ボーダー
祝福
「ん……」
「もう朝。
起きな?メイ。」
カーテンが開く音と、それによって入る柔らかな光で目が覚めた。
「おはよう。
可愛い寝顔だけどさ?
そろそろ支度して行かないとだよ?」
「そうだったわね。
起きる。」
「ほとんど式の間は食べる時間ないっぽい。
今のうちに軽く胃に入れとくか。
メイは着替えたりシャワー浴びたりしてな?」
お言葉に甘えて、シャワーを浴びに脱衣場に入る。
下着しか身に着けていない姿にギョッとしたが合点がいった。
バチェロレッテパーティーの際、菜々美ちゃんから貰ったプレゼントが、かなりキワドいものと、メイド服を模したようなデザインの下着だった。
それを見た旦那の反応が予想以上で、結局盛り上がってしまい、1回で終わらせるどころか3回する羽目になった、というわけだ。
太もものところに薄くシルシが付いているのがその証だ。
もう、蓮太郎ったら。
シャワーを浴び終えてドライヤーをしていると外から蓮太郎が呼びかけてくれる。
「武田がサンドイッチと紅茶、持ってきてくれたぜ。
服汚すと困るだろ、むしろ何も着ないでいいから食べちゃえば?」
旦那さんがそう言うから、バスローブだけで外に出て、サンドイッチを口に放り込む。
「美味しかった、って伝えて、武田さんに。」
「うん、もちろん。
伝えておく。」
そこで言葉を切って、耳元で囁く。
「うん、いい眺め。
挙式当日じゃなかったら、抱き上げてベッドに連行してるところだよ?」
「蓮太郎、そういうことは挙式終わったあとにしようね?
……私、着替えてくる。」
ドライヤーついでに、顔に塗り込んだ化粧水や乳液も肌に染み込んだ頃だ。
前開きのターコイズブルーシャツワンピースと白いカーディガンを羽織って脱衣所の外に出た私をハグしてくれたのは旦那だ。
「すごい可愛い。
準備できたなら、荷物持って行こうか?
武田が門の前に車つけてくれてる。
メイがシャワー浴びてる間に、荷物の中身確かめたから、忘れ物ないはずだよ。
チェックリストとも照らし合わせたし。
亜子さんがチェックリストまで渡してくれてたなんて、思わなかったけど。」
バタバタと車に乗って、武田さんの運転で式場に向かう。
「緊張されておりますか?奥様。
……大丈夫です。
ブライズメイドのリーダーであられる蒲田様、アッシャーのリーダーであられる御劔様。
その方が中心となり、ブライズメイドやアッシャーが一致団結して準備を進めておられるのを私も拝見しております。
本日はきっと素晴らしい日になる。
私はそう確信しております。
……どうぞご安心を。」
武田さんの言葉に、大きく頷いたのは私の旦那だ。
……大丈夫、上手くいかないわけがない。
緊張とほんの少しの不安と。
それ以上の期待感とワクワク感が胸いっぱいに広がるのを感じた頃、会場に到着した。
会場に着いてすぐ、蓮太郎とは離れ離れだ。
「……後でな、メイ。
世界一美しい花嫁になってこい。」
一瞬だけ彼に抱き寄せられて、軽く唇を重ねられる。
「……照れるじゃん、もう。
でも、変な緊張感はなくなった。
ありがと。
行ってくるわ。」
「羨ましいわ、絵に描いたようなラブラブぶりで。」
ヘアメイクを担当する女性にもそう言われた。
彼女は、よく菜々美ちゃんのヘアメイクを担当してくれる人なのだという。
腕は確かなヘアメイクさんで、何も言わなくても菜々美ちゃんから教わったパーソナルカラーを意識したメイクをしてくれる。
「照明で色が飛んじゃうから、いつもよりかなり濃いめにするけど、ビックリしないでね?
