ボーダー
着いた先は、商標登録がされているブルーの紙袋でお馴染みのジュエリーのお店。
巴さんの結婚相手に、指輪を早く決めるように急かされたので、下見に来たのだという。
若い世代の意見を聞きたいと、引っ張ってきたようなのだ。
私達を迎えてくれた女性店員に、巴さんは何やら達筆の英語で書かれた紙を見せて、意味ありげにウインクした。
すると、店員は何かを納得したようだ。
「こちらとか素敵ですよ!
中央のダイヤモンドの横にさらにダイヤがついています。
4本爪でセンターのダイヤが目立つような設計になっています。かといって、両サイドのダイヤもちゃんと輝いてくれます。
センターのダイヤに向けて細くなるデザインなので、指も細く見えますよ!」
なぜか私に向けて話しかけてきた。
選ぶのは、私の隣りにいる美人の女性なんですが……。
30万円超えのお値段にはビックリだが、それにしても素敵だ。
もし、今後着けることになるのならこんな感じのものがいい。
試させてもらったが、ちょうどサイズも合う。
巴さんは、斜め後ろに立っている茜さんに何やらVサインをする。
「巴姉さん、ゆっくり選びたいみたいだから、私たちは外のお店でコーヒーでも飲んでよ!
邪魔になっちゃう。」
「はい。」
私はブラックのアメリカン。
茜さんはカフェオレ。
それぞれ頼んだ飲み物がくると、自然に会話に花が咲いた。
「巴さん、幸せそうで羨ましいです。
私もいつかは、さっき嵌めてた感じの指輪貰いながら、とは思います。
景色の綺麗なところでだと理想です。
台詞はシンプルに結婚してくださいでOK。
無駄な飾り言葉は要らないです。」
「やっぱりそんな感じよね。
女子ならさ、デーティング期間の曖昧な感じより、ちゃんとケジメつけて婚約くらいしてほしいよね!」
にっこり笑って言う茜さん。
「私、思うんです。
蓮太郎の住む日本で結婚式がしたい、って。
彼の祖父母がこっちに住んでいることを考えると負担は大きいですけど。
でも、好きな人が育った国で、ちゃんと一生に一度の思い出を作りたいな、って。
彼の育った国の挙式スタイル。
私の育った国の挙式スタイル。
違いはもちろんあるけれど、お互いのいいとこ取りができたら、っていうのも思ってます。」
「メイちゃん……
しっかりしてるわね。
さすが、グループを支える代表の妻になる人なだけある。
キラキラした、いい目をしてるわ。」
茜さんに率直に言われて、照れていると、茜さんが軽く手を上げた。
巴姉さんがお店から出てきたところで、その横には蓮太郎もいる。
蓮太郎の斜め後ろにいる黒スーツの人は……誰だろう。
巴さんが運転する車の後部座席に引っ張られるように乗せられた。
隣には蓮太郎もいる。
この格好、恥ずかしいな……。
今、目を合わせると変な気分になりそうで、なかなか目を合わせられず、すぐに逸らしてしまう。
15分くらい走っただろうか。
車を降りるように言われて、先に改札を出て、蓮太郎の着替えを待つ。
出てきた彼は、黒に近いネイビーのスーツ。
スリーピースだし、青い蝶ネクタイ。
青なところは、私のドレスと合わせたのだろうか。
蓮太郎の整った顔立ちに似合いすぎている。
直視できない。
顔が真っ赤になるのが分かった。
地下鉄に乗っている間も、エンパイアステートビルの86階に着くまでの間も、無言だった。
「見てみれば?望遠鏡で。
いいもの見れるかもよ?」
蓮太郎に言われなくても、元から望遠鏡では覗くつもりだった。
素直に10セントコインを入れて、望遠鏡を覗く。
遠くのヘリが見えて、何やらヘリからは垂れ幕が下がっている。
『Mei Will you marry me?』
と書かれていた。
「は?ちょっと、こんなのいつ……」
「メイ。返事は?」
耳元で囁かれると、くすぐったい。
サプライズはこれだけじゃなくて。
蓮太郎に、先程の店で選んだ指輪を差し出される。
え?
これ、巴さんが気に入ってた指輪じゃ……。
「ちょっと、いつから持ってたの?」
おっと、早く返事をしなくては。
こういうのは待たせてはダメなのだ。
「Of course my answer is yes!
It's not a dream, is it?
