ボーダー
真実
先生は、続けて静かに語り始めた。
「優くんにはカン違いさせていたかもしれないけど、アレは、私からハナちゃんに頼んだの。
レンくんの眠っているチカラを強制的にでも引き出すために、影で魔導をコントロールしてあげるように……ね。」
レンは、ずっとうつむいていた。
レン自身、自分の魔導が他者によってコントロールされていたことになど、気付かなかったのだろう。
「ごめんね。
優くんの気持ちに全く気づいてなかったわ。
私ったら、教育者失格ね。
よく考えたら、気になる人が、自分以外の男の子人と仲良さげんだもの。
疑いたくもなるわよね。」
オレは当時、ハナとレンが二人きりで仲良さげにしていた光景を何度も見た。
それが特訓だったんだろう。
当時のオレは気づくはずもなく、しばらくハナとレンを意識的に避けていた時期もあった。
それでも、家が近く、親同士が繋がっているため避けるには限界がある。
だから、レンと二人でちょっかいを出して、ハナに嫌われてしまえばいいと思った。
そうすれば、ハナのことで思い悩むこともなくなる、と。
今から考えると、非常に子供らしい、安易な発想だった。
しかし、当時の頭ではこれしか思いつかなかったのだ。
一度、好きになった女のことなんて、そう簡単に忘れられるはずはなく、むしろ顔を見れないのが苦しかった。
一緒にいたい。
隣で、可愛い笑顔を見ていたい。
そのためにも、ハナに会って、謝りたい。
オレはそう思った。
オレの考えは、鈴原先生にはお見通しだったようだ。
「ハナちゃんは、明野原にいるわ。
明野原にある学校で、お世話になってる。
彼女自身調べたいことがあるみたい。」
レンの様子は相変わらずだったが、ふと顔を上げて言った。
「先生!お願いがあります!
オレと……魔導の特訓をしてくれませんか?」
どうやらレンは、ハナに魔導を使えるようになったところを見せた上で、今回のことを謝りたいらしい。
いわゆる、ハナに会うための口実作りになる。
それを知ってか知らずか、先生は二つ返事であっさり了承した。
「ありがとうございます!」
「早く始めようぜ。
時間、あんまないし。」
「待って!
特訓を始める前に、二人に渡すものがあるの。」
そう言って先生画渡してきたのは、星、ダイヤ、クローバーの形をしたブローチだった。
「これにはある人の魔力が込めてあるの。
これさえ身につければ、簡単な魔法なら使えるようになるはずよ。
頑張ってね。」
「そんなの、フェアじゃないじゃないですか。」
「このブローチに魔力を込めた人が、こう言っていたわ。
『これを聞いてどっかの誰かさんはフェアじゃないとか思うかもしれないけど、これは友情の魔法なんだ。
魔力を込めた側と使う側の心が繋がってないと使えない、特別な物だから。
でも、私の幼なじみなら大丈夫!』
だそうよ。」
「オレ……頑張ります!」
「レン。
今のお前に必要なのは、そのブローチと、"自分の気持ちと向き合って、自覚すること"だな。
……まぁ、いい。
今にわかるときが来るだろう。」
こうして、レンの特訓が始まった。
オレはベンチに座って特訓風景を眺めながら、ふと考える。
……ハナ。ホントにお前なのか?
あのブローチに魔力込めたの。
オレらのこと、どう思ってんだよ。
オレらに対して、幼なじみ以上の感情はあるのか?
先生が隣に来て言う。
「ねぇ、優くん。
あなた最近、抱え込みすぎてる気がするわよ?いろいろと。」
「そう……ですかね?」
「レンくんを見習ったら?」
先生は、一呼吸置いて続ける。
「あの子、スゴイ素直よね。
分かりやすいっていうか。
自分の気持ち、あまり押さえ込まない方がいいわよ?
