ボーダー
料理は次から次へと運ばれてくるので、配膳係のハナが料理を食べられない事態になりかねない。
それは避けなければ。
苦労を買って出た人が損をすることなど、あってはならない。
それにしても、豪華なホテルのレストランのフルコース並の皿の量だ。
真のやつ、レパートリー豊富すぎやしないか?
スペースが足りず、ダイニングから少し離れたところにある、ケータリングサービスで届いた食事を囲むときに使うスペースにも料理は置かれている。
真に聞くと、あと3皿あるという。
オレは、立食パーティーと化している場を少しの間、中断させるべく、言葉を紡いだ。
「大皿料理は、外の観葉植物がたくさんのスペースに置いてくれ。
ちょっとしたテーブルもある。
置けても2つほどだが、料理が冷めて味が落ちるよりは断然マシだ。
そこで3皿分のスペースが確保できるはずだ。
空のお皿は省スペース化のため、空いたものから、下げていってほしい。
このままだと、ハナと有海ちゃん、真と麻紀ちゃんが料理食べられなくなるぞ。
作った本人が料理を食べられない、こんなに悲しいことはないだろう?」
「それは不公平ね。
こういう場での料理は、多い人数で囲んだほうがより美味しいのよ。
私も、最近知ったのだけれど。」
由紀ちゃんと矢榛が、量の減った料理を別の皿に移し、空いたお皿を作る。
空いたお皿を重ねて、将輝に渡したのは奈斗。
彼から渡された大皿料理をオープンスペースに持っていくのは将輝だ。
配膳を、サポートすることがなくなった麻紀ちゃんと有海ちゃんが手伝い、無事に料理は全て運ばれた。
料理を運ぶときに、道を開けて配膳を優先するよう、声を掛けたのは一成と友佳ちゃんだ。
皆、指示をされなくても自分が出来ることを探して動いている。
「南 亜子さん。
村西さん、遠藤さんと、さりげなく観察していた武田さん。
いかがでしたか?
オレたちの連携。
それぞれ、ブライズメイドとアッシャーとして来年、挙式をする新郎新婦のサポートをするのに、不安要素がありますか?」
オレが尋ねると、南さんは小さく拍手をした。
村西さんや遠藤さんは頭の上で丸を作り、武田さんは何度も大きく頷いている。
「……文句なしの合格点よ。
初めて会った人もいる中で、これだけの連携が取れるなんて。
すごいわ、あなたたち。
本当に高校生か、疑いたくなるレベルよ。
真くん、麻紀ちゃんが料理を作る、というのは予め聞いていたから、それなら、即席で皆の連携プレーを見てみたかったの。
こういう場での振る舞いは、そのままリハーサルや本番での振る舞いになる。
何より、何かイレギュラーなことが起きたときの対応力も見られるからね。
ブライズメイドのリーダーに相応しい振る舞いをしたのは、蒲田さんね。
あの場で女性全員が行っても邪魔になる、という判断も早かったわ。
リーダーに呼応して、適材適所の采配を瞬時に決めた珠美さんもさすがね。
他にも、とっさに空いたお皿を作るために料理を移したのもさすが。
浅川くんと帳くんも、空いたお皿を運んで、渡して別の場所に持っていく連携が、自然になされていた上に、無意識に味付けの薄い料理と濃い料理が一つのテーブルに偏らないように乗せていた。
よく周りの状況を見ているのを感じたわ。」
「それに、空いたお皿を作るために料理を移すのを自然に手伝った矢榛くん。
こういう細々した作業は複数でやったほうがいいものね。
適宜、空いたお皿がないか目視してたのも、ポイント高いわ。
黒沢くんと矢浪さんは、声が通るから、道をあけさせる役目には適任だったわね。
それくらいしかやることがなかったんだとしても、きちんと自分の役目を果たせた。
誇っていいわよ。
何より、アッシャーのリーダー、ベストマンの御劔くんね。
恋人の蒲田さんに料理を食べさせてあげられないなんて、みたいな気持ちもあったんでしょうけど。
そうだとしても、どう指示をすれば、食べる手を止めて動いてくれるかが考えられた指示の仕方だったわね。」
「全て、南様に言われてしまいましたね。
普段のカップルの関係性もそれとなく垣間見えたからな。
その上で気になる点は個別に一言二言、俺と遠藤から、交流を深めるがてら言う形式にしていくよ。」
「お疲れ、ハナ。
配膳係も疲れたろ?
料理食べな。
長いフライトでお腹も空いてるだろ。」
「ミツもだよ?
あれが私たちの連携プレーを試してた、なんてよく気づいたね?
お疲れ。
気が向いたらご褒美あげるね?」
お疲れというように軽く恋人の頭を撫でてやると、立食パーティーの輪に彼女と手を繋いで参加した。
こっちにはどれくらいいるんだ、と将輝から聞かれる。
特に決めてはいない、と答えると、3日はいろ、観光とかもしたいだろうし、彼女ともイチャつきたいだろ?という。
ハナもそれには了承してくれた。
女子同士は、メイちゃんの家に、オレたちはこのままここで語らうようである。
移動を開始する前に、女性陣に手を振る奈斗。
そうか、コイツはこっちでは学生なんだっけ。
今日もみっちり、アクターズスクールでしごかれるらしい。
寂しそうにしている有海ちゃんに、軽くキスをしてやった奈斗は、その場にいる全員から冷やかされていた。
それは避けなければ。
苦労を買って出た人が損をすることなど、あってはならない。
それにしても、豪華なホテルのレストランのフルコース並の皿の量だ。
真のやつ、レパートリー豊富すぎやしないか?