It's been my dream to be your wife someday.」
そう言った刹那、蓮太郎に抱き締められて、そのままキスをされる。
「お互いが18になったらさ、とっとと籍入れようか。
早く一緒の家に住みたいし、何ならさっそく家族増やしたい。」
キスの合間にそんな甘い台詞を言わないでほしい。
周囲からの絶え間ない拍手喝采も、どこか遠くで聞こえる。
それくらい、しばらく蓮太郎との長く深いキスに酔いしれていた。
巴さんの結婚相手に、指輪を早く決めるように急かされたので、下見に来たのだという。
若い世代の意見を聞きたいと、引っ張ってきたようなのだ。
私達を迎えてくれた女性店員に、巴さんは何やら達筆の英語で書かれた紙を見せて、意味ありげにウインクした。
すると、店員は何かを納得したようだ。
「こちらとか素敵ですよ!
中央のダイヤモンドの横にさらにダイヤがついています。
4本爪でセンターのダイヤが目立つような設計になっています。かといって、両サイドのダイヤもちゃんと輝いてくれます。
センターのダイヤに向けて細くなるデザインなので、指も細く見えますよ!」
なぜか私に向けて話しかけてきた。
選ぶのは、私の隣りにいる美人の女性なんですが……。
30万円超えのお値段にはビックリだが、それにしても素敵だ。
もし、今後着けることになるのならこんな感じのものがいい。
試させてもらったが、ちょうどサイズも合う。
巴さんは、斜め後ろに立っている茜さんに何やらVサインをする。
「巴姉さん、ゆっくり選びたいみたいだから、私たちは外のお店でコーヒーでも飲んでよ!
邪魔になっちゃう。」
「はい。」
私はブラックのアメリカン。
茜さんはカフェオレ。
それぞれ頼んだ飲み物がくると、自然に会話に花が咲いた。
「巴さん、幸せそうで羨ましいです。
私もいつかは、さっき嵌めてた感じの指輪貰いながら、とは思います。
景色の綺麗なところでだと理想です。
台詞はシンプルに結婚してくださいでOK。
無駄な飾り言葉は要らないです。」
「やっぱりそんな感じよね。
女子ならさ、デーティング期間の曖昧な感じより、ちゃんとケジメつけて婚約くらいしてほしいよね!」
にっこり笑って言う茜さん。
「私、思うんです。
蓮太郎の住む日本で結婚式がしたい、って。
彼の祖父母がこっちに住んでいることを考えると負担は大きいですけど。
でも、好きな人が育った国で、ちゃんと一生に一度の思い出を作りたいな、って。
彼の育った国の挙式スタイル。
私の育った国の挙式スタイル。
違いはもちろんあるけれど、お互いのいいとこ取りができたら、っていうのも思ってます。」
「メイちゃん……
しっかりしてるわね。
さすが、グループを支える代表の妻になる人なだけある。
キラキラした、いい目をしてるわ。」
茜さんに率直に言われて、照れていると、茜さんが軽く手を上げた。
巴姉さんがお店から出てきたところで、その横には蓮太郎もいる。
蓮太郎の斜め後ろにいる黒スーツの人は……誰だろう。
巴さんが運転する車の後部座席に引っ張られるように乗せられた。
隣には蓮太郎もいる。
この格好、恥ずかしいな……。
今、目を合わせると変な気分になりそうで、なかなか目を合わせられず、すぐに逸らしてしまう。
15分くらい走っただろうか。
車を降りるように言われて、先に改札を出て、蓮太郎の着替えを待つ。
出てきた彼は、黒に近いネイビーのスーツ。
スリーピースだし、青い蝶ネクタイ。
青なところは、私のドレスと合わせたのだろうか。
蓮太郎の整った顔立ちに似合いすぎている。
直視できない。
顔が真っ赤になるのが分かった。
地下鉄に乗っている間も、エンパイアステートビルの86階に着くまでの間も、無言だった。
「見てみれば?望遠鏡で。
いいもの見れるかもよ?」
蓮太郎に言われなくても、元から望遠鏡では覗くつもりだった。
素直に10セントコインを入れて、望遠鏡を覗く。
遠くのヘリが見えて、何やらヘリからは垂れ幕が下がっている。
『Mei Will you marry me?』
と書かれていた。
「は?ちょっと、こんなのいつ……」
「メイ。返事は?」
耳元で囁かれると、くすぐったい。
サプライズはこれだけじゃなくて。
蓮太郎に、先程の店で選んだ指輪を差し出される。
え?
これ、巴さんが気に入ってた指輪じゃ……。
「ちょっと、いつから持ってたの?」
おっと、早く返事をしなくては。
こういうのは待たせてはダメなのだ。
「Of course my answer is yes!
It's not a dream, is it?
It's been my dream to be your wife someday.」
そう言った刹那、蓮太郎に抱き締められて、そのままキスをされる。
「お互いが18になったらさ、とっとと籍入れようか。
早く一緒の家に住みたいし、何ならさっそく家族増やしたい。」
キスの合間にそんな甘い台詞を言わないでほしい。
周囲からの絶え間ない拍手喝采も、どこか遠くで聞こえる。
それくらい、しばらく蓮太郎との長く深いキスに酔いしれていた。