パーカーを着ながら、彼女は言う。
「ありがと。
相変わらず、気が利く旦那さん。
チャイルドマインダーの方がね、どうせなら、ずっと見ててくれるんだって。
久しぶりなら、思いっきり楽しんできたほうが得よ、って。
レンとメイちゃんに感謝だよ。
ありがと。
あと、有海や由紀、ナナ、それぞれの夫婦にもね。
皆は今寝てる頃かな?
で、妻帯者のおふたりさんが、プールから早々とあがって、ボーッと思い出してたのは、私たちの馴れ初めでしょ?」
ここにいないメンバーは、午前中のうちにプールで遊んだ。
今は眠ったり、休憩をしたり、各々の時間を過ごしている。
「お父さんとお母さんが結婚したきっかけ?
気になるー!」
「あら、そうね。
私のママとパパの話も出てくるかしら。」
「出てくるだろ、多分。
親父は相変わらず、俺や姉さんと同じぐらい、おふくろのことも溺愛してるからな。
気になるな、親父とおふくろの恋愛模様。」
優美が言うと、それを後押しするように言うのは、レンの子どもたちだ。
中学2年生の彩《あや》ちゃんと、彩ちゃんの弟で、小学5年生の麗眞《れいま》くん。
「……優美。
気になるなら、話してもいいけど、
とっても長くなるわよ?
途中で寝ないかな?」
「寝ないー!
もし寝てたら、彩お姉ちゃんと、麗眞お兄ちゃんに起こしてもらう!」
「彩と麗眞も、大丈夫か?
寝てたら、優美ちゃんを起こせるかな?」
任せて、というように、姉弟が揃って胸を叩いた。
大人びてはいるが、無邪気な一面もまだ残っているオレの娘。
そこは、妻の幼少期に似たか。
……愛娘と妻にはどうしても甘い。
「敏腕検察官も、妻と娘には甘いのか。」
レンの子供も、お兄さんお姉さん扱いをされて気を良くしたのか、誇らしげだ。
その可愛さに根負けした。
そこから、オレとレン、ハナの3人は、過去を回想していった。
これは、ハナと再会してから、それぞれがそれぞれの道を歩むまでの、物語だ。
オレら3人は幼稚園の年長ぐらいの仲だ。
その頃から、オレはハナのことが好きだった。
小学校のとき、ハナに気を持ってほしくて、レンと二人でちょっかいを出したこともあった。
しかし、皮肉なことにそれが原因でハナは心を閉ざしてしまった。
その結果、オレたちがいない、違う学校へと転校してしまった。
それから、レンもカガク捜査官になるという夢を追いかけてアメリカへと旅立ってしまい、オレらはバラバラになってしまった。
けれどもレンがアメリカから一時帰国してきた日、偶然にしては出来すぎた"出来事"が、オレらを待っていた。
その時、オレはレンがアメリカから一時帰国すると聞いて、空港まで迎えに行った。
久しぶりに見たアイツは、最後に見たときより少し身長が伸びてカッコ良くなっていた。
オレらはその足で、オレらの母校、魔導学校に向かう。
オレらの恩師、鈴原先生は、目を丸くしてこっちを見ていたが、やがていつもと変わらない笑顔で微笑みかけた。
「あら、蓮太郎くん。
元気そうね。
大きくなって。
少し、身長も伸びたんじゃない?
でも、男の子の成長期はまだまだこれからよ。ちゃんと栄養摂るのよ?」
「ハイ。無事FBIカガク捜査官志望の人が通う学校の過程も終了しました!
後は試験です!
落ちたらまた1年間、留年ですけど。」
レンが嬉々として過程終了書を鈴原先生に見せながら答える。
「そう。こっちにはいつまでいるの?」
「一応5日間くらい滞在するつもりです。」
小気味よい会話が交わされていく。
「そう。
ちょうど良かったわ。
あなたがこっちにいる間に、"彼女"のことを話しておかないとだから……」
先生の目が、まっすぐオレ達を見つめて言った。
……オレたちの中で、彼女といえばアイツしかいない。
蒲田 華恵《かまたはなえ》。
オレたちが共通で、片想いしている女だ。
「なぁ、レン。
オレ、ハナのあの笑顔、あのまま一生見られないのかと思ったよ。」
「皮肉だがオレもだ。
懐かしいよな。
あれ……小6のときだっけ?」
「……だな。」
「お父さんたち、何の話してるの?」
遊び疲れたのか、優美がプールから上がる。
まだ、3歳の優華を、プールから上がるまで、宝月家のチャイルドマインダーに預けていた。
その優華を迎えに行ってくる、とハナが言ったのが10分前だ。
その彼女が、オレたちのところに戻ってきた。
産後も変わらないスレンダーな体型なのは、白地に花柄のビキニが証明している。
プールサイドのベンチから1度降り、ハナにオレが着ていたパーカーを手渡した。
「ハナ、着とけ。
……戻ってくるの早すぎね?
