ボーダー
〈レンside〉

助かった。

村西さんと遠藤さんに感謝しなきゃな。
武田も、ロビーにいた。

彼には、メイの警護を頼んだのだ。

大事な婚約者に何かあっては困る。

2人には、足を向けて寝られない。

村西さんから連絡を受けてロビーにいたメイの頭を撫でてから、話があるという村西さんという遠藤さんについていく。

部屋には、この間も会った南 亜子さんと、柏木 志穂さんがいた。

「久しぶり!
皆さん、お疲れさまです!
そして、お時間をいただいてありがとうございます!」

志穂さんが迎えてくれて、日本から持ってきたほうじ茶のペットボトルを冷蔵庫から出してもてなしてくれた。

話とは何だろうか。
不安そうな顔をするオレに、志穂さんは安心してというように笑顔を見せる。

悪い話ではないようだ。

「宝月邸の完成、メイちゃんと蓮太郎くんが挙式の頃に間に合うか間に合わないか、くらいのはずだったのだけれど、早まることになったのよ。

メイちゃんと蓮太郎くんが婚姻届出す頃には完成するわ。

宝月グループと柏木グループが業務資本提携したから、優秀な人材もたくさん確保できて、資金も潤沢になったことが大きいのよ。

上手い具合に、タワマン作る計画の土地を買い上げることもできたから、かなり敷地は広くなるわよ。

こういうことできるのも、宝月グループの人脈のおかげね。
蓮太郎くんの人柄もあるのかも。
とにかく、感謝よ。」

タワマン作る計画の土地、買い上げたのか。

サラリと恐ろしい単語が聞こえたな。

「それで、いろんな世界のホテルを参考に、実際の作ったらこんな感じになる、って、ソフトを使ってシミュレーションしてみたの。

そのシミュレーションを、やっぱり一番に住む2人に見てもらいたくて。

お願いできるかしら?」

そう言って、パソコンの画面を、オレたちに向ける志穂さん。

今泊まっているホテルのロビーに作りが似ている、吹き抜けがあるロビーに、様々な用途に使えるラウンジ。

ロビーには、コンシェルジュが2人駐在しているので、この2人に何でも聞けば、迷っても心配はない。

2人の寝室は、天蓋付きベッドだ。
来客用と家族用の浴室が同じ階ではあるが北と南に別れて配置されている。

来客用と家族用の浴室のロッカーは指紋で開閉する。
また、ありとあらゆるメーカーのシャンプーやボディーソープ、シャンプーやクレンジング用品が置かれており、気に入ったものをセルフで客が選べるのだ。

来客用の浴室の風呂にはジャグジーがついている。
そして、ちょっとした仲間内5~6人は入れそうなくらい広い。

また、湯あたりしたときやのぼせたときに休めるラウンジは、男女で使い分けが可能だ。

女性用はラウンジ目の前にあるカウンターのスタッフに言えば、ヘアアイロンやアイマスクを借りられるという。

エージェントルームに近いようなモニタールームも作る予定で、屋敷中にある防犯カメラの映像はすべてチェックできるようだ。

更に、3階と4階にある部屋は、部屋ごとにテーマが決まっているという。

ここに住むと、俗世間から隔離されてる気分になれるな。

「いいと思います、とても。
セキュリティもしっかりしていて。
安心して住める家で、ポイント高いです。」

「まだ、康一郎と話している段階のお話なんだけど、エージェントルームのデータベースを使って、執事としてやっていけそうな人を探しているのよ。
そして、エージェントルームの空き部屋を研修ルームとして使うことを検討しているところなの。

これで、蓮太郎くんが懸念していた点はクリアになったかしら。」

そうか、エージェントルームを使う手があったのだ。
柏木さんの弟が伊達さんだから、惜しみなく協力してくれるはずだ。

「ありがとうございます。
このシミュレーションで問題はないと考えております。
このまま進めていただけると嬉しいです。」

南 亜子さんは、メイにいろいろとドレスの選び方のアドバイスもしていた。

「亜子さんに、志穂さん。
ありがとうございました。

式、明後日ですのに。

私たちは、修学旅行の帰りがちょうど明後日なので参加はできませんが、どうか良い式になるよう、お祈りしております。」

「ありがとう、蓮太郎くん!
私たちのが終われば、今度は蓮太郎くんとメイちゃんの式に尽力できるわ。

何でも言ってね!」

「志穂さん、ありがとうございます。
少し早いですが、おやすみなさい。
お身体に差し障るといけませんので、ここでお暇させていただきます。

本日はお忙しい中、お時間をいただき、ありがとうございました。」

部屋を出て、メイがオレに紙を渡してから、先に部屋に戻った。
紙には、日本で買える、婚約指輪を買える店のリストが書き連ねてあった。
紙に貼られた付箋には、御劔くんに渡して、と書いてあった。

いつの間に、こんなことしてたんだよ。
ホントに、デキる女だ。
たっぷり、ご褒美あげなきゃな。
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