ボーダー
はぁ、はぁ。
なんとか宿泊棟に戻れた。
この村、広すぎ!

何回も迷って、同じところをぐるぐる回っていたのだが、レンに助けられた。

「ごめん、ありがとう。」

「まったく。
ハナは可愛いんだからさ。
あんま1人でうろつくなよ?
オレとかミツと一緒にいろ?
襲われたら困る。」

その言葉に、少し顔を赤くした。
何よ、私の裸見てるくせに。

二段ベッドに座って、由紀に事の次第をメールしようか迷っていると、愛実が友佳や麻紀を連れて、私に話しかけてきた。

「あのね、さっき皆で話してたの。
華恵ちゃんがずっと、焦点が合わない顔でボーッとしてたから。
体調悪いか、そうじゃなければ何かあったのかなあって。

私で良ければ、話なら聞くよ?
っていうか、それしかできないし。」

さすが、由紀と同じ小学校だっただけある。
まるで、由紀が隣りにいるみたいな感覚さえ覚えた。

「"華恵ちゃん"じゃなくて、"ハナ"って呼んでいいからね?
話、聞いてもらっていいかな。」

私は、洗いざらい皆に話した。

レンとミツとの関係。
最近、ミツに思うこと。
さっきレンに言われたこと。

……レンはいいけど、
ミツが他の女子たちにちやほやされてるのを見るのがすごく辛くて見ていられないこと。

話を聞き終わると、愛実はふぅ、と息をつく。
そして、私の黒目をまっすぐ見つめて言う。

「ハナ、本当は気付いてるんじゃない?
自分の気持ち。」

「自分の……気持ち?」

「ハナは、そのミツくんが好きなのよ。

幼なじみとしてじゃなくて……
"一人の男の人として。」

「私が…?
ミツを、好き?」

「うん。
そうよ。
その人を独り占めしたい、ずっと一緒に居たいし離れたくないっていう気持ち。
恋愛感情ね。」

そういえば…レンがいない間、
ずっと私のこと支えて守ってくれてたの……
ミツだったんだよね。

ホントは、自分の気持ち、気付いてた。

気付かないフリしてただけだったんだよね。


あなたは私の中で特別だった。

……好き。

ミツが……好き。

出会って数日経ってから、ミツの家にちょっと遊びに行った日。
こんな部屋で毎日過ごしてるんだ、って思ってドキドキした。

レンがアメリカへ旅立ったとき優しく抱き締めてくれたりしたとき。

朝までずっとミツの膝枕で泣き明かしたこともあった。

あの時からずっとずっと。

ミツのこと……好きだったんだ。

だけど、この想いを伝えてしまったら、このままの関係ではいられなくなる。
幼なじみでなくなるの、少しだけ怖い。

だから……

お願い。

もう少しだけ……このままでいさせて?
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