ボーダー
オレたちは、そのままここに残っていたが、レンが席を外したときに、村西さんと遠藤さんから、向こうでは定番の行事を教えられる。

挙式前に、独身最後の夜を楽しむため、野郎連中のみで羽目を外す、バチェラーパーティー、というものがあるようだ。

それの企画は、レン、というよりオレたちがやるらしい。
レンはもてなされる側、というわけだ。

その企画も、アッシャーの役割であるようなのだ。

今から少しずつ内容を考えておいて、逐一集まって話し合うのがオレたちの総意となった。

武田さんも、こっそり意見や参考になりそうなアドバイスはくれるという。
ありがたい。

武田さんは、レンに使える執事だ。
主をもてなすのはしょっちゅうだろうから、レンの趣味趣向も分かるだろう。

「よく言ったお前ら!
いい団結ぶりだ。大事にしろよ?
その絆は一生モンだぞ。
いいものを見せてもらった。
ご褒美の、もちろんノンアルコールのカクテルだ、成人になった気分で飲め!」

村西さんと遠藤さんが、オレたちにノンアルコールカクテルを振る舞ってくれた。

手付きは華麗で、さすがバーテンダーだ。

「あと3年くらい経ったら、ちゃんとしたカクテル振る舞ってやるんだけどな。
お前らが酒許される年齢になったら、オレと遠藤がバーテンダーやってるバーに案内してやるからな。」

席を外していたレンが戻ってきて、村西さんに言った。

「あ、村西さん、せっかく野郎共しかいないんですから、暴露しちゃいましょうよ。
薬指に嵌ってるの、指輪でしょ?

例の彼女さんです?
長らく疎遠だった、っていう。
しかも、同じバーのバーテンダーの女性なんですよね?お相手。」

観念したように、村西さんがオレたちに話してくれたのは、彼が今のオレたちと同じ年の頃の話。
片想いしていた女性が遊び人と噂されている男の彼女だった。
その男は村西さんから見ると憧れの先輩だったのだという。

どう頑張っても、彼女が自分に振り向いてくれることはない、と思うとイライラしたのだという。
ある日、嫌がる彼女を無理やり屋上に連れ出して、鎖骨にくっきりと所有印を残した。

これが原因で、片想いしている彼女と先輩は別れることとなった。

これで晴れて、彼女は自分のものになる、と思ったが、彼女からは嫌われてしまった。
彼女が親の仕事の都合で引っ越すことになり、転校したため、それっきりだったという。

しかし、最近偶然ここアメリカで再会し、交際をしているようだ。

「なぜバレた?
蓮太郎。」

「オレの婚約者にプレゼントしてくれたアクセサリーケースです。
お言葉ですが、村西さんが選んだにしてはセンスが良すぎた。
その彼女さんにアドバイスを貰ったのかな、って思ったんです。

その時から秒読みで、最近やっと付き合い出した、ってところなんじゃないか、って思っただけなんですけど、当たりです?」

「そういうのには敏いのな、蓮太郎は。
クイズ番組だとピンポンピンポン、って音がなるくらいの大正解だ。」

村西さんの思わぬ告白もあり、場は盛り上がった。

そんな感じで2時間くらい過ごした。
その後、女子陣も積もる話は終わったのか、オレたちと合流して、ニューヨーク内を観光して回った。

大所帯だと動きづらいため、何組かに分かれて観光もよし、この家やメイちゃんの家でゆっくり過ごすもよし、夜の19時になったら指定されたホテルのロビーに集合、ということにした。

オレとハナ、由紀ちゃんと有海ちゃんは、観光に繰り出す。
遠くに出掛けると迷ってしまいそうというのは、友佳ちゃんと一成。
そして麻紀ちゃんと真ペアだ。
彼らは、村西さんと遠藤さん、それに将輝をガイドにつけて近場を観光することにしたのだという。

今更観光もね、でも何かあったら困る、ということで、メイちゃんとレンは、レンの祖父母の家で連絡係に徹することになった。

矢榛は、意気揚々と美術館に出かけていった。
そういえば、アイツは洋服のデザイナー志望だったな。

ブロードウェイやら、タイムズスクエアやらを観光して回った。
皆で回ると、2人だけで回るより楽しかった。
人が多いからはぐれるな、と言って手を繋ぐくらいしか、イチャイチャが出来なかったのは残念だったが。

夜19時になり、皆が指定されたホテルのロビーに集合した。
ホテルのエントランスの扉が、黄金に輝く回転扉になっていて、入るのに躊躇した。
ロビーには、一時オレたちの輪から外れた奈斗やナナちゃんもいた。

実はこのホテルは、宝月グループと業務資本提携をした柏木グループが管理するホテルなのだという。

それぞれ、由紀ちゃんは語学学校、奈斗はアフタースクール、ナナちゃんは休みを貰って観光をする、将輝はカウンセリング、有海ちゃんとオレの高校の同級生たちは日本へ帰国、とそれぞれバラバラになる。
皆でこの地でこうして集まるのは今しかできない。

夕食まではみんなで過ごし、その後から各々のカップルで過ごすこととなった。
皆、スイートルームを割り当てられている。

各々カップル同士、極上な時間を過ごすのだろう。
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