ボーダー
キスを再開させながら、心なしか大きさが増した気がしなくもない、膨らみに触れる。

触れる度に、甘い声を聞かせてくれる。

感度良すぎ。

「いつになく感度いいじゃん。
オレと一緒に身体温めたから?

たまにはそうしてみよっか。

何年先か分からないけど、いつか結婚したら。
その時、仕事終わりに疲れてなかったら、一緒に身体温めたいな。」

「んも……
たまに、ね?」

「ハナもさ、オレが恋しかったの?
ここ、すごいいい音させてるけど。」

彼女が一番感じる場所を、的確に責める。
しかし、1番は指や言葉責めではなく、オレ自身で気持ちよくさせたいのだ。

さすがに、ダイレクトに言うのは恥ずかしいようなので、譲歩案だ。

「ハナが欲しいもの、オレに教えて?
そしたらあげる。

手で触って教えてくれるだけでいいから。」

可愛い彼女のいい声を聞いたからか、はたまたこの旅行までの間で溜めすぎたのか。
かなりの大きさになっている。

それを、彼女がそっと手で触る。

「さっき、お風呂入ったときに、私が丁寧に洗って、咥えたりもしたやつ、欲しいな。」

何だその言い方。
合格点はとうに超えている。

「そんなエッチなおねだりの仕方、どこで覚えたの?
オレの彼女、最高すぎるわ。」

ちゅ、とハナの唇を吸ってから、鎖骨の辺りと胸元に、赤いシルシを刻む。

その甘い痛みに彼女が酔いしれているうちに、準備を整える。

「……ハナ。
お待たせ。」

舌を絡める、深いキス。
静かな部屋に、響く音が、さらに欲情させた。

「愛してる。
好きだけじゃ足りない。」

「私もよ。」

その言葉を合図に、彼女と繋げて、何度か動くと。
すぐに薄い膜越しに大量に熱い液体が吐き出された。

「ミツ、溜めすぎ……
身体に良くないよ?」

オレの愛しい彼女が、オレの髪をそっと梳いた後、頭を撫でてくれた。

「んー?
可愛い彼女が可愛い声で鳴いてくれるから。
もう1回、いいよね?」

彼女から、キスをくれる。
出された舌を捕らえて、自分のと絡める。

「いい、ってこと?ハナ。」

にっこり微笑んで頷く。

この笑顔、出会ったときも同じ笑い方で。

この笑顔に、一目惚れしたんだよなぁ。

……何度目かのあと、疲れたのか眠ってしまった愛しいオレの彼女。

起こさないよう、眠っている横顔に、そっと唇を落とす。

服でも着るか、とキャリーケースを引き寄せて開ける。

着ていた私服は脱衣場にある。
そこまで歩いているうちにハナが起きてしまってはいけない。
キャリーケースの中には、見慣れない巾着袋が入っていた。

白地に青いストライプの包装。
確か、ハナがメイちゃんに誕生日プレゼントとしての品物を買った店の紙袋が、そんな感じだった。

まさかと思い、そっと包みを開ける。

中には、薄いブルーのシャツと同じ色のロングパンツが入っていた。
主張しすぎないし、サッカー素材で夏も涼しく着られそうだ。

何より、うっすらストライプのそれは、見覚えがありすぎる。

もしかして。

一緒に入っていた封筒を封を丁寧に開けて、書きつけられた丁寧な文字を読む。

『ミツへ

毎日お疲れ様!

メイちゃんの誕生日プレゼント買ってたら、ミツの誕生日過ぎてたことも思い出して。
遅くなったけどプレゼントです!

誕生日、5月だから2ヶ月くらい遅くなっちゃったよね、ごめん!
まぁ、それは、普段私がミツに身体でご褒美あげてるから、大目に見て?

ってことは今は横において……

さりげなく私のとは色違いにしてあります!
汗を素早く吸収して蒸散させる特殊な素材が使われているみたいなんだ。
夏も涼しく着れるよ!

いつか、本当に私とミツが結婚したら。
家でお揃いで着たいな、なんて思ってるから、そんな願いも込めて。

これから受験生に向かっていくから、いろいろ大変だし、レンとメイちゃんのことも見届けなきゃだけど、頑張ろう!

ミツがいるから頑張れるよ、ありがとうね!

ハナ』

いつの間にこんなの買ったんだ?
そして、いつの間にこんなの書いたんだ?

いつ、こんな袋を仕込んだんだ?

疑問は尽きないが、ただ1つ言えるのは。

ハナは、オレにはもったいないくらいの、世界一素敵な女だ、ということだ。

オレの目の前で寝息を立てるハナを、一生隣で守る覚悟も、とうに出来ている。

オレのもう1人の幼なじみに負けないくらい、幸せにしてやることがオレの責務だ。

ハナを起こさないよう、そっと脱衣所のドアを開けて、うっすらストライプに見えるピンクのシャツパジャマを取って、ボタンを開ける。

苦労して、上だけでも彼女に着せる。

風邪を引かせてはならない。

彼女に上だけを着せた後、オレも貰ったばかりのそれを着てみる。
涼しくて着心地は最高だった。

これから、毎年来る夏が楽しみになる品を貰ったことに感謝だ。

ある決意を胸に秘めながら、穏やかな寝息を立てるハナの横で、オレも眠った。
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