ボーダー
式のスタイルの説明があったところで、ナナちゃんが申し訳無さそうに別荘を出て行った。
今日はたまたま、雑誌の撮影でこちらに来ており、もう撮影が再開する時間なのだという。
迷うと困る、と、レンの祖父母が送るようだ。
そうか、ナナちゃんはモデルだっけ。
オレはそういうのは疎いのだが、そういえば、ハナがこの間、嬉々として言っていた気もするな。
ナナちゃんは大人気で、雑誌のモデルとしてデビューした次の号で、いきなりその雑誌の表紙を飾ることになったのだ、と。
「ナナちゃん、超人気なんだぜ。
ナナちゃんと絡みたい、っていう俳優やらモデルも多いしな。」
レンが口を挟む。
ああ、そういえば、宝月グループ、芸能事務所までも傘下にしてるんだったな。
自分もちゃっかり所属俳優になっている辺り、抜かりない。
由紀ちゃんじゃないが、何足わらじ履くんだ?
ハナを含めた女性陣は、すでにワイワイとガールズトークモードだ。
そんな中、すみません、遅くなりました。という声と共に、見知った顔の男女が別荘に入ってきた。
真と麻紀ちゃん、一成に友佳ちゃんのカップル2組だった。
その後に、日本の空港で見た男性2人もいた。
えっと、確かレンが向こうでお世話になってた人だったな。
「うわ、お久しぶりです、村西さん!」
奈斗と将輝が、何年か後の円形脱毛症が心配な男性に近寄る。
「おお、奈斗に将輝か。
元気そうだな。」
2人を見て、心底嬉しそうにしている彼。
オレに向き直り、手を差し出してきた。
「1度、空港で君とは会ってるよな?
後ほど、改めて挨拶はする。
村西 翔平《むらにし しょうへい》だ。
よろしく。
蓮太郎の良き相談役で、彼にとっちゃ大先輩、ってところかな?
副業としてはバーテンダーをしている。オレの隣りにいる遠藤もしかりだ。
君の話は、よく蓮太郎から聞いていたよ。
よろしく。」
差し出された手を、しっかりと握り返す。
「蓮太郎……レンの幼なじみ、御劔 優作です。
レンが、いつもお世話になっています。
これからも、よろしくお願いします。」
「蓮太郎から聞いていた通り、礼儀のしっかりした子だ。
よろしく頼む。
困ったら、蓮太郎づてでもいいから何でも相談してくれ。」
パン、と手が叩かれる音がした。
それが合図になったようだ。
村西さんや、もう1人の男の人、真と麻紀ちゃんに、一成と友佳ちゃん。
さっき来た面々が、先程亜子さんが立っていた位置にズラリと整列する。
オレの高校の同級生たちが、かつての中学の仲間に向けて自己紹介をしていた。
何かいいな、この絵面。
「遠藤 周作《えんどう しゅうさく》だ。
精神科医かつ、カウンセラーだ。
とはいうものの、カウンセラーのほうが主だ。
先に紹介があった村西と共に、副業でバーテンダーをしている。
皆、慣れないことで不安もあるだろう。
皆のメンタルのケアも、していければと思っているから、何かあれば気兼ねなく相談してほしい。
よろしくお願いします。」
あらかた、紹介が終わったところで、いつの間にかダイニングにあったモニターに、愛実ちゃんが映っていた。
『本当はそっちに行ければよかったんだけど、
あいにく私が体調を崩しちゃって。
行けなくてごめんなさい。
篠原 愛実です!
さっき来た麻紀と真くん、友佳と一成くんとは同級生!
私たちも、日本で皆の、特にハナと御劔くんのサポートを担います!
よろしくお願いします!』
『同じく同級生の、新澤 和貴もよろしく!
俺も、皆さんと一緒にサポートしていきたいです!』
何でモニター?
家具が白で統一されたおしゃれな部屋は、愛実ちゃんの自室だろうか。
可愛らしいぬいぐるみがベッドサイドに整列していた。
ところで、何で体育祭で友達から始める、なんて言っていた、愛実ちゃんと和貴が同じ部屋にいるんだ。
何か解せない。
それは、後ほど本人から聞くとしよう。
そして、いろいろな話に花を咲かせている中で真と麻紀ちゃんの姿が見えない。
……もしかして。
響くのは、小気味いい包丁の音や、フライパンの音。
もしかしなくても。
「すみません、皆さん、そろそろお腹空いた頃かと思って。
ハナちゃんも、優くんも。
長旅で疲れたでしょ?
