ボーダー
……朝10時。
成田空港に着くと、愛しい人はそこにいた。
「……有海!」
会いたかった、とでも言うように、有海の華奢な身体を骨が折れない程度の力で抱きしめた。
「おかえり、奈斗。」
「ただいま、有海。」
どちらからともなく、深く唇を重ねる。
ここが空港じゃなくてホテルの部屋だったら、そのまま彼女をベッドに押し倒しているところだ。
有海が唇を離して、オレの後ろにいる人を一瞥するなり顔を赤くした。
「わ!
え、えっと、奈美さんに眞人さん!
すみません……お2人に気付かず……」
「いいのよ。
蓮太郎とメイちゃんを思い出すわ。」
「そうだぞ。
奈斗、腹減ったろ。
有海ちゃんも、朝食は食べたかい?
食べてないなら、ちょっと付き合ってくれ。」
朝から、オレと有海を、サラベスに連行した、蓮太郎の祖父母。
ニューヨークの味が恋しいらしい。
オレと眞人さんはエッグベネディクトを、奈美さんと有海は仲良くフレンチトーストを頬張っていた。
……朝から甘いものを食えるってどうかしている。
よく胃もたれしないよな。
そう思いながらも、幸せそうに甘いものを頬張る有海は見ていて癒やされる。
ほら、と言ってエッグベネディクトの最後の一欠片を有海の口内にスプーンで放り込んでやった。
「うん、甘いものの箸休めになって美味しい!
初めて食べたけど、美味しいね、エッグベネディクト!
奈斗、ありがと!」
何だかんだで嬉しそうな有海を見れたからよかった。
有海の笑顔を見るのは数週間ぶりだ。
可愛くて、今日の予定を全部取り止めて、今すぐにでもホテルに直行したいくらいだ。
有海が着ている淡いブルーのブラウスと、ふくらはぎまである丈のネイビーのスカート。
その下の素肌を堪能したい。
さて、行きましょうか。
料理を食べ終えてしばらくすると、奈美さんがオレと有海にそう言った。
奈美さんはオレと有海を外に出させる。
その間に、眞人さんが会計を済ませてくれた。
「すみません……ごちそうさまでした。
とっても美味しかったです。」
「いいんだよ。
蓮太郎とメイちゃんもそうだが、若い2人が昔のオレたちみたいに仲睦まじい様子を見てるとこっちまで若返った気分になるんだ。
そんな気持ちにさせてくれてるお礼だよ。
さぁ、行こうか。
案内してくれ、有海ちゃん、君の家に。」
まさか、蓮太郎の祖父母も行くつもりなのか?
有海の家に。
約束の時間は11:30。
あと30分ある。
蓮太郎の祖父が運転する車でたどり着いたのは賢正学園だ。
そこで、紙袋を手渡される。
中身は、オレが蓮太郎との挙式に続いて行われた、黒沢夫婦の挙式の際に着ていたスーツ。
「唯一、忘れ物してたわよ。
さ、せっかくだから着替えるといいわ。」
スーツ、着慣れないな……
スーツを着たオレを待っていたのは、蓮太郎の祖父母と、有海、それに、レモンイエローのワンピースを着ていた、澪さんだった。
「行きましょうか。婚約者さんの実家に。」
澪さんも行くの……?
澪さんも車に乗せて、車は20分ほど走り、荘厳なガレージの家に到着した。
インターホンを鳴らすのは、有海の役目だ。
「お母さん、私よ。有海。」
「入っていいわよ。」
迎えてくれた有海の母親に、挨拶をする。
「初めまして。
帳 奈斗と申します。
本日はお時間を作っていただき、ありがとうございます。」
「ようこそ、一木家へ。
歓迎するわよ。」
歓迎する、と言う割には、オレを冷たい目で見下ろす有海の母親。
先が思いやられる。
成田空港に着くと、愛しい人はそこにいた。
「……有海!」
会いたかった、とでも言うように、有海の華奢な身体を骨が折れない程度の力で抱きしめた。
「おかえり、奈斗。」
「ただいま、有海。」
どちらからともなく、深く唇を重ねる。
ここが空港じゃなくてホテルの部屋だったら、そのまま彼女をベッドに押し倒しているところだ。
有海が唇を離して、オレの後ろにいる人を一瞥するなり顔を赤くした。
「わ!
え、えっと、奈美さんに眞人さん!
すみません……お2人に気付かず……」
「いいのよ。
蓮太郎とメイちゃんを思い出すわ。」
「そうだぞ。
奈斗、腹減ったろ。
有海ちゃんも、朝食は食べたかい?
食べてないなら、ちょっと付き合ってくれ。」
朝から、オレと有海を、サラベスに連行した、蓮太郎の祖父母。
ニューヨークの味が恋しいらしい。
オレと眞人さんはエッグベネディクトを、奈美さんと有海は仲良くフレンチトーストを頬張っていた。
……朝から甘いものを食えるってどうかしている。
よく胃もたれしないよな。
そう思いながらも、幸せそうに甘いものを頬張る有海は見ていて癒やされる。
ほら、と言ってエッグベネディクトの最後の一欠片を有海の口内にスプーンで放り込んでやった。
「うん、甘いものの箸休めになって美味しい!
初めて食べたけど、美味しいね、エッグベネディクト!
奈斗、ありがと!」
何だかんだで嬉しそうな有海を見れたからよかった。
有海の笑顔を見るのは数週間ぶりだ。
可愛くて、今日の予定を全部取り止めて、今すぐにでもホテルに直行したいくらいだ。
有海が着ている淡いブルーのブラウスと、ふくらはぎまである丈のネイビーのスカート。
その下の素肌を堪能したい。
さて、行きましょうか。
料理を食べ終えてしばらくすると、奈美さんがオレと有海にそう言った。
奈美さんはオレと有海を外に出させる。
その間に、眞人さんが会計を済ませてくれた。
「すみません……ごちそうさまでした。
とっても美味しかったです。」
「いいんだよ。
蓮太郎とメイちゃんもそうだが、若い2人が昔のオレたちみたいに仲睦まじい様子を見てるとこっちまで若返った気分になるんだ。
そんな気持ちにさせてくれてるお礼だよ。
さぁ、行こうか。
案内してくれ、有海ちゃん、君の家に。」
まさか、蓮太郎の祖父母も行くつもりなのか?
有海の家に。
約束の時間は11:30。
あと30分ある。
蓮太郎の祖父が運転する車でたどり着いたのは賢正学園だ。
そこで、紙袋を手渡される。
中身は、オレが蓮太郎との挙式に続いて行われた、黒沢夫婦の挙式の際に着ていたスーツ。
「唯一、忘れ物してたわよ。
さ、せっかくだから着替えるといいわ。」
スーツ、着慣れないな……
スーツを着たオレを待っていたのは、蓮太郎の祖父母と、有海、それに、レモンイエローのワンピースを着ていた、澪さんだった。
「行きましょうか。婚約者さんの実家に。」
澪さんも行くの……?
澪さんも車に乗せて、車は20分ほど走り、荘厳なガレージの家に到着した。
インターホンを鳴らすのは、有海の役目だ。
「お母さん、私よ。有海。」
「入っていいわよ。」
迎えてくれた有海の母親に、挨拶をする。
「初めまして。
帳 奈斗と申します。
本日はお時間を作っていただき、ありがとうございます。」
「ようこそ、一木家へ。
歓迎するわよ。」
歓迎する、と言う割には、オレを冷たい目で見下ろす有海の母親。
先が思いやられる。