ってか、優華はどうした?」
授乳の時期を過ぎたとはいえ、まだ大きさのある胸を、妻帯者ではあるが、幼なじみの男と、その息子の目に晒したくないだけだった。
パーカーを着ながら、彼女は言う。
「ありがと。
相変わらず、気が利く旦那さん。
チャイルドマインダーの方がね、どうせなら、ずっと見ててくれるんだって。
久しぶりなら、思いっきり楽しんできたほうが得よ、って。
レンとメイちゃんに感謝だよ。
ありがと。
あと、有海や由紀、ナナ、それぞれの夫婦にもね。
皆は今寝てる頃かな?
で、妻帯者のおふたりさんが、プールから早々とあがって、ボーッと思い出してたのは、私たちの馴れ初めでしょ?」
ここにいないメンバーは、午前中のうちにプールで遊んだ。
今は眠ったり、休憩をしたり、各々の時間を過ごしている。
「お父さんとお母さんが結婚したきっかけ?
気になるー!」
「あら、そうね。
私のママとパパの話も出てくるかしら。」
「出てくるだろ、多分。
親父は相変わらず、俺や姉さんと同じぐらい、おふくろのことも溺愛してるからな。
気になるな、親父とおふくろの恋愛模様。」
優美が言うと、それを後押しするように言うのは、レンの子どもたちだ。
中学2年生の彩《あや》ちゃんと、彩ちゃんの弟で、小学5年生の麗眞《れいま》くん。
「……優美。
気になるなら、話してもいいけど、
とっても長くなるわよ?
途中で寝ないかな?」
「寝ないー!
もし寝てたら、彩お姉ちゃんと、麗眞お兄ちゃんに起こしてもらう!」
「彩と麗眞も、大丈夫か?
寝てたら、優美ちゃんを起こせるかな?」
任せて、というように、姉弟が揃って胸を叩いた。
大人びてはいるが、無邪気な一面もまだ残っているオレの娘。
そこは、妻の幼少期に似たか。
……愛娘と妻にはどうしても甘い。
「敏腕検察官も、妻と娘には甘いのか。」
レンの子供も、お兄さんお姉さん扱いをされて気を良くしたのか、誇らしげだ。
その可愛さに根負けした。
そこから、オレとレン、ハナの3人は、過去を回想していった。
これは、ハナと再会してから、それぞれがそれぞれの道を歩むまでの、物語だ。
オレら3人は幼稚園の年長ぐらいの仲だ。
その頃から、オレはハナのことが好きだった。
小学校のとき、ハナに気を持ってほしくて、レンと二人でちょっかいを出したこともあった。
しかし、皮肉なことにそれが原因でハナは心を閉ざしてしまった。
その結果、オレたちがいない、違う学校へと転校してしまった。
それから、レンもカガク捜査官になるという夢を追いかけてアメリカへと旅立ってしまい、オレらはバラバラになってしまった。
けれどもレンがアメリカから一時帰国してきた日、偶然にしては出来すぎた"出来事"が、オレらを待っていた。
その時、オレはレンがアメリカから一時帰国すると聞いて、空港まで迎えに行った。
久しぶりに見たアイツは、最後に見たときより少し身長が伸びてカッコ良くなっていた。
オレらはその足で、オレらの母校、魔導学校に向かう。
オレらの恩師、鈴原先生は、目を丸くしてこっちを見ていたが、やがていつもと変わらない笑顔で微笑みかけた。
「あら、蓮太郎くん。
元気そうね。
大きくなって。
少し、身長も伸びたんじゃない?
でも、男の子の成長期はまだまだこれからよ。ちゃんと栄養摂るのよ?」
「ハイ。無事FBIカガク捜査官志望の人が通う学校の過程も終了しました!
後は試験です!
落ちたらまた1年間、留年ですけど。」
レンが嬉々として過程終了書を鈴原先生に見せながら答える。
「そう。こっちにはいつまでいるの?」
「一応5日間くらい滞在するつもりです。」
小気味よい会話が交わされていく。
「そう。
ちょうど良かったわ。
あなたがこっちにいる間に、"彼女"のことを話しておかないとだから……」
先生の目が、まっすぐオレ達を見つめて言った。
……オレたちの中で、彼女といえばアイツしかいない。
蒲田 華恵《かまたはなえ》。
オレたちが共通で、片想いしている女だ。