それから、蓮太郎がお世話になった村西さんや遠藤さんもどうぞ!
人との交流を深めるには、美味しい料理がいちばんいいんですから。」
真が他人様のキッチンを勝手に借りて、手際よく料理を作っていた。
麻紀ちゃんはサポートだ。
ちょうどその頃、蓮太郎の祖父母が、リビングから見えるオープンスペースを横切った。
「あら、手際いいわね。
料理教室どころか、料亭とかレストラン、開けるんじゃない?
料理教室を継いで終わりなんて、もったいないわよ。」
「まったくだ。」
奈美さんと眞人さんが、麻紀ちゃんと真の料理の腕を褒める。
そして、女性陣がわらわらとリビングに入る。
なにか手伝うというのだ。
「待って。
その気持ちは分かるけど、キッチンの場所も限られてる。
役割分担したほうがいいよ。
配膳係と、調味料用意とか器出したりとかのサポートの3人くらいで良いんじゃないかな。」
「私もそう思う。
まだここに来たばかりの村西さんや遠藤さんと話することで打ち解ける橋渡しをするのも、立派な仕事だよ。
花嫁修業も大事だけどね?
ってことで、彼らと面識がある私と、メイちゃんは、キッチンじゃなくダイニングに。
友佳ちゃんもダイニングね。
さっき来たばっかりだし、麻紀ちゃんの分まで盛り上げててあげて。
次期バスケ部部長さんならできるよね?
ハナと、有海ちゃんが配膳係と、調味料やお皿用意のサポート役。
奈美さん、彼女たちに食器の場所を教えてあげていただけますか?」
ハナが言うと、その意図を組んですぐさま役割を的確に決めた由紀ちゃん。
連携プレーはすでにできている。
すごいな。
コイツらがブライズメイドなんだ。
きっと、お前の妻は挙式当日、世界一の幸せ者になれるな、レン。
今日はたまたま、雑誌の撮影でこちらに来ており、もう撮影が再開する時間なのだという。
迷うと困る、と、レンの祖父母が送るようだ。
そうか、ナナちゃんはモデルだっけ。
オレはそういうのは疎いのだが、そういえば、ハナがこの間、嬉々として言っていた気もするな。
ナナちゃんは大人気で、雑誌のモデルとしてデビューした次の号で、いきなりその雑誌の表紙を飾ることになったのだ、と。
「ナナちゃん、超人気なんだぜ。
ナナちゃんと絡みたい、っていう俳優やらモデルも多いしな。」
レンが口を挟む。
ああ、そういえば、宝月グループ、芸能事務所までも傘下にしてるんだったな。
自分もちゃっかり所属俳優になっている辺り、抜かりない。
由紀ちゃんじゃないが、何足わらじ履くんだ?
ハナを含めた女性陣は、すでにワイワイとガールズトークモードだ。
そんな中、すみません、遅くなりました。という声と共に、見知った顔の男女が別荘に入ってきた。
真と麻紀ちゃん、一成に友佳ちゃんのカップル2組だった。
その後に、日本の空港で見た男性2人もいた。
えっと、確かレンが向こうでお世話になってた人だったな。
「うわ、お久しぶりです、村西さん!」
奈斗と将輝が、何年か後の円形脱毛症が心配な男性に近寄る。
「おお、奈斗に将輝か。
元気そうだな。」
2人を見て、心底嬉しそうにしている彼。
オレに向き直り、手を差し出してきた。
「1度、空港で君とは会ってるよな?
後ほど、改めて挨拶はする。
村西 翔平《むらにし しょうへい》だ。
よろしく。
蓮太郎の良き相談役で、彼にとっちゃ大先輩、ってところかな?
