ボーダー
〈レンside〉
…ハナの態度ですぐ分かる。
……アイツ、絶対ミツのこと好きだろ。
ようやく自覚したか。
遅いよ。
……5年前のオレなら、抜け駆けでも先回りでも何でもやったはずなのに。
なんか……オレの中で少しずつではあるが、ハナへの気持ちが薄れていく気がした。
アメリカで良くしてくれた、あの子のことが頭に浮かぶ。
いま何してるかな、とか。
風邪ひいてないかな、とか。
そんなことを考えていると、オレの目の前でかなり衝撃的な光景が繰り広げられた。
ミツが……ハナでない他の女と軽くではあるが唇を重ねていた。
一番驚いたのは、ハナがその光景を見てしまっていたこと。
それにかなり最悪のタイミングで気が付いたミツがかなり驚いた顔をしてた。
「ハナ!
ちょっと待てよ!」
ミツの声も無視して、ものすごい勢いでどこかに走り去るハナ。
「好きなんだろ?ハナのこと。
追いかける前に……やることがあるはずじゃないか?
お前らしくもない。
ボーっとしてないで、それが済んでから来い。」
オレはミツにそう告げてから、ミツに代わってハナを追いかけた。
「何気足速いんだよな……アイツ。」
……ハナは、保健室にいた。
「レン……」
そう言いながら、オレに抱きついてきた。
ハナがホントに、アメリカにいたあの子に見えてきた。
オレ、重症だな。
……頼むから、オレに可愛い姿を見せるなって。
今やっと理性を保っていられるけど、切らしたらミツに顔向け出来なくなるから。
そっとハナをそっと抱き寄せる。
「ハナ?
大丈夫?」
「レン…ごめん。
無理だ。
ミツのこと……もう幼なじみとしてなんて見ること、できない……」
"ミツのこと…好きなの?"
これは……今はハナに聞いちゃいけない気がした。
だから、今は聞かないことにして、落ち着くまでハナを抱きしめてた。
鼻血を出した生徒への対応を終えた養護の那智《なち》先生は、チラチラオレたちの方を見ている。
「……もう……大丈夫だよ。
ありがとう、レン。」
「大丈夫じゃないって。
まだ、泣いてるじゃん。
もっとオレに甘えなよ。
どうせオレは……ずっとハナの幼なじみだからさ。」
「レン……ありがとう。」
「ホント、相変わらず泣き虫だな。
気い強いくせに。」
あの子にそっくりだ、という言葉は心の中で告げた。
オレは、頬に流れた涙を指で拭ってやった。
「さすがはアメリカ帰りね。
なんかそういうの、カッコイイわよ。」
それだけ言い残して先生は、保健室を出て行った。
オレとハナが抱き合っていたところを、保健室のドアの外からこっそりミツが覗いていたとは知らなかった。
ミツがわざと大きな音で保健室のドアを開け、
オレとハナが身体を離した。
そして、誤解を解いてさっき俺がしていたようにハナを抱き締めるミツ。
抱き合っている二人を見て、お似合いだ、と素直に思った。
二人きりにしてやりたくて、保健室を出ると、外には愛実ちゃんがいた。
「蓮太郎くん。
……絶対に誰にも言わないから、話す気、ない?
"心に抱えた秘密"。」
オレは、はっとした。
さっきの言葉……まさか、聞かれていたのか?
「愛実ちゃんには……わかったんだ?
さっきの言葉の意味。」
「……蓮太郎くん、好きな子がいるでしょ?
ハナ以外で。
だからハナのことは、幼なじみとしてもう割り切ってる。
……違うかな?」
「愛実ちゃん。
ほぼ正解だ。
アメリカで何かと一緒にいた業 冥(かるまめい)ちゃん。
ホントにハナに似てるんだよね。
強情なところ。
それでいて、寂しがり屋なところ。
オレにだって、わかってるよ。
こんなことを、ずっと続けてたらダメだって。
だけど、どうするべきか、よくわかんないんだよ。」
「その、メイちゃんは、"自分じゃなきゃ支えてあげられない"って思う?」
「うん。
メイはオレじゃなきゃ……支えてやれないよ。あんな超が付くくらいの寂しがりのやつ。
オレがそばにいてやりたい。」
「……決着の日……
早めれば?
10月に宿泊行事があるみたいだから。」
「オレは……アイツ以外に好きな女がいる状況なのに勝負を続けていていいのか、時々不安になる。」
「伝えるだけ伝えてみれば?
