ボーダー
5月の半ば。

高校の体育祭の季節だ。

中学と違ってかなり早い。
ちなみにオレは、借り物競争に出る。

レンは色別対抗リレー、ハナは、愛実ちゃんと一緒に借り物、ならぬ借り人競争の前の障害物競争に出る。

体育祭当日。

借り人競争が始まった。

紙がある場所まで必死に走る。

紙を引く。
何が来るんだ?

「好きな人」。


って……。
おいおい、定番すぎない?

誰だよ、考えたやつ。

ハナ……だよ。

とりあえず、障害物競争終わりで息の上がるハナのもとへ駆け寄る。

「ハナ。
競技終わりだけど、走れそう?
一緒に来て?」

「い、行きたいのは山々なの。
でもミツ、私、足ケガしちゃったんだ。」

早く……それ言えよな?

何ですぐオレに言わなかったんだよ……
すぐに手当てでも何でもしてやったのに。

「マ……マジか……
走るのムリそう?」

オレの言葉に、申し訳なさそうに頷くハナ。
でも、走らなければゴールはできない。
他の選手もかなり苦労しているみたいだし。

ふと見ると、ハナの足首が青白くなっている。

……無理やりでも走らせるワケにはいかないようだ。
それなら、仕方ない。

「仕方ないな……ちょっと我慢しろよ?」

オレはそう言うと、ハナをお姫様抱っこしてゴールまで運ぶことにした。

「ち……ちょっとミツ!?
お……降ろしてよ……重いって!」

「大丈夫だって言ってんだろ?
ちょっとは黙れよ。

黙らないとさ、今ここでキスするよ?」

顔を真っ赤にして黙るハナ。
可愛いな。

もちろん、紙の内容はハナにはナイショ。

レンと愛実ちゃんにだけ見せた。

ハナのためにも1位になりたくて、両手が塞がれていてバランスが取れない中、全速力で走った。

赤組の人たちから大歓声が上がったのも、全く気付かなかった。

無事1位でゴールした。

競技が終わった後、ハナを保健室に連れて行こうとした。
その腕を、弱々しい力で止められる。

「レンの走り、見届けてからにする。
ミツも見るんだよ?
幼なじみでしょ?」

「仕方ないな。」

まったく。ハナには逆らえないよ。

好きになった弱み……ってやつかな。

「任せとけ。
ミツが1位でゴールしたバトン、オレがしっかりつないでやるよ。」

よくわからないが、どうやらこのいい流れのままゴールする、ってことらしい。

宣言通り、

1位でゴール。

しかも圧勝。

レンって……小さい頃からこんなに速く、走れたっけ?

こうして無事に、オレたち赤組の優勝で高校初の体育祭は終わった。

足首をかなり派手にひねっていたハナを手当てしている最中。

しつこいくらいにハナに聞かれた。

「借り物競争の紙に何て書いてあったの?」

「イングリッシュキャンプとかいう宿泊行事のときまで、秘密な?」

これだけは……秘密にさせて?


今はまだ……言えるときじゃないから。
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