若いから化粧ノリも良くて羨ましい。
あんな素敵な旦那さん持つと違うのかしら?」
化粧品の香りが混ざって嘔気が来たが、これだけ見渡す限りメイク道具だらけなのだ、そういうものだろうと気にしなかった。
髪は結べるほど長さがないので、アイロンを通して前髪をピンで留めるだけにしているが、その留め方ねじって留めている辺り、邪魔にならない工夫がされていた。
「メイクも馴染んだ頃ね、私が合図するまで、目を閉じていてくれる?」
そう言われて、言われたとおりにする。
顔全体にスプレーを吹き付けられた。
「これで大丈夫。
ヘアメイクは完成。
本番が終わるまで、いいえ、何なら今日の夜まで落ちないわよ。」
どうやら、メイクが落ちないようにキープするスプレーを吹き付けてくれたようだ。
「お気遣い、ありがとうございます。」
私が言うと、女性は服についたピンマイクに何やら話しかけてから、にっこり微笑みかけた。
「世界一可愛い姿、早く旦那さんに見せてあげるといいわ。」
メイクをしてくれた部屋の2つ隣が控室になっている。
「蓮太郎?」
「……メイ?
世界一どころか宇宙一可愛い。
こんな可愛い子を奥さんに出来るなんて幸せ。
……ホントはキスしたいくらいだけど、せっかくやってもらったの崩れちゃうもんな。
それに、キスは本番にとっておこうか。」
「……もう、蓮太郎ったら。」
そう言う彼も、白いタキシードがよく似合っている。
漫画とかドラマの中から飛び出してきた王子様みたいだ。
コンコン、とノックの音がして、ハナちゃんと御劔くんが呼びに来た。
「お二人さん、写真撮影しますので、せっかくお楽しみのところお手数かけますけど、移動をお願いしますー!」
写真撮影らしい。
私と蓮太郎の似顔絵だろうか。
それが書かれたフラッグを持って私たちを案内する姿は、さながらツアーコンダクターのようで、思わず笑みが溢れた。
蓮太郎の祖父母も、村西さんも遠藤さんも。
亜子さんも、式に関係する皆が集まって、3枚ほど写真を撮った。
控室に戻ると、しばしの休息時間だ。
「もう朝。
起きな?メイ。」
カーテンが開く音と、それによって入る柔らかな光で目が覚めた。
「おはよう。
可愛い寝顔だけどさ?
そろそろ支度して行かないとだよ?」
「そうだったわね。
起きる。」
「ほとんど式の間は食べる時間ないっぽい。
今のうちに軽く胃に入れとくか。
メイは着替えたりシャワー浴びたりしてな?」
お言葉に甘えて、シャワーを浴びに脱衣場に入る。
下着しか身に着けていない姿にギョッとしたが合点がいった。
バチェロレッテパーティーの際、菜々美ちゃんから貰ったプレゼントが、かなりキワドいものと、メイド服を模したようなデザインの下着だった。
それを見た旦那の反応が予想以上で、結局盛り上がってしまい、1回で終わらせるどころか3回する羽目になった、というわけだ。
太もものところに薄くシルシが付いているのがその証だ。
もう、蓮太郎ったら。
シャワーを浴び終えてドライヤーをしていると外から蓮太郎が呼びかけてくれる。
「武田がサンドイッチと紅茶、持ってきてくれたぜ。
服汚すと困るだろ、むしろ何も着ないでいいから食べちゃえば?」
旦那さんがそう言うから、バスローブだけで外に出て、サンドイッチを口に放り込む。
「美味しかった、って伝えて、武田さんに。」
「うん、もちろん。
伝えておく。」
そこで言葉を切って、耳元で囁く。
「うん、いい眺め。
挙式当日じゃなかったら、抱き上げてベッドに連行してるところだよ?」
「蓮太郎、そういうことは挙式終わったあとにしようね?
……私、着替えてくる。」
ドライヤーついでに、顔に塗り込んだ化粧水や乳液も肌に染み込んだ頃だ。
前開きのターコイズブルーシャツワンピースと白いカーディガンを羽織って脱衣所の外に出た私をハグしてくれたのは旦那だ。
「すごい可愛い。
準備できたなら、荷物持って行こうか?
