ボーダー
行き先は、清澄自然の村。電車で、地元から5駅行った場所で降り、そこからバスで「村瀬ビジターセンター前」で少し休憩してから、ひたすら歩いた。

無事到着すると、キャビンに案内される。
荷物の整理の後、みんなで語らう。

炊事当番の私、有海、由紀、ミツ、ナナは、急いで炊事場に。

テキパキと作業を済ませ、夕食完成。

ミツったら、火の当番でずっとカマドの前にいて、煤で顔が若干黒くなってて、可愛い。

夕食を楽しんでいた最中、突然の大雨、そして雷。

さすが、山の天気は変わりやすい。

私、雷だけは本当に苦手!

急いでみんなでキャビンに避難。

すると、急にみんなが騒ぎ出す。

何も見えない。聞こえるのは、皆の声だけ。

どうやら、停電になってしまったらしい。

怖い!

ミツ……助けて?

あなたがいると、安心するの。
かすかに光の気配がしたかと思ったら、優しい温もりを感じた。

あ……

ミツだ……

もう6年も一緒だから分かる。
どうやら私は、彼に優しく抱きしめられているみたい。

「ハナ。
大丈夫か?」

「大好きなミツがいるから大丈夫。」

普段はゼッタイ言わないこの言葉。

難なく言えちゃったりするのも、停電でちょっと気が動転してるから。

だよね。

「すぐ戻るよ。
大丈夫だって。」

ミツの声が、高い位置から聞こえた。

ずっと一緒のはずなのに。

いつの間にか、ミツは私の身長を追い越していて。
私を呼んでた声も、昔より低い。
ドキドキするじゃすまない。

ミツに置いて行かれている気がして、少し寂しかった。

「うん。」

ミツが私を見下ろすようになったのと、私が彼を見上げなければ目を合わせられなくなったのは、いつ頃だろう。

そう問われると、よく覚えていない。

でも、この温もりが心地良い。
それだけは確かだ。

灯りが戻ると急に恥ずかしくなった。

停電の間中ずっと抱き合ってたらしい。

「ごっ……ごめんね、なんか……」

「全然大丈夫。」

何だか複雑だった。

「気にしてない」

ってニュアンスがその言葉に含まれてた気がしてしまった。

何でだろ。

心にもくもくと怪しい雲が広がったのが自分でもわかった。

先生方がキャビンに来た。
この天候のため、
「夜のバトル大会」
は中止らしい。

皆に若干冷やかされながら部屋でゲームを楽しんだ。
でもなんか、有海とナナが浮かない顔をしていたのがすごく気になった。
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