好きな子への気持ちもね?」
「ハイ。」
最後の一言は余計だった気もするが、つっこむのも野暮に思えた。
「優くんにはカン違いさせていたかもしれないけど、アレは、私からハナちゃんに頼んだの。
レンくんの眠っているチカラを強制的にでも引き出すために、影で魔導をコントロールしてあげるように……ね。」
レンは、ずっとうつむいていた。
レン自身、自分の魔導が他者によってコントロールされていたことになど、気付かなかったのだろう。
「ごめんね。
優くんの気持ちに全く気づいてなかったわ。
私ったら、教育者失格ね。
よく考えたら、気になる人が、自分以外の男の子人と仲良さげんだもの。
疑いたくもなるわよね。」
オレは当時、ハナとレンが二人きりで仲良さげにしていた光景を何度も見た。
それが特訓だったんだろう。
当時のオレは気づくはずもなく、しばらくハナとレンを意識的に避けていた時期もあった。
それでも、家が近く、親同士が繋がっているため避けるには限界がある。
だから、レンと二人でちょっかいを出して、ハナに嫌われてしまえばいいと思った。
そうすれば、ハナのことで思い悩むこともなくなる、と。
今から考えると、非常に子供らしい、安易な発想だった。
しかし、当時の頭ではこれしか思いつかなかったのだ。
一度、好きになった女のことなんて、そう簡単に忘れられるはずはなく、むしろ顔を見れないのが苦しかった。
一緒にいたい。
隣で、可愛い笑顔を見ていたい。
そのためにも、ハナに会って、謝りたい。
オレはそう思った。
オレの考えは、鈴原先生にはお見通しだったようだ。
「ハナちゃんは、明野原にいるわ。
明野原にある学校で、お世話になってる。
彼女自身調べたいことがあるみたい。」
レンの様子は相変わらずだったが、ふと顔を上げて言った。
「先生!お願いがあります!
オレと……魔導の特訓をしてくれませんか?」
どうやらレンは、ハナに魔導を使えるようになったところを見せた上で、今回のことを謝りたいらしい。
いわゆる、ハナに会うための口実作りになる。
それを知ってか知らずか、先生は二つ返事であっさり了承した。
「ありがとうございます!」
「早く始めようぜ。
時間、あんまないし。」
「待って!
特訓を始める前に、二人に渡すものがあるの。」
そう言って先生画渡してきたのは、星、ダイヤ、クローバーの形をしたブローチだった。
「これにはある人の魔力が込めてあるの。
これさえ身につければ、簡単な魔法なら使えるようになるはずよ。
頑張ってね。」
「そんなの、フェアじゃないじゃないですか。」
「このブローチに魔力を込めた人が、こう言っていたわ。
『これを聞いてどっかの誰かさんはフェアじゃないとか思うかもしれないけど、これは友情の魔法なんだ。
魔力を込めた側と使う側の心が繋がってないと使えない、特別な物だから。
でも、私の幼なじみなら大丈夫!』
だそうよ。」
「オレ……頑張ります!」
「レン。
今のお前に必要なのは、そのブローチと、"自分の気持ちと向き合って、自覚すること"だな。
……まぁ、いい。
今にわかるときが来るだろう。」
こうして、レンの特訓が始まった。
オレはベンチに座って特訓風景を眺めながら、ふと考える。
……ハナ。ホントにお前なのか?
あのブローチに魔力込めたの。
オレらのこと、どう思ってんだよ。
オレらに対して、幼なじみ以上の感情はあるのか?
先生が隣に来て言う。
「ねぇ、優くん。
あなた最近、抱え込みすぎてる気がするわよ?いろいろと。」
「そう……ですかね?」
「レンくんを見習ったら?」
先生は、一呼吸置いて続ける。
「あの子、スゴイ素直よね。
分かりやすいっていうか。
自分の気持ち、あまり押さえ込まない方がいいわよ?
好きな子への気持ちもね?」
「ハイ。」
最後の一言は余計だった気もするが、つっこむのも野暮に思えた。