武田が門の前に車つけてくれてる。
メイがシャワー浴びてる間に、荷物の中身確かめたから、忘れ物ないはずだよ。
チェックリストとも照らし合わせたし。
亜子さんがチェックリストまで渡してくれてたなんて、思わなかったけど。」
バタバタと車に乗って、武田さんの運転で式場に向かう。
「緊張されておりますか?奥様。
……大丈夫です。
ブライズメイドのリーダーであられる蒲田様、アッシャーのリーダーであられる御劔様。
その方が中心となり、ブライズメイドやアッシャーが一致団結して準備を進めておられるのを私も拝見しております。
本日はきっと素晴らしい日になる。
私はそう確信しております。
……どうぞご安心を。」
武田さんの言葉に、大きく頷いたのは私の旦那だ。
……大丈夫、上手くいかないわけがない。
緊張とほんの少しの不安と。
それ以上の期待感とワクワク感が胸いっぱいに広がるのを感じた頃、会場に到着した。
会場に着いてすぐ、蓮太郎とは離れ離れだ。
「……後でな、メイ。
世界一美しい花嫁になってこい。」
一瞬だけ彼に抱き寄せられて、軽く唇を重ねられる。
「……照れるじゃん、もう。
でも、変な緊張感はなくなった。
ありがと。
行ってくるわ。」
「羨ましいわ、絵に描いたようなラブラブぶりで。」
ヘアメイクを担当する女性にもそう言われた。
彼女は、よく菜々美ちゃんのヘアメイクを担当してくれる人なのだという。
腕は確かなヘアメイクさんで、何も言わなくても菜々美ちゃんから教わったパーソナルカラーを意識したメイクをしてくれる。
「照明で色が飛んじゃうから、いつもよりかなり濃いめにするけど、ビックリしないでね?
若いから化粧ノリも良くて羨ましい。
あんな素敵な旦那さん持つと違うのかしら?」
化粧品の香りが混ざって嘔気が来たが、これだけ見渡す限りメイク道具だらけなのだ、そういうものだろうと気にしなかった。
髪は結べるほど長さがないので、アイロンを通して前髪をピンで留めるだけにしているが、その留め方ねじって留めている辺り、邪魔にならない工夫がされていた。
「メイクも馴染んだ頃ね、私が合図するまで、目を閉じていてくれる?」
そう言われて、言われたとおりにする。
顔全体にスプレーを吹き付けられた。
「これで大丈夫。
ヘアメイクは完成。
本番が終わるまで、いいえ、何なら今日の夜まで落ちないわよ。」
どうやら、メイクが落ちないようにキープするスプレーを吹き付けてくれたようだ。
「お気遣い、ありがとうございます。」
私が言うと、女性は服についたピンマイクに何やら話しかけてから、にっこり微笑みかけた。
「世界一可愛い姿、早く旦那さんに見せてあげるといいわ。」
メイクをしてくれた部屋の2つ隣が控室になっている。
「蓮太郎?」
「……メイ?
世界一どころか宇宙一可愛い。
こんな可愛い子を奥さんに出来るなんて幸せ。
……ホントはキスしたいくらいだけど、せっかくやってもらったの崩れちゃうもんな。
それに、キスは本番にとっておこうか。」
「……もう、蓮太郎ったら。」
そう言う彼も、白いタキシードがよく似合っている。
漫画とかドラマの中から飛び出してきた王子様みたいだ。
コンコン、とノックの音がして、ハナちゃんと御劔くんが呼びに来た。
「お二人さん、写真撮影しますので、せっかくお楽しみのところお手数かけますけど、移動をお願いしますー!」
写真撮影らしい。
私と蓮太郎の似顔絵だろうか。
それが書かれたフラッグを持って私たちを案内する姿は、さながらツアーコンダクターのようで、思わず笑みが溢れた。
蓮太郎の祖父母も、村西さんも遠藤さんも。
亜子さんも、式に関係する皆が集まって、3枚ほど写真を撮った。
控室に戻ると、しばしの休息時間だ。