ボーダー
……この格好は、マズイ。
パンイチですらない、全裸だし。
とりあえず、服着るか。
オレは、ベッドから降りて辺りに散らばっている服に手を伸ばす。

その時、ふわりと香る、甘い匂い。

ハナが愛用している香水。
彼女の服の上にオレの服が被さっている状態だったため、香りが移ったらしい。
オレの身体からも同じ香りが微かにする。

付けたばかりのときは甘い香りだが、時間が経つと甘ったるく、妖艶な香りに変わる。
少女と大人の女の二面性を合わせ持つ香りは、今のハナにピッタリだと思った。

何度も薄い膜越しに有り余る欲を吐き出した後も、まだ反応したのに、自分でも驚いた。

それだけ、ハナが罪な女だってこと。

印も……かなりたくさん付けた。

身体を重ねたとき、彼女がオレの背中に爪を立てたのさえ愛しく思えた。
間近でこの香りを感じることが出来たせいもあったのかなとか、思ってしまう。

服を着終えてすぐ、ベッドに寝転ぶ。

向こうに5年間住んで、学校にも行って。
結構ツラかったけど、それでも耐えられたのは近所に住んでた女の子のおかげ。

業 冥《かるま めい》っていうんだけど。

その子がいろいろアメリカのことをいろいろと教えてくれて、時には2人で遊びに行ったりしてくれて、すごく救われた。
案外寂しがり屋なんだ。普段は強気だけど。

スタイルはかなりいい。
今のハナくらい。

……待てよ?
オレ今、

メイとハナを重ね合わせていたのか?

オレ……
最低の男じゃん。

オレはハナを好きにならないほうが……良かったのかもしれない。
昨日のは、最初で最後のハナとの行為。
このことは、一生忘れないだろう。
いい意味でも、悪い意味でも。

しかし、この下半身の大きさはマズい。
誰もいないし、いいよな。

ハナの残り香が微かに残るベッドで、色っぽい彼女の姿を想像しながら、欲を処理した。

「……っ!」

ベッドに残るシーツにまで飛んだのを拭いていると、微かに家のドアが閉まる音がした。

おっと、あぶねー。
急いで拭いて、ティッシュをゴミ箱に放った後下着とズボンを元の通りに履いた。
ギリギリセーフ。

誰かの会話に、階段を上がってくる足音。

……ミツ、もう帰って来たのかよ。

足音がオレの部屋の前で止まった。
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