ボーダー
<ハナside>
レンとメイちゃん、柏木さんの日米同時会見は成功といえるものだった。
といっても、この会見のほとんどは、彼らが自身で作り上げたものだ。
私は、ほんの少しのアドバイスをしただけ。
質疑応答の時間が短すぎるから不満が出る、その不満は残念、だけでなく、いつか恨みに変わるときもあるかもしれない。
それも防ぐために、メールフォームで質問を送ってもらって、答えられるものには答えたほうが、誠意や優しさが伝わるだろう、というだけだった。
それ、やったんだ。
会見が終わって翌日。
予鈴ギリギリに駆け込んできたレンの顔がとても疲れていた。
見かねた真くんが、レンの分もノートを取ってくれたのだが。
教師たちも、他の生徒たちも、レンを冷やかしたり腫れ物に触るような態度ではなかったのだけが、彼にとって救いだったのだろう。
授業と並行して、文化祭の準備は進んでいき、
9月半ば。
文化祭が開幕した。
今年から始まったミスコン。
女子が本当は参加するのだが、男子が女装するのも可となっている。
クラスで1人は参加することになっている。
完全に1人でもいいし、1人助っ人を呼んで、寸劇にするのも良し。
審査は、投票券を文化祭のパンフレットに付けてあるので、一般のお客さんも参加できる。
一番票を集めた人がグランプリだ。
レンがまさかの女装をして参加した。
彼が最後の思い出作りをしたい、という申し出をしたためだ。
レンったら、まつ毛長い上に二重だし、肌が元から白いから、女装すると本当の女子より可愛いの。
女装の準備は、私がナナに連絡をとって、教わったことを、メモをなぞりながら行った。
黒目大きいからカラコンを入れなくても良かったし。
ちょっとムカつく、いや、女子として羨ましい限りだ。
スキンケアからさせると、かなりの時間がかかったが、それでも、納得のいく仕上がりにはなった。
そして、女装する彼自身が芸能事務所に頼み込んで用意してもらったメイド服を着て、準備は完了だ。
ウィッグで作ったサラサラの黒髪ロングヘアーが似合うなぁ。
白いカチューシャも映えている。
レン(女装、メイドさん)がバイト中に男2人に言い寄られているところを、ミツが体育祭で披露した護身術で助ける、という形の寸劇にした。
ミツもかなり恥ずかしかったという。
女装しているとはいえ、助けるのは幼なじみの男なのだ。
『エントリーNo.1番の可愛い子猫ちゃん、どうもありがとう!
結果は後夜祭で発表します!』
司会の声とともに、グッタリした様子のミツが会場に戻ってきた。
「お疲れ、ミツ。
ご褒美、気が向いたらあげるね?」
「今がいい。」
彼はそう言うと、私の手を引いて、柱の陰に私を追い詰めると、唇が触れた。
30秒ほどだったが、彼としては満足だったようだ。
「ありがと。
続きは、文化祭の2日目が終わった後に、オレの家で、な?
昨年は、意地張ってハナと口利かなかったからハナと過ごせなかったんだよな。
去年の分まで、ハナと楽しみたい。」
こう言って、彼は私の頭を撫でてくれた。
そういえば、去年はそんな感じだった。
これが、私とレンとミツが3人で楽しめる、最後の文化祭になるんだ。
楽しまなきゃ!
クレープ屋は大成功だった。
材料提供や準備には、宝月グループの尽力もあった。
昨年、同じクラスだった麻紀や真くんがいればより美味しいものに仕上がったに違いない。
2人がいないのは痛手だったが、何とかお客さんを呼び込んだ。
私が可愛いウェイトレス風の服を着ると、美人な店員がいると話題になって男子学生が殺到したのだ。
売上は、真くんのクラスのたこ焼きに及ばなかったが、それでも2位。
文化祭2日目に行った、毎年恒例の、文化祭を最後に合唱部を引退する先輩へ歌をプレゼントするサプライズは成功した。
後夜祭では、ミスコンの結果が発表されて、レンがグランプリとなった。
寸劇で、彼が出していた女の子らしい声が印象に残ったという。
後から聞いた話、彼は舞台袖でヘリウムガスを吸ったという。
ヘリウムガス、ホントは一息分しか変わらないのだが、残りは彼の演技力でカバーしたということなのだろう。
この衣装、婚約者に着せてみるか、と言っていたレン。
私は、心の中で、確実に寝不足になるであろうメイちゃんを不憫に思った。
頑張れ、メイちゃん。
レンは、後夜祭でも即興でバンドに混ざってボーカルをやっていたり、放送部で作った文化祭のための映像を流していたりと、はっちゃけていた。
レンが楽しそうな姿を、嬉しさと寂しさがない混ぜになった気持ちで眺めていたのだった。