スペースが足りず、ダイニングから少し離れたところにある、ケータリングサービスで届いた食事を囲むときに使うスペースにも料理は置かれている。
真に聞くと、あと3皿あるという。
オレは、立食パーティーと化している場を少しの間、中断させるべく、言葉を紡いだ。
「大皿料理は、外の観葉植物がたくさんのスペースに置いてくれ。
ちょっとしたテーブルもある。
置けても2つほどだが、料理が冷めて味が落ちるよりは断然マシだ。
そこで3皿分のスペースが確保できるはずだ。
空のお皿は省スペース化のため、空いたものから、下げていってほしい。
このままだと、ハナと有海ちゃん、真と麻紀ちゃんが料理食べられなくなるぞ。
作った本人が料理を食べられない、こんなに悲しいことはないだろう?」
「それは不公平ね。
こういう場での料理は、多い人数で囲んだほうがより美味しいのよ。
私も、最近知ったのだけれど。」
由紀ちゃんと矢榛が、量の減った料理を別の皿に移し、空いたお皿を作る。
空いたお皿を重ねて、将輝に渡したのは奈斗。
彼から渡された大皿料理をオープンスペースに持っていくのは将輝だ。
配膳を、サポートすることがなくなった麻紀ちゃんと有海ちゃんが手伝い、無事に料理は全て運ばれた。
料理を運ぶときに、道を開けて配膳を優先するよう、声を掛けたのは一成と友佳ちゃんだ。
皆、指示をされなくても自分が出来ることを探して動いている。
「南 亜子さん。
村西さん、遠藤さんと、さりげなく観察していた武田さん。
いかがでしたか?
オレたちの連携。
それぞれ、ブライズメイドとアッシャーとして来年、挙式をする新郎新婦のサポートをするのに、不安要素がありますか?」
オレが尋ねると、南さんは小さく拍手をした。
村西さんや遠藤さんは頭の上で丸を作り、武田さんは何度も大きく頷いている。
「……文句なしの合格点よ。
初めて会った人もいる中で、これだけの連携が取れるなんて。
すごいわ、あなたたち。
本当に高校生か、疑いたくなるレベルよ。
真くん、麻紀ちゃんが料理を作る、というのは予め聞いていたから、それなら、即席で皆の連携プレーを見てみたかったの。
こういう場での振る舞いは、そのままリハーサルや本番での振る舞いになる。
何より、何かイレギュラーなことが起きたときの対応力も見られるからね。
ブライズメイドのリーダーに相応しい振る舞いをしたのは、蒲田さんね。
あの場で女性全員が行っても邪魔になる、という判断も早かったわ。
リーダーに呼応して、適材適所の采配を瞬時に決めた珠美さんもさすがね。
他にも、とっさに空いたお皿を作るために料理を移したのもさすが。
浅川くんと帳くんも、空いたお皿を運んで、渡して別の場所に持っていく連携が、自然になされていた上に、無意識に味付けの薄い料理と濃い料理が一つのテーブルに偏らないように乗せていた。
よく周りの状況を見ているのを感じたわ。」
「それに、空いたお皿を作るために料理を移すのを自然に手伝った矢榛くん。
こういう細々した作業は複数でやったほうがいいものね。
適宜、空いたお皿がないか目視してたのも、ポイント高いわ。
黒沢くんと矢浪さんは、声が通るから、道をあけさせる役目には適任だったわね。
それくらいしかやることがなかったんだとしても、きちんと自分の役目を果たせた。
誇っていいわよ。
何より、アッシャーのリーダー、ベストマンの御劔くんね。
恋人の蒲田さんに料理を食べさせてあげられないなんて、みたいな気持ちもあったんでしょうけど。
そうだとしても、どう指示をすれば、食べる手を止めて動いてくれるかが考えられた指示の仕方だったわね。」
「全て、南様に言われてしまいましたね。
普段のカップルの関係性もそれとなく垣間見えたからな。
その上で気になる点は個別に一言二言、俺と遠藤から、交流を深めるがてら言う形式にしていくよ。」
「お疲れ、ハナ。
配膳係も疲れたろ?
料理食べな。
長いフライトでお腹も空いてるだろ。」
「ミツもだよ?
あれが私たちの連携プレーを試してた、なんてよく気づいたね?
お疲れ。
気が向いたらご褒美あげるね?」
お疲れというように軽く恋人の頭を撫でてやると、立食パーティーの輪に彼女と手を繋いで参加した。
こっちにはどれくらいいるんだ、と将輝から聞かれる。
特に決めてはいない、と答えると、3日はいろ、観光とかもしたいだろうし、彼女ともイチャつきたいだろ?という。
ハナもそれには了承してくれた。
女子同士は、メイちゃんの家に、オレたちはこのままここで語らうようである。
移動を開始する前に、女性陣に手を振る奈斗。
そうか、コイツはこっちでは学生なんだっけ。
今日もみっちり、アクターズスクールでしごかれるらしい。
寂しそうにしている有海ちゃんに、軽くキスをしてやった奈斗は、その場にいる全員から冷やかされていた。