ボーダー

修学旅行

模擬裁判の後、中間テストを終えていよいよ、2年生全員が待ちわびた、マレーシアへの修学旅行の日。

「マレーシア、か。
柏木グループの手助けももらう約束をしているから、いい旅行になるぞ。

それなりに、ホテルもランクの高いところにグレードアップされているからな。」

私とミツの後ろで、レンが何かを言っている。

レンの使用人の武田さんに待ち合わせ場所まで車で送ってもらっていたので、重い荷物を持ちながら電車に乗る必要はなかった。

こんな、楽でいいのかな?

車の中でずっと鼻歌を歌ってた私。

「ご機嫌だな。
可愛い彼女がご機嫌で、オレも嬉しい。」

「誰かさんがラブラブだから、車内の温度が5℃くらい上がって、秋なのに暑いんだけど。」

「レン!
冷やかさないでよ!
そういうレンだって、メイちゃんとラブラブのくせに。

宝月邸が完成するまで、私とミツを連れて行ってくれたあの別荘で、2人で住んでるんでしょ?

いいなぁ、一つ屋根の下で一緒にいられるの。

ちょっと羨ましい。」

「そんなにいいもんじゃないわよ。
夜が特にね。

……月イチのアレで体調落ちてるとき以外は、隙あらば求めてくるし。」

レンにて聞こえないように、耳元で言ってくるメイちゃん。

婚約者さん、って大変だな。

クラスの皆でバスに乗って、空港を目指した。

バスの車内でも、お菓子を食べたり、他愛もない話で盛り上がった。

「んで?愛実とはどうなの?
和貴くん。

文化祭も一緒に回ってたみたいだし、夏休みに体調崩したところに看病に言ってたところを見ると、友達以上恋人未満、って感じに見えるけど。」

和貴くんは、窓に視線を向けながら言う。
文化祭でタイミングを逃して告白ができなかったから、この修学旅行中に告白したい、と言っていた。

ほうほう。

これは、協力しないとね!

「私は3組で、愛実は4組だ。
飛行機が行きと帰りで同じだから、その時に、手紙やらメモを渡しておいて、ホテルの外とかに呼び出して告白、とかいいと思うぞ。

というか、クラスが違うとなると、そういうことしかできないけどな。」

さすが、婚約者にサプライズでプロポーズしただけのことはある。
レン、恋愛経験値高いんだよなぁ。

空港に着いて、出国審査やらを済ませて、手荷物に必要な液体物を小分けにする。
コンタクトレンズ、ワンデーにしておいてよかった。

現地時間ではもう夜になっていた。
まあ、日本とマレーシアでは1時間しか時差がないんだけどね。
このことは、伊達さんに聞いたんだけど。

バスの中で現地の通貨であるリンギット紙幣を受け取って、夕食会場へ向かった。
丸テーブルを囲んで、皆で中華を食べる。

赤ピーマンと間違えて、唐辛子をそのまま食べてしまった。

「辛いー!」

「バーカ。
唐辛子ごと食べたら辛いの当たり前だろ。」

マレーシアでは水道水は衛生上、水道水は飲んではいけないため、ミネラルウォーターを飲み干す。

少しおさまった……

「少しマシ?
後で、口直しに甘いご褒美あげるね?」

もう、ミツったら。

何だかんだでとても辛かったが、味はそこそこだった。

夕食の後、バスでホテルに向かう。

さすがミシュラン5つ星ホテル。
日本人向けの、設備が整った、かなり快適な高級ホテルだ。

エレベーターにはルームキーを差し込んでから階のボタンを押す仕組みになっている。
部屋もルームキーでロックする。
部屋にはバスルームやシャワールーム、トイレも完備されている。

シャワールームがガラス張りで、隣にトイレがあるのだけは解せなかったけれど。

「オレと和貴の部屋、来るか?
ハナ。

相部屋だったやつ、体調不良で今は養護の那智先生のところにいるんだろ?
その間、1人じゃ寂しいだろ。」

「行く!」

私はミツに連れられて1つ下の階にある男子部屋に行く。

「なぁ、ホントに俺、いていいの?
お前ら夫婦にとっておじゃま虫じゃない?」

和貴くんが言う。

「ってか、まだ夫婦じゃない!」

「いつかはそうなる予定だけどな。
ってか、和貴。
お前は愛実ちゃんへの告白の台詞でも考えたらどうだ。

この後、21時30分なんだろ?
レンにこのホテルのプールまで、特別に案内してもらうみたいじゃん。」

え、ちょっと待って。

このホテル、プールあるの?

そして、その前のミツの台詞。
いつかは夫婦に、って、マジ?

そんなこと言われると、いろいろと妄想が膨らんで、眠れないじゃん。

確信犯な恋人を持つと、大変だ。
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