ボーダー
〈一成side〉

やべっ。

一般宿泊客用のエレベーター乗っちゃったっぽい。

降りように降りられない。
どんだけ宿泊客いるんだよ、このホテル……。

……あ、もう1人、俺と同じく間違えて乗った奴がいる。仲間だ。
ソイツの腕を引っ張って、降りればいい。
その人物をチラ見する。

……昔から変わってないひとつ結び。
額にあるホクロ。

チラ見すると、目に涙を溜めて今にも泣きそうだ。
そんな顔、するな。
理性が保ちそうにない。

友佳!?

俺はとっさに友佳の腕を掴んで、降ります!
って言って降りる。

降りたのもつかの間、またエレベーターに乗ろうとする友佳。

「ハナちゃんを捜しに行くつもり?
ハナちゃんは優がきっと見つけてくれるから、友佳は俺と一緒に待ってて?」

友佳の頭を軽く撫でてやる。
顔を赤くして頷く友佳はかなり可愛い。
もう涙は引っ込んでいる。

大人っぽくなったよな、……友佳。
胸はさほどないけど。
身体つきは女らしくなった。

腕はちゃんと飯を食ってるのか?っていうくらい細いが。

だけど、誰かのためになら自分を犠牲にする姿勢は変わってない。

仲が良かった女子からハブられることになっても、俺と遊んでくれたのを思い出す。

そこがまたいいんだよなぁ。
こういうとこが好きなの。
小さい頃から。

友佳みたいになりたかった。
というか、友佳を守れるようになりたかった。
家は裕福ではないが、頼み込んで合気道に柔道まで習わせてもらった。

いざという時に、友佳を、好きな女を守るために使いたかったからだ。

とりあえず、先程一般客用のエレベーターに乗ってしまった。
そのことで注目の的になってしまったらしい俺と友佳。
やり過ごすために、手近なドアを開けてやり過ごす。
開けた先は非常階段だった。

「……あ、あのさ、いきなり、こんなこと聞くのもどうかと思う。
でも、気になるから聞く。
その……友佳は好きなヤツとかいるの?」

うわ!
俺のバカ!!
これじゃ、告白してるようなもんじゃん!
これでフラれたら、風呂の時間に優や真の冷やかしの餌食になること、確定だな。

つーか、非常階段みたいに人気のないところって告白するのにうってつけみたいな話はたまに聞く。
だけど、だからこそ俺はもっとムードがある場所で、他ならぬ友佳に告白したい、って思ってたのに!

保育園の頃から好きな女の子に、こんなところで告白、ってなぁ……‥
< 74 / 360 >

この作品をシェア

pagetop