副業としてはバーテンダーをしている。オレの隣りにいる遠藤もしかりだ。
君の話は、よく蓮太郎から聞いていたよ。
よろしく。」
差し出された手を、しっかりと握り返す。
「蓮太郎……レンの幼なじみ、御劔 優作です。
レンが、いつもお世話になっています。
これからも、よろしくお願いします。」
「蓮太郎から聞いていた通り、礼儀のしっかりした子だ。
よろしく頼む。
困ったら、蓮太郎づてでもいいから何でも相談してくれ。」
パン、と手が叩かれる音がした。
それが合図になったようだ。
村西さんや、もう1人の男の人、真と麻紀ちゃんに、一成と友佳ちゃん。
さっき来た面々が、先程亜子さんが立っていた位置にズラリと整列する。
オレの高校の同級生たちが、かつての中学の仲間に向けて自己紹介をしていた。
何かいいな、この絵面。
「遠藤 周作《えんどう しゅうさく》だ。
精神科医かつ、カウンセラーだ。
とはいうものの、カウンセラーのほうが主だ。
先に紹介があった村西と共に、副業でバーテンダーをしている。
皆、慣れないことで不安もあるだろう。
皆のメンタルのケアも、していければと思っているから、何かあれば気兼ねなく相談してほしい。
よろしくお願いします。」
あらかた、紹介が終わったところで、いつの間にかダイニングにあったモニターに、愛実ちゃんが映っていた。
『本当はそっちに行ければよかったんだけど、
あいにく私が体調を崩しちゃって。
行けなくてごめんなさい。
篠原 愛実です!
さっき来た麻紀と真くん、友佳と一成くんとは同級生!
私たちも、日本で皆の、特にハナと御劔くんのサポートを担います!
よろしくお願いします!』
『同じく同級生の、新澤 和貴もよろしく!
俺も、皆さんと一緒にサポートしていきたいです!』
何でモニター?
家具が白で統一されたおしゃれな部屋は、愛実ちゃんの自室だろうか。
可愛らしいぬいぐるみがベッドサイドに整列していた。
ところで、何で体育祭で友達から始める、なんて言っていた、愛実ちゃんと和貴が同じ部屋にいるんだ。
何か解せない。
それは、後ほど本人から聞くとしよう。
そして、いろいろな話に花を咲かせている中で真と麻紀ちゃんの姿が見えない。
……もしかして。
響くのは、小気味いい包丁の音や、フライパンの音。
もしかしなくても。
「すみません、皆さん、そろそろお腹空いた頃かと思って。
ハナちゃんも、優くんも。
長旅で疲れたでしょ?
それから、蓮太郎がお世話になった村西さんや遠藤さんもどうぞ!
人との交流を深めるには、美味しい料理がいちばんいいんですから。」
真が他人様のキッチンを勝手に借りて、手際よく料理を作っていた。
麻紀ちゃんはサポートだ。
ちょうどその頃、蓮太郎の祖父母が、リビングから見えるオープンスペースを横切った。
「あら、手際いいわね。
料理教室どころか、料亭とかレストラン、開けるんじゃない?
料理教室を継いで終わりなんて、もったいないわよ。」
「まったくだ。」
奈美さんと眞人さんが、麻紀ちゃんと真の料理の腕を褒める。
そして、女性陣がわらわらとリビングに入る。
なにか手伝うというのだ。
「待って。
その気持ちは分かるけど、キッチンの場所も限られてる。
役割分担したほうがいいよ。
配膳係と、調味料用意とか器出したりとかのサポートの3人くらいで良いんじゃないかな。」
「私もそう思う。
まだここに来たばかりの村西さんや遠藤さんと話することで打ち解ける橋渡しをするのも、立派な仕事だよ。
花嫁修業も大事だけどね?
ってことで、彼らと面識がある私と、メイちゃんは、キッチンじゃなくダイニングに。
友佳ちゃんもダイニングね。
さっき来たばっかりだし、麻紀ちゃんの分まで盛り上げててあげて。
次期バスケ部部長さんならできるよね?
ハナと、有海ちゃんが配膳係と、調味料やお皿用意のサポート役。
奈美さん、彼女たちに食器の場所を教えてあげていただけますか?」
ハナが言うと、その意図を組んですぐさま役割を的確に決めた由紀ちゃん。
連携プレーはすでにできている。
すごいな。
コイツらがブライズメイドなんだ。
きっと、お前の妻は挙式当日、世界一の幸せ者になれるな、レン。