あ、それから、私は、ハナとの間違いを責めるつもりはないからね?」
そう言った愛実ちゃんは、オレの肩を軽く叩いて帰っていった。
いい子だな、愛実ちゃん。
さすが、ハナの友達だ。
不戦敗は嫌だから、ダメもとで告ってみるか。
そうすれば、ハナへの気持ちにケリがつく。
そうしたら、正々堂々、メイに本命だと言えるからな。
やがて、保健室から二人が出てきて、ミツが迷惑かけてごめんって言ってきた。
「誤解とけたなら良かった。
お前らが喧嘩してると、オレも寂しいや。」
オレは2人に笑いかけて、3人で仲良く帰った。
…ハナの態度ですぐ分かる。
……アイツ、絶対ミツのこと好きだろ。
ようやく自覚したか。
遅いよ。
……5年前のオレなら、抜け駆けでも先回りでも何でもやったはずなのに。
なんか……オレの中で少しずつではあるが、ハナへの気持ちが薄れていく気がした。
アメリカで良くしてくれた、あの子のことが頭に浮かぶ。
いま何してるかな、とか。
風邪ひいてないかな、とか。
そんなことを考えていると、オレの目の前でかなり衝撃的な光景が繰り広げられた。
ミツが……ハナでない他の女と軽くではあるが唇を重ねていた。
一番驚いたのは、ハナがその光景を見てしまっていたこと。
それにかなり最悪のタイミングで気が付いたミツがかなり驚いた顔をしてた。
「ハナ!
ちょっと待てよ!」
ミツの声も無視して、ものすごい勢いでどこかに走り去るハナ。
「好きなんだろ?ハナのこと。
追いかける前に……やることがあるはずじゃないか?
お前らしくもない。
ボーっとしてないで、それが済んでから来い。」
オレはミツにそう告げてから、ミツに代わってハナを追いかけた。
「何気足速いんだよな……アイツ。」
……ハナは、保健室にいた。
「レン……」
そう言いながら、オレに抱きついてきた。
ハナがホントに、アメリカにいたあの子に見えてきた。
オレ、重症だな。
……頼むから、オレに可愛い姿を見せるなって。
今やっと理性を保っていられるけど、切らしたらミツに顔向け出来なくなるから。
そっとハナをそっと抱き寄せる。
「ハナ?
大丈夫?」
「レン…ごめん。
無理だ。
ミツのこと……もう幼なじみとしてなんて見ること、できない……」
"ミツのこと…好きなの?"
これは……今はハナに聞いちゃいけない気がした。
だから、今は聞かないことにして、落ち着くまでハナを抱きしめてた。
鼻血を出した生徒への対応を終えた養護の那智《なち》先生は、チラチラオレたちの方を見ている。
「……もう……大丈夫だよ。
ありがとう、レン。」
「大丈夫じゃないって。
まだ、泣いてるじゃん。
もっとオレに甘えなよ。
どうせオレは……ずっとハナの幼なじみだからさ。」
「レン……ありがとう。」
「ホント、相変わらず泣き虫だな。
気い強いくせに。」
あの子にそっくりだ、という言葉は心の中で告げた。
オレは、頬に流れた涙を指で拭ってやった。
「さすがはアメリカ帰りね。
なんかそういうの、カッコイイわよ。」
それだけ言い残して先生は、保健室を出て行った。
オレとハナが抱き合っていたところを、保健室のドアの外からこっそりミツが覗いていたとは知らなかった。
ミツがわざと大きな音で保健室のドアを開け、
オレとハナが身体を離した。
そして、誤解を解いてさっき俺がしていたようにハナを抱き締めるミツ。
抱き合っている二人を見て、お似合いだ、と素直に思った。
二人きりにしてやりたくて、保健室を出ると、外には愛実ちゃんがいた。
「蓮太郎くん。
……絶対に誰にも言わないから、話す気、ない?
"心に抱えた秘密"。」
オレは、はっとした。
さっきの言葉……まさか、聞かれていたのか?
「愛実ちゃんには……わかったんだ?
さっきの言葉の意味。」
「……蓮太郎くん、好きな子がいるでしょ?
ハナ以外で。
だからハナのことは、幼なじみとしてもう割り切ってる。
……違うかな?」
「愛実ちゃん。
ほぼ正解だ。
アメリカで何かと一緒にいた業 冥(かるまめい)ちゃん。
ホントにハナに似てるんだよね。
強情なところ。
それでいて、寂しがり屋なところ。
オレにだって、わかってるよ。
こんなことを、ずっと続けてたらダメだって。
だけど、どうするべきか、よくわかんないんだよ。」
「その、メイちゃんは、"自分じゃなきゃ支えてあげられない"って思う?」
「うん。
メイはオレじゃなきゃ……支えてやれないよ。あんな超が付くくらいの寂しがりのやつ。
オレがそばにいてやりたい。」
「……決着の日……
早めれば?
10月に宿泊行事があるみたいだから。」
「オレは……アイツ以外に好きな女がいる状況なのに勝負を続けていていいのか、時々不安になる。」
「伝えるだけ伝えてみれば?
あ、それから、私は、ハナとの間違いを責めるつもりはないからね?」
そう言った愛実ちゃんは、オレの肩を軽く叩いて帰っていった。
いい子だな、愛実ちゃん。
さすが、ハナの友達だ。
不戦敗は嫌だから、ダメもとで告ってみるか。
そうすれば、ハナへの気持ちにケリがつく。
そうしたら、正々堂々、メイに本命だと言えるからな。
やがて、保健室から二人が出てきて、ミツが迷惑かけてごめんって言ってきた。
「誤解とけたなら良かった。
お前らが喧嘩してると、オレも寂しいや。」
オレは2人に笑いかけて、3人で仲良く帰った。