レンとメイちゃん、柏木さんの日米同時会見は成功といえるものだった。
といっても、この会見のほとんどは、彼らが自身で作り上げたものだ。
私は、ほんの少しのアドバイスをしただけ。
質疑応答の時間が短すぎるから不満が出る、その不満は残念、だけでなく、いつか恨みに変わるときもあるかもしれない。
それも防ぐために、メールフォームで質問を送ってもらって、答えられるものには答えたほうが、誠意や優しさが伝わるだろう、というだけだった。
それ、やったんだ。
会見が終わって翌日。
予鈴ギリギリに駆け込んできたレンの顔がとても疲れていた。
見かねた真くんが、レンの分もノートを取ってくれたのだが。
教師たちも、他の生徒たちも、レンを冷やかしたり腫れ物に触るような態度ではなかったのだけが、彼にとって救いだったのだろう。
授業と並行して、文化祭の準備は進んでいき、
9月半ば。
文化祭が開幕した。
今年から始まったミスコン。
女子が本当は参加するのだが、男子が女装するのも可となっている。
クラスで1人は参加することになっている。
完全に1人でもいいし、1人助っ人を呼んで、寸劇にするのも良し。
審査は、投票券を文化祭のパンフレットに付けてあるので、一般のお客さんも参加できる。
一番票を集めた人がグランプリだ。
レンがまさかの女装をして参加した。
彼が最後の思い出作りをしたい、という申し出をしたためだ。
レンったら、まつ毛長い上に二重だし、肌が元から白いから、女装すると本当の女子より可愛いの。
女装の準備は、私がナナに連絡をとって、教わったことを、メモをなぞりながら行った。
黒目大きいからカラコンを入れなくても良かったし。
ちょっとムカつく、いや、女子として羨ましい限りだ。
スキンケアからさせると、かなりの時間がかかったが、それでも、納得のいく仕上がりにはなった。
そして、女装する彼自身が芸能事務所に頼み込んで用意してもらったメイド服を着て、準備は完了だ。
ウィッグで作ったサラサラの黒髪ロングヘアーが似合うなぁ。
白いカチューシャも映えている。
レン(女装、メイドさん)がバイト中に男2人に言い寄られているところを、ミツが体育祭で披露した護身術で助ける、という形の寸劇にした。
ミツもかなり恥ずかしかったという。
女装しているとはいえ、助けるのは幼なじみの男なのだ。
『エントリーNo.1番の可愛い子猫ちゃん、どうもありがとう!
結果は後夜祭で発表します!』
司会の声とともに、グッタリした様子のミツが会場に戻ってきた。
「お疲れ、ミツ。
ご褒美、気が向いたらあげるね?」
「今がいい。」
彼はそう言うと、私の手を引いて、柱の陰に私を追い詰めると、唇が触れた。
30秒ほどだったが、彼としては満足だったようだ。
「ありがと。
続きは、文化祭の2日目が終わった後に、オレの家で、な?
昨年は、意地張ってハナと口利かなかったからハナと過ごせなかったんだよな。
去年の分まで、ハナと楽しみたい。」
こう言って、彼は私の頭を撫でてくれた。
そういえば、去年はそんな感じだった。
これが、私とレンとミツが3人で楽しめる、最後の文化祭になるんだ。
楽しまなきゃ!
クレープ屋は大成功だった。
材料提供や準備には、宝月グループの尽力もあった。
昨年、同じクラスだった麻紀や真くんがいればより美味しいものに仕上がったに違いない。
2人がいないのは痛手だったが、何とかお客さんを呼び込んだ。
私が可愛いウェイトレス風の服を着ると、美人な店員がいると話題になって男子学生が殺到したのだ。
売上は、真くんのクラスのたこ焼きに及ばなかったが、それでも2位。
文化祭2日目に行った、毎年恒例の、文化祭を最後に合唱部を引退する先輩へ歌をプレゼントするサプライズは成功した。
後夜祭では、ミスコンの結果が発表されて、レンがグランプリとなった。
寸劇で、彼が出していた女の子らしい声が印象に残ったという。
後から聞いた話、彼は舞台袖でヘリウムガスを吸ったという。
ヘリウムガス、ホントは一息分しか変わらないのだが、残りは彼の演技力でカバーしたということなのだろう。
この衣装、婚約者に着せてみるか、と言っていたレン。
私は、心の中で、確実に寝不足になるであろうメイちゃんを不憫に思った。
頑張れ、メイちゃん。
レンは、後夜祭でも即興でバンドに混ざってボーカルをやっていたり、放送部で作った文化祭のための映像を流していたりと、はっちゃけていた。
レンが楽しそうな姿を、嬉しさと寂しさがない混ぜになった気持ちで眺めていたのだった。